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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第四章【怖れるべきは死ではない】
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39.壊滅的トップアンカー

【輝きの塔 - mico tower】

天にまで届きそうなその姿は、絶望に深みを持たせた。

塔で待っている数多の試練に挑むクラックの導く未来は、世界の破滅か安寧か。


そして、宇宙の考える"策"とは…

「メメント・三重奏の無効化能力を使って、ネオンスティックの情報を空にする。」

一同は真剣な眼差しで聞いていた。

「そこにカリホルニウムとカルシウムをぶつけて加速させれば、スティックとしてオガネソンが合成できるはずだ。」

「一理ある。だが、一理しかない。」

「今は一理を信じるしかない。」

確実な安心を模索する余裕は無かった。

「かなりの核エネルギーが発生するかも知れない。クラックの施設に戻る必要があるぞ。」

「行きますよ。」

大地はモメントになった。

『加速』


「必ず、帰ってきます。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

塔の入口では、びっしりとバケモノの大群が護っていた。

「準備は出来ているか?」

「ああ。」

『ラメント!』

テノールはラメントになる。

「この程度のバケモノ朝飯前だ。何故なら俺には、」

「アルト達がいる。」

「私にかかれば─」

『元素シューター!』

「赤子の手をひねるようなものだ。」

くるみはスティックハンターとなる。

「これがクラック最後の戦いになるといい…、」

央駆が声を出す。


「出動!!」


走るクラック。

気づき、襲いかかる大量のバケモノ。

「はっ!」

ラメントの撃ち技が多くのバケモノにダメージを与える。すぐには倒れないバケモノだが、テノールは自身の強さを活かして戦う。

テノールを囲むバケモノは5体。

バケモノ1がテノールに向かって拳を構えると、テノールはバケモノ1の右腕を掴み拳を下げさせ、自身の左腕で首をロック。

『ラメント・ショット!』

銃で撃ち、バケモノ1を倒す。

次いでバケモノ2が上から攻撃を仕掛けるが(かわ)し、地に足をつけたバケモノ2の頭を撃つ。

バケモノ2を倒した。

「あの動きは…!」

テノールがクラックの入隊試験でモメントを相手にした時と全く同じ動きであった。

バケモノ3とバケモノ4がテノールの左右にやってきた。

テノールはしゃがみ、バケモノ同士はぶつかる。

互いの顔が当たる瞬間、しゃがんだテノールは下から銃でバケモノの顎を撃ち抜く。

テノールを囲んでいたバケモノは1体となった。

「使え、テノール!」

『プルトニウム!』

アルトから投げ渡された元素シューターにはプルトニウムのスティックが刺さっていた。

元素シューターを構えた。

「終わりだ。」

『エレメント・ショット!!』

囲っていたバケモノは全滅、付近のバケモノも強大な爆発に巻き込まれ散った。

「はっ!」

央駆は右脚で蹴りを、左手に銃を持って対抗した。

上から飛びかかるバケモノを確認。

そのバケモノは央駆を襲う前に横へ吹き飛んでいった。

スティックハンターの弾丸だ。

「良い援護だ、くるみ。」

「ヒーローのヒーローになれたかしら。」

「お前はとっくに、なれてるよ…!」

そう言って発砲し、バケモノを減らしてゆく。

『ヘリウム!エレメント・ショット!』

バケモノを風船型にし、ふわふわと空へ飛ばす。

『アルミニウム!エレメント・ショット!』

金属製の棘を発射、破裂させる。

アルトの周りを、割れた風船のゴミが舞い散る。

「へっ…汚い花火だ。」

あっという間に残り数体。

「決めるぞ!」

央駆の一言でテノールは手のひらをバケモノに向ける。

『ラドン!』

アルトはスティックを元素シューターにセットする。

スティックハンターも砲撃態勢に入る。

『アメリシウム!エレメント・ショット!』

『エレメント・ショット!』

『ラメント・ショット!』

全員分の必殺技がたった数体のバケモノに放たれ、扉の前は一気に閑かになった。

「よし…!」

「…進むぞ。」

おそらく塔の頂上にガイネンが居る。

「時間内に必ず登ってみせる。」

入口を通過すると中は薄暗く、朝とは思えなかった。

なんだか不気味というか、リミナリティを感じるようなそれでいて、清閑と安心感を感じてしまう空気を吸わされた。


その男は不意に現れた。


「やはりお前か…Mr.クーロン。」

「ようこそ、mico towerへ。良い空間だ、1対1で語り合いたい程に落ち着く。」

「お前を倒すのも残念だが…、」

央駆が元素シューターを向ける。

「俺が相手しよう。」

銃を下ろさせたのはテノールだった。

「何か話したそうじゃないか、Mr.クーロン。」

「ほう、そう思うのであれば…」


「お手合わせ願おう。」

テノール以外の3人はクーロンを横切って奥へ進んで行く。

クーロンがテノールに徐々に近づいていく。

両者の足が地を蹴るとテノールの右肩がクーロンに掴まれ、クーロンの左手、テノールの顔前に元素プレイヤーが運ばれた。

「何故お前がソレを…!?」

「私に従え。」


テノールは、攻撃をやめた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『メメント・三重奏!!!』

ネオンのスティックを放す。

「はっ!」

『メメント・メモライズ!』

ネオンのスティックから情報が消えていく。

「このスティックに合体技をぶつけるんだ。」

「私が元素を混ぜる、大地は加速をさせて。」

「分かった。」

セメントはカルシウムとカリホルニウムのスティックでヴィブラフォンをなぞった。

『カルシウム!カリホルニウム!』

『セメント・ブレンド!』

技のチャージが開始される。

深く息を吐く。

「…よし、」

『加速』

空になったスティック目掛けて技が発動される。

が、スティックはオガネソンの記述はおろか拒むように閃光を弾いた。

「何っ!」

3人のやろうとしていることは、そう簡単ではなかった。

「…もう1回だ!」

時間は巻き戻っている。

雲の流れは変わっていない。

どうやら巻き戻る範囲が限られているようだ。

空のスティックを放す。

「来い…っ!」

時間は無い。

『加速』

スティックは先程よりも強い拒否を示し、稲妻を発して3人の頬に赤い傷をつけた。


「…ッ、もう1回…!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

塔の5階。

バケモノを薙ぎ倒し進んだ先に、現れた。


「対策は練ってきたか?」


クルックス。

くるみがドブニウムのスティックを構える。

アルトは今しかないと思い、くるみの前に立ちその左手を仲間を守るようにして横に出した。

「私が行こう。」

「1人で!?無茶だ、力を合わせても中々の強敵だったではないか!」

央駆は汗を散らしてアルトを引き止める。

「いや…。」

アルトはわかっていた。

「せめて此処の時間だけは、此処の時間の君たちの手でガイネンを倒して欲しいんだ。」

「ふん。貴様、元素プレイヤーは持っていないだろう?」

「ああ、持っていないね。」

「どのようにして勝とうと企んでいるか知らんが、僕には勝てない…どう足掻いても。」

「そんなこと、やってみなければ解らないはずだ。」

「やってみたはずだ、あの未来で。」

「それでも現在(いま)は解らないだろう?」


「私の信じるヒーローは、この時代に生きている。」


央駆とくるみは、クルックスを横切ってガイネンへ向かう。

クルックスは2人を攻撃しなかった。

「心とは力である、僕は貴様等の力を握っている。」

2人はその発言に疑問符を貼りつつ先を急ぐ。

「必ず来い、アルト。」


アルトは返事をしなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はあ…はぁ、」

42回目。

残り10時間。


陽の光は人々の影をくっきりと際立たせていた。

体育館には少し大きめのテレビが設置され、クラックが塔に突入したことが報道によって伝えられた。

人々の不安の声が後を絶たない。


「…頑張れ、ソラ兄ちゃん。」

応援しかできない。

自分が子供である事を自然と深く恨んだ。

でもきっと、あの楽譜は力になったはずだ。

今はきっとドラム教室にしまわれている、あの楽譜が。

尊敬する大人の背中を押したはずだ。

そう素直に受け止める事こそが助けになるはずだ。


人々は、クラックの施設から聞こえる爆発音に耳を傾け始めた。

「さっきからこの音はなんだ?」

「怪物か?」

「おしまいだ、おしまいだ、おしまいだ、」

「俺、ちょっと見に行って来るよ」

「ダメだって、危ないぞ!」

いつバケモノが気配に気づくか分からない。

既に隣町では、体育館内の人々がバケモノに襲われた事例も出ている。今安静に出来ている方が奇跡なのだ。

襲われた避難所にはすぐに警察や自衛隊、数少ないクラックの隊員が駆けつけるようになっているが、少な過ぎる為完全防衛はほぼ不可能であった。

「クラックは俺たちに何をしてくれるんだ!」

再び上がる怒り。

何も進んでいないし、何も変わっていない。

これが所謂"平和ボケ"であるかと強く感じる。

日頃守られている事に慣れすぎた人々は、その支柱がたとえ一時でも欠落したと感じればバランスが取れなくなってしまうようだ。

光太郎の母は、そう感じていた。

我が子は不安な顔だが、(いか)ってなどいない。

それは支柱の存在を確かに感じているからだ。


たとえ、見えていなくても。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うああああっ!」

壁の塗装は、ボロボロに崩れていた。

宇宙たちもまた、施設の壁のようだった。

「どうすれば…机上の空論だったという事か…?」

宇宙は赤黒い拳を強く握る。

「いや…」


「俺にしか出来ない事だ…」


立ち上がる。

「もう1回…」

それはいよいよ49回目の台詞であった。

3人は核エネルギーを受けすぎている。

「だったら、違う方法で…」

身体が熱い。

樹林と大地は、極限状態である宇宙の考えついた策など聞く余裕も無かった。

『セメント・ブレンド!』

「行くぞ…宇宙」

『加速』

「これで決める…!」


放たれた空のスティックは即座に拒否する。

「…ッ!」

「そうは…させない、ッ!」

宇宙は、自らオガネソンのエネルギー弾にぶつかりに行く。

「さあ…、来いッ!!」

「!?」

「宇宙!!」

こうすればスティックは宇宙に引き寄せられ、必然的にエネルギー弾とスティックが衝突し合うはずだ。


「うああああああああああああああっ!!」


爆風。


稲妻。


崩壊。


閃光。


クラックの施設は、消えて亡くなった。

そこにあるのは、コンクリートの破片。

飛び散ったホルマリン。引き裂かれた配線。

倒れる3人。

倒れる3人の手。

倒れる3人の手の掴むスティック。


オガネソンのスティックである。

爆発の数秒前まで遡った大地は、

爆発の数秒前まで遡った樹林を見つめ、

爆発の数秒前まで遡った宇宙に手を差し伸べる。


やったよ。


宇宙の瞼が、口が、そっと開く。


私たち3人で、作ったよ。



─ 世界を守る力。

【所持スティック】

〈クラック〉

ヘリウム、ネオン×2、アルミニウム、カルシウム、ラドン、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、ドブニウム、ニホニウム、オガネソン×3


〈ラボアジェ神殿〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、

水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン


NEXT▶40.破滅的エンド

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