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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第四章【怖れるべきは死ではない】
35/44

34.隠秘的コルネリウス

宇宙の前に突然現れた、もう1人のメメント。

圧倒的な力でガイネンの側近・ガイスラーを追い込む。その正体とは…


一方宇宙の居る葉朝区域とは少し離れた都心部では異常に大量のバケモノによる侵略が進んでおり、それはまるで地獄絵図のようだった。

『元素シューター!』

「はっ!」

『ネオン!エレメント・ショット!』

「貴様…ッ!」

ガイスラーのモメントは予想外のパワーを持つメメントに驚愕しつつ抵抗する。

「何者だ?…まさか、!」

メメントの胸部に毒性を秘めたパンチをぶつける。

確かに食らっていたモメントだが、まるで反応がない。

モメントのその腕を持つ。

「!?」

離せ、と言わんばかりに解こうと腕を震わすモメントの焦る眼に指をさす。

「この一撃で、お前は死ぬ。」


宇宙は、"死ぬ"という言葉に怯えた。


『ネオン!メメント・インパクト!』

メメントは人差し指をバケモノに向ける。

モメントはネオンの光に身を染められる。

「うっ…うわあああ!!」

突然の叫び声にメメントが戸惑った一瞬を見てガイスラーはガニ股で逃げた。

メメントは姿を解く。

「…!」

央駆は唇を震わせ、つっかえるように息を呑む。

「貴方は…」

「宇宙!!」

アルトを先頭に、大地も合流する。

先程まで葉朝区域で戦っていた2人は状況がよく分からなかったが、身体が勝手に畏まった。


「リム・ストローク博士…?」

「え!?」

宇宙以外、目の前にいる存在こそが元素プレイヤーの生みの親…リム・ストロークであることに驚愕した。

「元素プレイヤーが落ちていた。君が落としたのか?」

宇宙はリム・ストロークの手の甲付近の空間を見ていた。

「貴方も助けに来て下さったのですか。」

アルトが尊敬を込めた眼差しで伺う。

「ああ。嘗てクラックにあった古い文献には、こう書いてあった。」


"全てはガイネンから始まった。"


「─と。」

一同は耳を深く傾ける。宇宙以外の一同は。

「ガイネンの目的は、無に戻ること。」

「すなわち、地球の全てを自身に戻すこと。それは人類滅亡…否、生命滅亡を意味する。」

ラボアジェ神殿で死者を闘わせていた理由の1つとして、この侵略の効率化も考えられるという。

「私がスティックを研究してしまったのが事の発端だ。すまない、世界を救ってくれ…。」

宇宙は初対面であるリム・ストローク博士の謝罪する頭を見つめた。

「…嫌だ。俺はもう、誰も殺したくない。」

アルトが横から入る。消えたと思われていた筈のアルトが宇宙の前に平然と現れても、宇宙は驚きはしなかった。

「正直私は君がMr.クーロンなのは知っていた。君がダイナミックタムで人を殺めた時、しまった、と思った。私も耐え難き真実を知った瞬間がある。その絶望と苦痛は計り知れない。だから君には言えなかったし、言う必要も無いと思った。すまない。私はずっと私が嫌いだ。」

過去、けん玉を包んでいた右手を強く握る。

「…未来も過去も幸せにできないのだ。」


あの未来。

神が子を、

たった独りの人間の子を殺した。

膝をついたアルトの前に転がる玩具。


徐々にその右手が引き裂かれそうなまでに強く震えているのを、宇宙は見た。


沈黙。


「他の皆は。」

リム・ストロークの要望に応える。

宇宙以外、バケモノの侵略が進んでいる都心へ向かうことにした。樹林は宇宙を確認し頷いたが、宇宙の反応は浅かった。

「…っ、」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

都心。

「まずは一番偉い人間を殺すところからだ。」

ガイスラーは、調べた。

【 日本 一番偉い人 [検索] 】

出てきた。

「知恵袋か…余り信憑性が無いな。政府を襲うぞ。」

とりあえず政府を襲う事にした。

多くのバケモノが一般人を襲う中、一際目立つチューブラーベルの男が元素プレイヤーを出す。

『モメント・アクチノイド!』

「うわああああああっ!!」

見たことない異質な姿に恐怖する一般人。

「黙れ!」

モメントは一般人の首を絞めた。

「ふん…ガイネン様の為にも、ここは皆殺しにすべきか。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

都心へ向かう車は2手に分かれた。

くるみ、央駆、大地、樹林が乗車していた。

「ごめんなさい。」

助手席に座っているくるみが謝罪した。

「私もスティックハンターとして神の復活に加担したから…これは私の責任でもある。」

「気にするな、くるみ。スティックを数本取り返せたのはくるみのお陰でもあるんだ。」

大地は手話が出来ないので、音声入力アプリで樹林に伝えていた。

「それにしても、Mr.クーロン…なんだか威厳を感じなかった。」

「彼自身もガイネンの被害者なのだろう。そもそもスティックが存在しなければ、あの男も平凡で居られたのかも知れない。」

「どうしてエレメントスティックなんて出来たんだろう。」

樹林は同じ後部座席の隣に座っている大地を見た。

「さあな。」


「そういう世界だったんだよ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

皆が都心を救いに行く中、宇宙は葉朝区域に独り。

同じ都内とは思えないほど孤独感に見舞われた。

とぼとぼと意味もなく歩いていたはずが、気づけば目の前はドラム教室だった。

中に入る。

久しぶりに電気をつけた。

眼を刺すような明かりが陰鬱な気分を揺らがせる。

机の上には、作りかけの楽譜が置いてある。

開くと、光太郎と啓太が書いたフレーズの直前に、後で自分が書こうと思って空けておいた8小節分のスペースがあった。

宇宙は自分のすぐそこ、利き手側にあった鉛筆で書く。

全て、休符で埋めた。

正直面倒くさくなってしまったのだ。

このままだらだらと書いても意味が無いと感じ、ゴミ箱へそっと棄てた。


そしてすぐ、そっと出した。

もはや生きている意味すら皆無だったが、自分が"死"に憶えた事実も受け止めきれている。

溜息を履いたその先に、宇宙は1通の手紙を見つけた。

光太郎がコンクール後のレッスンでくれた手紙だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

都心へ向かう車は2手に分かれた。

リム・ストローク、アルト、テノールが乗車していた。

「リム・ストローク博士」

いつもより背筋が伸び、畏まるアルト。

「そんなに敬わないでくれ。私こそが諸悪の」

「これ無免許運転ではないでしょうか。」

ストローク博士の耳が赤いのをみたテノール。

「…いつかはスティックが見つかり、バケモノの誕生に利用される日が来る。貴方の開発した元素プレイヤーが無ければ、既に世界は終わっている筈だ。」

「ならば、ありがとう。」


沈黙。


「アルトくん。」

ストローク博士が再びアルトを畏まらせる。

「君は宇宙くんの未来の姿なんだね。」

「ええ、信じられないかもしれませんが。」

「辛い気持ちになるから、隠していたかい。」

「はい。」

「私も同じ気持ちだ。」

「え?」

リム・ストローク博士にも"隠し事"がある。


「【宇宙(うちゅう)のはじまり】を知っているか。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふははははははっ!!」

「おい、ガイスラー。」

「クルックス…!」

「貴様、命令外の事をしてはいないだろうな?」

「俺…私がガイネン様が快適に居られるよう、ここのトップをブチのめそうとしてるだけだ。神殿の強い奴を使って、侵略をより徹底すればそれでいいんだろ?」

「貴様、新人の癖に力が強いだけで側近になった身だ。その力を見せつけなくてもいいのか?さっきだって見ていたぞ、メメントに怯えて逃げていたではないか。」

「黙れ。先輩面するな。」

「先輩だ。」

「クルックス。」

「何だ。」

「1つ疑問がある。」

「何だ。」

「ガイネン様は水上 宇宙がラボアジェ神殿に来るのを歓迎している。何故だ?あんな害虫を。」

「否。ガイネン様は水上 宇宙をなどもう歓迎していない。」

「え歓迎され続けるとか言っちゃったじゃねえかよ!」

「メメント・モリの力がある頃はそうだったが、今の水上 宇宙に力は無い。存在するだけ意味が無い。」

「つまり…」

「ガイネン様の敵ですらない。」

「良かった。」

「だがもし、クラッカーとかいう組織の援助でメメントが覚醒するならば…それ相応の捉え方をしなければならない。」

「分かっている。」

と話しているうちに、車が来た。

慌てふためく一般人と違いガイスラーとクルックスに対抗するような挙動であった為、注目を浴びた。

「追って来たか…」

ドアが開く。

「セメント…バスの失敗作か?」

聞こえていない。

「このガイスラーが、貴様の価値を決定する。」

『元素プレイヤー!』

「戦闘時のセリフだけマニュアル通りに覚えるとは、これだから新人は。」

分厚い楽譜を開くクルックス。

「只今、神殿の所持するプロトアクチニウムエレメントスティックにより神の側近ガイスラーはプロトモメントとなる。」

象徴化(シンボライズ)!』

セメントとモメントが対峙する。

「支給費だ。」

クルックスがモメントに、斧を渡した。

「ありがたい、クルックス!」

「先輩と言いなさい。」

「おう、クルックス!」

舌打ちは爆撃の音に掻き消された。

「これ以上皆を傷つけさせない!」

『ニホニウム!ドブニウム!』

『セメント・ブレンド!』

エネルギーで生成された筒から、スティックを模した弾丸が発射される。

乱射。

すっかり一般人は逃げ去っていた。

「よし…」

斧を盾にしていたモメントの反撃。

斧を蹴り上げ、飛ぶモメント。

「死ね!」

『ラドン!エレメント・ショット!』

斧にエレメントを撃ち込み、セメント目掛けて斜め上から斧を突撃させる。

「っ!」

横から斧が撃墜される。

スティックハンターの姿がそこにはあった。

「仲間か。」

クルックスが墜ちた斧を拾い上げ、スティックハンターに振りかざす。

「邪魔だ!」

筒から弾丸が発射される。

斧を回転させて弾くクルックスの顔面は、横から来る銃弾に襲われる。

『アルミニウム・クラッシュ!』

大地だ。

「ふっ、元素プレイヤーを失ったお前勝ち目は無い。」

「とりあえずの目的なら達成している。」

「何?」

「民間人の避難だ。」

「ああ。何をドヤ顔で語るかと思えば。」

ガイスラーはセメントへの攻撃をやめ、クルックスはビルに貼られた大型ビジョンを指さした。

指の先、巨大な画面の向こうは首相公邸。

そこで立っているのは、ガイネンだった。

『人類よ。これよりこの地球(ほし)は我が護る。』

「どういう事だ…!?首相は!」

『現両議院議長ならびに現最高裁判所長官そして、現内閣総理大臣を捕虜とする。』

「何言ってんだ…」

『我が救済に対抗するのなら、幾らでも来い。』

『それ相応の対応はしよう。』


雨音。


ストローク博士らの乗車していた車は、大破していた。

「アルト…。」

地べたに這い蹲るテノールは、足を掴んだ。

「おい、大丈夫なのか!?」

黒雲の涙に貫かれるテノールの眼球は、その姿を目に焼き付けた。



『メメント・二重奏(デュオ)!!』

【所持スティック】

〈クラック〉

ヘリウム、ネオン×3、アルミニウム、カルシウム、カリホルニウム、ドブニウム、ニホニウム


〈ラボアジェ神殿〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、

水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン


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