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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第四章【怖れるべきは死ではない】
34/44

33.柔弱的ウールヴへジン

自分自身が敵組織の創始者であるという事実に悶える宇宙(ソラ)

自分は生きている意味などないのでは無いか?

寧ろ死ぬべきなのでは無いか?

目の前に重なる全てが自分を否定しているような状況であると感じた宇宙は、その現実を眺める事しか出来なかった。


「エレメント・メメント」の緞帳は降り始めている。

水上 宇宙は、Mr.クーロンである。

「…は、何言ってんだ。」

「君がアルトであるように。君が水上 素流であるように。君は、私だ。」

「君の動き続けている心臓。その心臓の持ち主が死んだ時、"意識"は"魂"に姿を変え、新たな身体に宿る。」

宇宙は膝を付く。

「じゃあ…」

「じゃあ俺がアイソトープを……?」

「共に聞いたじゃないか。神の声を。」

「宇宙、」

絶望を纏う宇宙を見た樹林が声をかけるが、宇宙は無視してラボアジェ神殿の外へ走り去った。

(いか)る大地。

「お前がこんな事をしなければ…ッ!」

「転生は故意にはできないんだよ!」

「私も怖い。死んでこのラボアジェ神殿に送られてから(ようや)く知ったんだ。この心臓が死後私自身の敵になっていると…。」

どうすることも出来ない一同。

「アイソトープを悪だと言うならば、水上宇宙は悪だ。」

チャイムが鳴る。

Mr.クーロンの傷が癒える。

「また会おう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

世界は、すっかり夜だった。

「俺は…。」

バケモノが宇宙を襲う。

その腕を受け止めた宇宙は、自身が目前の怪物を生み出した"元凶"であるという事実に苛まれた。

「ああああっ!!」

元素プレイヤーを取り出す。

何故か、元素プレイヤーが自分を否定しているような感じがした。

お前のせいで。

お前のせいで。

手が震え、元素プレイヤーは落ちる。

呼吸が荒くなる宇宙は喉元から湧き上がる柔弱な怒りに身を任せて同族のような怪物を殴るしかなかった。

「ああっ、ああ…ああああっ!!」

頭を抱える宇宙は深い夜へと逃げ去った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「Mr.クーロンが…。宇宙。」

ただただ事実を反芻するだけで、絶望が増えるクラック。

「どうする。ガイネンに支配されるのも時間の問題だ、打開策を…。」

央駆が口を開いた。

「打開策って、宇宙が居なくてどうするんだ」

大地が妙に怒気を帯びた声色で問う。

「俺は信じてる、宇宙は必ず戻ってくると。」

テノールは手話で樹林に通訳をする。

「ソプラノは、どうしたの」

「あいつはあいつの道を選ぶ。俺に出来ることは無い。」

「で、どうするの。」

乱立する話題を樹林が切る。

「結局神を倒すには新しい力が必要なんでしょう。」

間違い無かった。

「案ならある。」

テノールが進める。

「神の復活条件は、全てのスティックを揃える事。」

一同はテノールに視線を向ける。

「地球上の元素の内、その発生率の低さと不安定さから現時点でスティックになっていない元素が存在する。」

「何?」

「オガネソンだ。」

「オガネソンって、この時代に来る時に使ったっていう」

大地はオガネソンタイマーを見る。

「ああ。我々の時間軸では神の復活前にオガネソンのスティックが存在していた。その為今の神よりも俺たちが戦った神はステータス的により強かった。」

「今の神はオガネソンの力を持ち合わせていない訳か…」

「おそらく、神の"万物を操作する能力"は身に付けた元素の力を加工することで発動している。」

「じゃああのオガネソンタイマーからスティックを合成できるんじゃ」

「その過程でオガネソンタイマーが発動した場合、未来でオガネソンタイマーが既に使われている事になる。そうすれば俺はこの世から消える。」

「…それも、そっか。」

「他に方法は」

「カルシウムとカリホルニウム。」

央駆は引っかかっていた。

「宇宙と大地がそれぞれカルシウムのエレメント・ショットとカリホルニウム・クラッシュを同時に発動した時、時間が"巻き戻った"感じがしたんだ。」

「テノールに渡したはずのキセノンスティックが、技発動後に俺の手元にあった…。」

「じゃあその2本のスティックを使えばオガネソンができるという事か?」

「やってみない限りは…。」

クラックの本部はすっかり廃墟である。

「樹林。」

大地はカルシウムのスティックを樹林に渡した。

『カルシウム!セメント・ブレンド!』

『カリホルニウム・クラッシュ!』

外へ出て、安全な手段で発動してみる。

「…何も、起こらないな。」

「気のせいだったのか?いやそんなはずは…」

振り出しに戻したサイコロのようなスティックを握りながら廃墟へ戻ろうとする。

その時。

バケモノが現れた。

『カリホルニウム!エレメント・ショット!』

「本当にまずいぞ。このままじゃ世界は…」


轟音。


「!?」

「何だこの揺れは、地震か!?」

地は揺れていないが"此処(ここ)"が揺れるのを感じた。

「いや、」

(そら)が揺れている…?」


暗かった空に六角形の穴が生まれる。

「なんだあの穴…」

それは本当に、世界の終わりを知らせるようだった。

「見て!!」

樹林がテノールの肩を叩き指をさす。

穴からはそれまで以上に大量のバケモノが地球に降り注いでくるのであった。

「神殿側も本腰を入れてきているな。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「たった今、ラボアジェ神殿から地球へ支配の種を撒いて参りました。ここでの戦いで上位の力が見込まれる者達を…。」

チューブラーベルの男・ガイスラーがガイネンに伝える。

「支配はこれから始まる。」

「私も地球に行き、彼らの監視に参ります。」

チューブラーベルを叩く。

ガイスラーは地球へ移動した。

「…良いんですか?ガイネン様。」

楽譜の男・クルックスは不満げに訊ねる。

「構わん。」

「ガイスラーはラボアジェ神殿に来たばかりの新人です、自分の欠けた部分を理解させられたバイトのように直ぐに嫌気がさしてしまうかもしれないというのに。」

「あの男は力が強い、それだけでいいのだ。知性は貴様が持っているからな。クルックス。」

「…有り難き幸せです。」

「にしても水上宇宙がMr.クーロンだったとは。」

「知っていたのですか?」


神は沈黙した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

気がつけば、海岸にまで辿り着いていた。

「海。」

一体どれくらいの距離を歩いただろうか、先程まで騒いでいたムクドリの音すら鎮まっていた。

誰も鳴らすはずのない砂の音を、宇宙以外の誰かが響かせる。

「お前は…」

ボロボロになったソプラノであった。

「水上 宇宙…?なんでここに。」

いつになく弱々しい、今にも消えてしまいそうなソプラノの声。

「そっちこそ。」

「…私は償いに来たんだよ。」

「えっ」

「多分それもきっと嘘なんだろうけど。私はいつまでも悪人だからね…」

地の無く、深い藍へと足を近づける。

「おい…、」

「余裕持つために色んな人殺して、余裕持てなくなったら自分が死ぬんだ。無責任で馬鹿みたいね。」

「テノールに止められたんじゃないのか…?」

「止められてはないかな。でもすっごい生きて欲しそうだった、その自覚はあるよ。」

「じゃあ生きるべきだ!」

「うるさい!」

ソプラノは宇宙を殴った。

「ああ、ほら。また暴力だ。身体は慣れちゃうんだ。」

「…」

「何でだろう。生き方は考えてたのに、死に方なんて」


「どうでもよくなっちゃった…。」


波がささやかにソプラノを誘導する。

「テノールには内緒だよ。」

ソプラノには、あまりにもその波が魅力的であった。

引っ張られるように、それでいて確固たる意志を持ってソプラノは歩いていった。

「まあ、聞かれないか。」

青い海をただ眺める宇宙の眼は少しだけ赤かった。

誰も、何も言うことは無かった。


「宇宙、こんなとこに居たんだ」

波の音が聞こえぬ樹林がやって来た。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

襲いかかるバケモノを缶蹴りのごとく倒していく。

「なあどうする。宇宙はしばらく帰ってこない、オガネソンのスティックも出来そうにない。」

「考えろ、考えるんだ。」

「考えてるうちに神が地球を焼き払うぞ?」

テノールは憤りを隠しきれていない。

過去(いま)さえも、神には敵わないのか…?」

テノールはもう、誰の死ぬ姿も見たくは無かった。

「また勝てないのか…?」

声を少し震わすテノールの肩を、誰かが叩いた。

テノールは元素シューターを構える。

「誰だ!!…え?」

男は両手を挙げる。

「おっと…これはこれは極限状態の中驚かせてしまったようだ大変申し訳ないと思っている。」

いつもの白衣は無く、黒いコートを羽織っていた。

アルトだ。

「どうしてお前!?未来が変わって消えたんじゃ!」

「ああー、出来れば私もそうしたいところだったよ。」

少々気まずそうなアルト。

「消える直前、ソプラノに殺されたんだ。」

「ソプラノに。」

「私を邪魔だと考えたソプラノはラボアジェ神殿と私の転生の仕組みに重きを置かずに私を殺した。」

「アルト。」

テノールが策を聞き出す。

「そうだね、セメントの元素プレイヤーのデータはあるかい。そこからドラム型プレイヤーを製造する。」

「本当か!?」

「だが、あまり表向きに活動はできない。私達はガイネンによる侵略の一環として、地球に派遣されているだけだ。」

「派遣…?」

「ラボアジェ神殿で力を見込まれた者が。」

「そうか。他にガイネンを倒す術は。」

「オガネソン…」

やはり、"オガネソン"が鍵であるらしい。

「カリホルニウムとカルシウムをぶつけても何も起こらなかった。何が足りない?」

「スティックとして出現させるには…【加速】させること。」

「加速?」

「カリホルニウムとカルシウムを光の速さにまで加速させる事だ。それに加え、」

「水上宇宙が必要だ。」

「え?」

「彼は失踪中のようじゃないかまずは彼を見つける所からだね」

「今、樹林が向かっている。」

「…」

重苦しい空気に耐えられず表情を変えるアルト。

「さっ。眠っていてくれ、君達寝てないだろう。」

「…すまない、頼む。」

夜、アルトはPCを開く。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「宇宙、私ね。耳が聞こえなくなって、音楽やめてたんだ。」

海辺に座って語る。

「それで何とか見える世界を表現したくて絵を始めたんだ。だけど、やっぱり音が無いって怖い。否が応でも自分から出る鼓動しか感じられなくて、段々昔の音も思い出せなくなってきて、色んな人のアシストが無いと会話も出来ないからずっと迷惑かなって申し訳なくなってきて。」

「宇宙はどう?今まで敵だと思ってた人が自分だったなんて。見方も変わっちゃって。だから昔の自分がどんな感じだったかも分からなくなっちゃうと思うんだ。私だって、最近絵描けてないし。」

海が月にほんのり照らされる。

「実は…ソプラノが、死んだ…。」

樹林は首を傾げる。

宇宙は再び黙った。

「私達、待ってるからね。」

立ち上がる樹林。

「危ない!!」

樹林の足を押してどかした。

バケモノだ。

「バケモノ…!ありがとう宇宙。」

『元素プレイヤー!』

『ニホニウム!セメント・象徴化(シンボライズ)!』

「逃げて!!」

セメントは宇宙を守るために戦う。

宇宙は元素プレイヤーを落としてしまっていた。

「…ッ!」

宇宙は走り出した。

『セメント・ブレンド!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「やっと完成した…。」

早朝、アルトは組織用PCから流れたニュースを見た。

「ん…?」

報道アナウンサーの焦る声が、栄えた街の人々の惑いを強調した。

『ただいま午前6時20分です、出勤中の方々、あれは学生の方でしょうか。最近噂されていました"バケモノ"が今朝大量発生しているとの事で中継です!』

目を見開いた。

「何…っ!?」

『現時点で死者は出ていませんが、国土交通省は社会災害として、各所では緊急避難所を作る声が求めら』

アナウンサーがバケモノに襲われ、途切れた。

「まずい…!」

眠っていたクラック一同を起こす。

「都心でバケモノが大量発生している!今すぐ向かうぞ!」

バケモノの大群が、クラックに押し寄せる。

「朝からこんなに…。」

アルトはテノールにドラム型プレイヤーを手渡す。

「水上宇宙にこれを届けてくれ。」

「分かった。行くぞ、央駆。」

独りに溺れし仲間の方へ走る2人をバケモノの大群は追いかける。

アルトは大地の肩に手を置き、自身のドラム型プレイヤーを構える。

「スティックは殆ど無いが辛うじて。」

大地はアルトの顔を見た。

「俺達で食い止める。」

『メメント・ヘリウム!』

『ラメント!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

走り疲れる宇宙。

「どうしてこんな事に…。」

啓太と光太郎の姿が過ぎる。

「…ッ。」


足音。


央駆とテノールだ。

「俺を捜してたのか…?」

「アルトは闘い疲れた時、よくここに来ていた。」

それは小さな公園だった。

「"そんな気がして"な。」

テノールは、アルトの作った元素プレイヤーを渡す。

「これ、アルトが作った元素プレイヤー。」

「お前のだ。」

アルトが。

「受け取れない…。」

もう、腕を脚を振り下ろすのは疲れたのだ。

「…そうか。」


銃声。


「避けろ!」

まただ。また誰かが命の危機に晒されている。

「…お前は。」

テノールの形相がさらに険しくなる。

チューブラーベルの()が鳴り響く。

「貴様を始末しに来たつもりだが、どうやらメメントにはならないらしい。」


「しかし」


「君は英雄ではないのだ。」

「何が言いたい。」

央駆は警戒する猫のように睨みをきかす。

「このガイスラーが貴様の価値を決定する。」

『元素プレイヤー!』

ティンパニ型の元素プレイヤーだった。

「大地の…!」

スイッチを押し、重厚な音楽が奏でられる。

"Pa"の文字が刻まれたスティックで、なぞる様にティンパニを叩く。

象徴化(シンボライズ)!』

『モメント・アクチノイド!!』

設置されたシリーズインジケーターが【A】を指す。

「たった今、神殿の所持するプロトアクチニウムエレメントスティックにより神の側近ガイスラーは【プロトモメント】となった。」

「プロトアクチニウム…!宇宙!」

それでも水上宇宙は、元素プレイヤーに触れようとしなかった。

が、元素プレイヤーが水上宇宙に引き寄せられ手元へと落ち着く。

「…なんで。」

戦いたくもないのに、兵器が身を蝕み続ける。

何故。何故だ。

まるで"お前は戦う為だけに産まれた存在なのだ"と人生の意味さえ決められてしまっているようだった。

何故だ。何故なのだ。

「あああっ!!!!」

発狂する。

「戦わないのだな。ならば死ね!!」

『ラドン!エレメント・ショット!』

高エネルギーの弾丸が宇宙を迫る。


象徴化(シンボライズ)!』


爆撃を切り裂く戦士。

メメントがそこに立っていた。



水上宇宙の目の前に。

【所持スティック】

〈クラック〉

ヘリウム、ネオン×2、アルミニウム、カルシウム、カリホルニウム、ドブニウム、ニホニウム


〈もう1人のメメント〉

ネオン


〈ラボアジェ神殿〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、

水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン


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