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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第三章【汝自身を知れ】
31/44

30.侵攻的フェイス

図書館での悲鳴。

かつての友が荒らすその様は、宇宙と大地に大きなショックを与えた。

だが彼らは1人のヒーローとして、立ち向かうべきものに立ち向かう。

そしてインとヨウ、旧アイソトープでの仲間を失ったチューは"信仰"について、自身に問うのであった。

「うわああっ!」

樹林─セメントに圧倒されるクラック。

「一旦引け!」

央駆の指示が響き、足を引こうとした瞬間。

「ママ…!」

子供の声。

「助けなきゃ…!」

『ネオン!象徴化(シンボライズ)!』

「なあ、樹林。お前は子供の悲鳴が聞こえても俺たちと戦うのか?」

大地が声を投げる。

「…ッ、」

聞こえていないのか、樹林は1度も口を開かなかった。

子供の声が少し静かになる。

「大丈夫。すぐに外に出よう。」

メメントは大地を向く。

『加速』

燃え盛る図書館を出た。

「くそっ、」

荒くなったくるみの声。

樹林は立ち尽くす。

スケッチブックにその凄惨な空間を描いていた。

「おい、追うぞ。おい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ありがとうございます!本当に、本当に。」

図書館で被害にあっていた子の親が見つかった。

「いえいえ、」

子供は笑顔で手を振った。

宇宙も笑顔で振り返す。

「くるみさんはクラックの施設についてよく知ってる。このままじゃまずいんじゃないですか。」

「そうだな。」

大地には家がない。

帰れる家が、ない。

テノールがそのことについて言及する。

「大地。親はお前のことを死んだと思っている。心臓のドナーであるメイプルの事も、もはやモメントとして並外れた力を手にした今、尚更帰ることは難しいだろう。」

「何だ急に。」

「リム・ストローク博士のみが知る"隠し部屋"が存在する。そこへ移動しよう、本来はもう少し後に知ることになる筈だったが…。」


クラックは創設者リム・ストローク博士の隠し部屋へと拠点を変える。

「こんなところが…。」

エレメントスティックの想定利用手段や元素プレイヤーの初期構想など、色々な資料が綺麗にファイリングされていた。

「にしても綺麗だ、明かりもかなり新しい…」

央駆は資料を発見する。

「これは、メメント・二重奏(デュオ)の…」

"同型の元素プレイヤーを同時使用する事で、記憶が継承される。"

「メイプルのプレイヤーがドラム型だったから。」

「元から複数のプレイヤーを量産するつもりで…?」

「テノール、いつこんな部屋があると知った。」

「神の復活、側近のクルックスが本部に現れた。」

「クルックス?」

宇宙は聞き覚えがあった。

「ラボアジェ神殿の…」

「楽譜を持った男だ。」

「待て、話についていけない。」

テノールが上を指す。

(ガイネン)は、上の世界・ラボアジェ神殿に居る。それは地上で死んだ英雄のみが到達することの出来る世界。そこでは彼らは永遠に戦うこととなる。いずれ来る戦いに備えて…。」

「確かに、ガイネンは強かった。」

「クルックスの攻撃によって地面が破壊され、この部屋がようやく見つかった。無論そこで隠れることなど当時できなかったが。」

「樹林はどうして…。」

「おそらくメメント・モリの一件で信じられなくなったくるみがアイソトープに勧誘され、その流れで接点があった樹林が関与したのだろう。」

「絶対に取り返す…」


物音。


「上か?」

央駆が向かう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チュー。

「何の用だ。」

元素シューターを構える央駆。

「違う、話をさせてくれ。」

宇宙と大地、テノールが外を出る。

「チュー!?」

「宇宙、大地。気をつけろ、何か企んでいる筈だ。」

「いや、」

テノールが阻止する。

「何故アイソトープで俺を助けた?」

「え?」

一瞬、央駆はチューから目線を逸らした。

「お前達アイソトープに攫われ、縄で縛られた俺を解放したのは確かにお前、チューだった。何故だ。」

「それは…」

「お前も実は疑問を抱いているんじゃないのか?」

神を信じてバケモノを生み出していたチュー。

「そ、そんな神を裏切る事は」

「バスに動かされている。そう思っているんじゃないのか?」

「…うるさい、うるさい!」

「じゃあどうしてわざわざ此処へ来た!」

「私は…私の手で神に認められに来たのよ!!」

ティンパニ型の元素プレイヤーを取り出した。

「どうしてそれを!?」

大地はしっかりと同型の元素プレイヤーを持っていた。

「リム・ストロークとアルトの所持したデータを元にソプラノが量産している。」

ティンパニのチューニングペダルのようなパーツを4つ押すと、重厚な音楽が奏でられる。

"I"の文字が刻まれたスティックで、なぞる様にティンパニを叩く。


象徴化(シンボライズ)!』

『モメント・ハロゲン!!』


設置されたシリーズインジケーターが【H】を指す。

チューはヨウ素の力で、モメント・ハロゲンへと姿を変えた。

「元素プレイヤーが拡大すれば世界は…」

「モメントは、俺1人で充分だ。」

『モメント・アクチノイド!』

モメントvsモメントの戦い。

「場所を変えよう。」

『加速』

2人のモメントは、被害の少ない場所へ移動した。

「いつまでも向こうの攻撃を待っていてはいけない。我々もアイソトープを突撃するべきか…。」

「行くなら、俺はここでスティックを守る。」

大地が戦っている中。

テノールがクラックの本部に。

央駆と宇宙はアイソトープへ向かう。

「またここで落ち合おう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「クラックは私が滅ぼす。ラボアジェ神殿に行って私が神を崇める。神の支配を受けるのよ、!」

「いきなりきたかと思えば何も変わっていない。インもヨウもいなければ昂る顔が無いか?チュー。」

「うるさい!どいつもこいつも私を穢して!ああっ!」

走るモメント・ハロゲン。

毒素がモメント・アクチノイドに向けて飛び散る。

「そんなものか!」

『屈折』

地面に毒素がばら撒かれる。

「ううっ、ううああああっ!」

やけくそに駆け回った後、そっと一息をつく。

「…そう。メメントは強化されていき、下方大地もモメントとして戦い、未来の刺客も分裂し、私の仲間は消えていく。全く面白いものね。」

急にいつものような冷静さを取り戻す。

「何が言いたい。」

「みんな頭が悪くて、感情的になり朽ちる。でも私は違う。私はこれからも美しく生きていく。」

「そして、戦略的に。」

「話は終わりか?」

モメント・アクチノイドが元素シューターを構えながらチューの方向へ走る。

と、段々と足取りが重くなる。

「!?」

「地面にヨウ素の力を染み込ませた。貴方のスピードは段々と、段々と遅くなっていく。体力はゼロへと近づいていく…。」

「く、っ。」

「何も学びはしないのね、セレンを利用して生き延びた私よ?他の奴らとは違うの。日香くるみはバスの奴隷。上方樹林は1人では何も出来ない。私は1人で考える。1人で成し遂げる。神を復活させるのは、私。」

モメント・アクチノイドを蹴り、元素シューターを取り上げる。

『ヨウ素!エレメント・ショット!』

銃口を頭に突きつける。

「終わりだ、下方大地。」


『自分の死の未来が脳裏を過ぎった時の感覚は、何も信じさせてくれないと思うわ。きっと死ぬ瞬間に限ってインは誰も信じられなくなったに違いないわ。』


ヨウとの会話がよぎる。

銃が震える。

「下方大地。」

銃が落とされる。

「神を信じた私は、誰かに信じられていたと思うか?」

足に力が入らず、立ち上がれないモメント・アクチノイドは大地の姿に戻って言う。

「少なくとも、アイツらには。」

自分が上から見ていた、インとヨウ。


「バスのやっている事は、間違っている…。」


チューの一言に、大地は注目する。

「あれは力のある者による侵略だ。信仰を盾にした侵攻だ。私はあくまでも神の護る世界を信じている。バスの欲に加担する筋合いは、私には無い!」

ヨウ素のスティックを見つめる。

「ヨウ…。私は今のアイソトープを信じられなかった。」

破損した元素プレイヤーとスティックを大地に手渡す。

「どうか、持っていてくれ。」

「どういう風の吹き回しだ」

「新生アイソトープは、(ガイネン)を信じていない!奴らは、神の側近として世界を牛耳るつもりだ!」

「…何?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クラック本部。

その奥にある"リム・ストロークの部屋"。

意識不明の男が1人。

円周の敷く道に従って火の中を転がるコマ。

鮮血に染まる資料。

回収されるエレメントスティック。

「テノール、こんなにスティックを隠し持ってたなんて。」

テノールの保持していた大量のスティックを前に、ソプラノは笑みを浮かべる。


「さあ、時は満ちた。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「神の側近として、人間を選別し争わせようとしている!この地球は神の救済を謳い滅びに向かっ」


閃光。


目の前の女は、大地の膝の上で眠りについた。

「…あれ?」

スティックが抜かれている。

「万物を創造し、万人の形を変え、万国を支配する。牙を向ければ溶かす迄。この掌で貴様らは生きている。」

まるで聞いた事のない音の方向を大地は怯え向く。

意識を失い、バスに首を掴まれた宇宙。

大地の元素プレイヤーも宇宙の方へ引き寄せられる。

「なに、こんな簡単に回収できたのか…」

「チューももう少し我々を欺けられれば好プレーだったものを。」

宇宙を地面に捨て、全てのスティックを並べる。

「今 封印を解かせていただきます。」

「我は信じる。神による麗しき支配の元で生ける者、【モリ】である事を。その大いなる力により、この世界を争いから救い出してください。」

「今、復活の刻。」

唐突に現れた扉が開かれ、極めて禍々しい、首にウロボロスの蛇の象徴(シンボル)が巻かれている"怪人"が姿を見せる。



「我こそが、(ガイネン)。」

【所持スティック】

〈クラック〉


〈新生アイソトープ〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、

水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、ニホニウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン



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