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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第三章【汝自身を知れ】
28/44

27.重層的ターニングポイント

ドブニウムの力でスティックハンターとして、【スティック狩り】を始めたくるみ。

全てのスティックが揃うとき、神が復活し地球の支配を始める。

クラックは新生アイソトープから地球を守るため、かつての仲間がいる組織に立ち向かう。

そして、未来からやって来たというテノール。アルト達の遺したヒントから、宇宙は自身の秘密を知ることになる。

スティックハンター。

エレメントスティックを"狩る"ためだけに生まれた存在と化したくるみを前に、クラックは立ち向かう。

宇宙はメメント・モリとして応戦した。

「アイソトープにスティックは渡さない...!」

スティックハンターは我武者羅に腕を振り回す。

『ダイナミック・チャージ!C!』

『チューンメメント・クラック!』

メメント・モリは手刀で左肩の筒にヒビを入れた。

「...、!」

くるみ─否、スティックハンターは声を出さない。

「どうして!!」

「お前が人殺しだからだ、メメント。」

バスの声が刺さる。

が、蓮が押してくれた背中はもう二度と、倒れない。

スティックハンターが大砲のような両肩の筒から鋭く大きい針を乱射する。

「俺はもう…逃げない!!」

『D』

『チューンメメント・ドレイン!』

針を吸収して、スティックハンターに撃ち返す。

「!?」

「あああああっ!」

スティックハンターは直ぐにくるみの姿になった。

「まだ経験が浅いみたいね…でも、」

バスがフラスコを地面へ叩きつけると、煙が発生。


「神の目は既に開いている。」


宇宙の内側へその言葉を震わせるように声は空を弾いた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「くるみは完全に神の虜になっている。」

大地が言い切った。

「いや、もしかしたらまだ」

遮り胸ぐらを掴む。

「言葉だけで納得する程人は強くないんだよ!」

宇宙は胸ぐらを掴む腕を持ち、そっとおろした。

「…そうか。そうだよな、」


「俺たちはクラックとして戦うしかないのか…?」


「ああ、今はな。」

扉が開く。

「テノール...?」

テノールは深刻そうな顔であった。

「やはりソプラノもバスに続く裏切り者だった。」

「知っていたんだろう?」

「ああ、対策は練ってある。他人の説得よりもこちらが変わる方が早いからな。」

「対策?」

テノールが指をさしたのは、【緊急時以外使用禁止】と書かれたスイッチだった。

「あ、これって…結局何だったの?」

「リム・ストローク博士が開発した、オガネソンタイマー...世界最大級の加速器だ。」

「加速器?」

「ああ。このオガネソンタイマーは、粒子を"光速"まで動かすことが出来る。俺たちは、これを使って過去...この時代にやってきた。」

「へえー...え?」

大地「え?」

央駆「え?」

テノール「え?」


「えええええええええええっ!?未来人なの!?」

テノールはクラックに伝えていなかったことに気付く。

「あ、言ってなかったか。未来人だ。」

「いやちょっと待ってくれ、ということはアルトもソプラノもバスも…?」

「未来人だ。」

「最悪だ、考えることが多すぎる!なぜ言わなかった!」

「アルトに口止めされていたんだ!お前達が絶望するから」

「絶望?」

「ああ。もうアルトは居ないから言うが、俺たちの未来は既に神に支配されている。」

「え...?」

「人口は1桁。底知れぬ技術力のある者だけが生き残った。医学に長けた医術師(アルト)、未来予測に長けた占術師(テノール)、瞞着に長けた奇術師(ソプラノ)、そして…魔術師(バス)。」

「そして神に忠誠を誓ったのが、バスだと。」

「そうだ。元はこの時代のクラックの延長線上だった俺たちは神の復活を阻止しようとしたが、無理だった。勝てなかった。」

宇宙が耳を研ぎ澄ます。

「力に溺れたバスは神に従い、俺たちを追い込んだ。もう勝てないと俺たちはあの時代を捨てて、本部のオガネソンタイマーで2025年へやってきた。」

「そんな...じゃあアルトはどうして俺に宇宙の心臓を狙えと?メメントを殺すということは神を倒せなくするという事じゃないのか?」

「それは、アイツが...」

言おうか言わぬか、迷った。が、テノールはキッパリと言う方向に賽を振った。


「水上 宇宙だからだ。」


「...え?」

ただでさえ分からない問題に、分からない答え。

宇宙は問い詰めた。

「どういうことだ!俺がアルト?俺が医術師?俺が俺の心臓を?音楽は!ドラムはどうした、」

アルトの和室に、ドラムセットが置かれていたのを思い出す。

「ドラムを、続けていたのか...?」

だが、あまりにも違いすぎる。本当に、ただの他人のようだった。口調的にも、およその年齢的にも、一直線上の未来の自分としては有り得なすぎる。

「考えてくれ、君は1度死んで水上 素流として生きた。」

「なぜだ?」

宇宙の脳は、ダイナミックタムを通してMr.クーロンに告げられた真実を掘り返す。


『君の心臓は、動き続けている。』


「まさか、俺...、」


「【転生】してる...?」


テノールが口を開く。

「アルトが言うには、そうだ。」

「そうなんだ...。」

それしか言えなかった。

特に何ともなかった。輪廻転生思想というものは古くから一部の人から信じられているものである。

当然自分が"確実に"転生している事が世間に広まれば、大ニュースになる。学問が揺らぐ。最悪の場合は宗教戦争に発展するかもしれない。

そして水上 素流という一時的な存在が転生の途中のものであったとしても、証拠がない。

銃で撃たれたショックで記憶喪失になっていただけかもしれない。ただ完全に死人のそれであったし心臓をしっかり取られたので今生きているし胸の鼓動を感じるのは、自分が"只者では無い"ことだけを明確にしていた。

でも、正直どうでもよかった。

「まあ、心臓が復活してるからなんだって話ではあるんだけど。そりゃ狙われたり色々あるしマジで怖いけど、どうしようもないからなあ...。」

テノールは、なんだか安心した。

「そうか…アルトは心配しすぎたのかもしれないな。」

「じゃあアルトが消えたのって。」

「水上宇宙が撃たれたことで未来が変わり、アルトでは無い別の人間に転生した世界線になったからだ。」

「もしかして、アルトはそれを狙って…?」

「真意は本人にしか分からない。が、アルトは確かに神に立ち向かっていた。俺はアルトを信じている。だから神の復活を何としてでも阻止したい。」

「どんな手を使っても...。」

テノールは本題に入った。

「そこでだ。」

宇宙の真実を知り驚いた一同の頭は直ぐに切り替わる。


「俺をクラックに入れてくれ。」


央駆は直ぐに応えた。

「勿論だ。」

大地が疑う。

「待て。ソプラノの態度は奇術師を名乗るにしてはあからさま過ぎた。それに気付いていながらも深く追及をしなかったのは何故だ?」

「...それは、仲間を減らすのが怖かったからだ。」

「問い詰めれば確実に離れる...それが怖かった。」

「そうか。」

大地はある程度の抵抗を見せる。

「、、腕はどれくらいだ?」

「外へ出よう。」


クラックは大地によるテノールのテストに外へ出た。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『元素プレイヤー!』

「いくぞ。」

『元素シューター!』

「こい。」

『モメント・アクチノイド!』

『セレン・スマッシュ!』

モメントがセレンのコピー能力により増殖する。

「オートでお前に攻撃をする。倒してみせろ。」

「やってやる。」

モメントはオリジナルを除き5体。

モメント1がテノールに向かって拳を構えると、テノールはモメント1の右腕を掴み拳を下げさせ、自身の左腕で首をロック。銃で撃ち、モメント1を倒す。

次いでモメント2が上から攻撃を仕掛けるが(かわ)し、地に足をつけたモメント2の頭を撃つ。

モメント2を倒した。

「やるじゃないか...。」

モメント3とモメント4がテノールの左右にやってきた。

テノールはしゃがみ、モメント同士はぶつかる。

互いの顔が当たる瞬間、しゃがんだテノールは下から銃でモメントの顎を撃ち抜く。

残るモメントは1体となった。

元素シューターを構えた。

「終わりだ。」

『加速』

「何が起こるかは分からないぞ!!」

背後に飛び迫るオリジナルのモメント・アクチノイド。

即座に気配を感じ取ったテノールはモメントの手元のトライアングルを銃で撃つと、トライアングルの元素プレイヤーは宙を舞った。

「!?」

テノールはモメントの頭上の空を撃つ。

『屈折』

モメント・アクチノイドの後ろで、爆発音が聞こえる。

モメント5が倒されたのだ。

「…さすがだ。」

「これでも神には勝てない。」

央駆が前に出た。

「元から未来のクラックなんだ、Tbチューニングキーもテノール経由で貰った。共に戦おう。」


正式に、テノールがクラックとなった。


「やった…ん?」

宇宙は何か、不穏な空気を察した。

テノールは背後で何かが歩くのを感じる。

元素シューターを構えるとともに後ろを振り向く。

後ろには、ソプラノが立っていた。

「ソプラノ…ッ!わざわざ煽りに来たのか?」

「おっ、すごぉいやるじゃんその通り。きっと皆の表情がぐちゃぐちゃになる様が拝めるかなって!だってコレ見て!」

手元には、クラックのUSBメモリ。

「それは…!元素プレイヤーのデータが!!」

「バぁああーカ!手遅れだッつーの!」

USBを見せびらかすソプラノ。

「本当にアイソトープについたのか!」

「私は元々神を信じてる!!」

テノールが元素シューターを撃つ。

ソプラノも撃って対抗する。

「スティックをよこせ!!」

バスとくるみが堂々とやってきた。

くるみはスティックハンターへと姿を変えてしまう。

「ここは俺たちが!」

『メメント・モリ!』

『モメント・ランタノイド!』

メメント・モリとモメント・ランタノイドはそれぞれ、バスとスティックハンターに立ち向かう。

「待て!」

ソプラノがそれに紛れて走り去ると、テノールが追いかける。

「テノール!」

央駆はキセノンのスティックをテノールに渡す。

「行け!」

スティックを受け取ったテノールは駆けた。

「スティックを奪われないことが最優先だ!」

『鉛!エレメント・ショット!』

スティックハンターの足どりが重くなる。

『加速』

『カリホルニウム・クラッシュ!』

『カルシウム!エレメント・ショット!』

それぞれの必殺技が合わさる。


爆発。


ソプラノが走った。

テノールがそれを追いかける様を央駆は再び見た。

「あれ…さっき行かなかったか?」

手元にはキセノンのスティックがある。

「何が起こった…」

「キセノンのスティックを!」

宇宙の呼びかけに応じ、央駆はスティックを投げると。

「!?」

央駆の背後に何かが現れた。


象徴化(シンボライズ)!キセノブレード!』


メメント・キセノン。斬られ麻痺状態になったスティックハンターの隙をモメントが突いた。

『トリウム・クラッシュ!』

「…ソプラノ、やったか。」

スティックハンターにモメントの必殺技が当たりそうになった瞬間、バスはフラスコを割って姿を消した。


「また逃がした!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アイソトープ本部。

「どういうつもりだ…?」

テノールは、身動きが取れぬよう縛られていた。

「ようやく実行に移せるわ…っ!」

データをもとにソプラノが作っているのは、



新たな元素プレイヤーであった。

【所持スティック】

〈クラック〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、

水素、ヘリウム、炭素、酸素、フッ素、ネオン、リン、アルゴン、カリウム、カルシウム、スカンジウム、ガリウム、セレン、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、カドミウム、アンチモン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、タンタル、タングステン、オスミウム、水銀、鉛、ラドン、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、コペルニシウム、フレロビウム


〈新生アイソトープ〉

臭素、ヨウ素、ポロニウム、ドブニウム、シーボーギウム、マイトネリウム...


NEXT▶28.慈悲的セメント

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