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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第二章【同じ川に二度入ることはできない】
24/44

23.高圧的キャスリング

宇宙がメメント・モリとしての戦いの記憶を、人を殺めた記憶を思い出してしまった。

メメントとクラックの間に亀裂が入る。

それでも現れるバケモノに、モメントと央駆によるクラックは翻弄され続けていた。

雨音。

「おい…おいッ!!」

女は振り返る。

「なァに?」

「どうして、どうして裏切った。」

「裏切った…当たり前じゃない、生きる為よ。」

「逆に聞くけれど、何故自ら死に走るの?救いの手を払って、策もなく楯突いて、もう殆ど何も残されていないのに。」

「黙れぇっ!!」

調律(チューニング)!』

戦士が走る。

「あははっ!もうそれしかないもんね。」

女が歩く。


起動。


爆発。

「!?」

四肢が飛び散る。

地雷が作動したのだ。

「嘘、だろ…?」

仕掛けた記憶のない兵器に戦慄する。

また1人の女は四肢を拾いあげ、その温度を感じる。

「さっきまで生きてたんだ。」

拳が地を叩く音は、鎮まりきった空気に呑まれる。

「クソォ…ッ、!!」


3人は、神を前に戦わぬ術しか持ち合わせていなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

モメントは単独で、

K=カリウム、Cd=カドミウムのバケモノと戦っていた。

「こんな街中で!」

『モメント・アクチノイド!』

「一気に決める!」

モメントはギロ型プレイヤーを出す。

「はっ!」

カドミウムにメッキ塗装されてしまう。

「何、メッキにしたとて!」

スティックを擦る。

バキ、バキ、バキとプレイヤーの表面が割れていく。

「塗装割れだと…!?」

「残念だったな、死ね!」

迫り来るカリウム。

「こうなれば拳で、」

「おらよ!」

カリウムはモメントの右拳を掴むと、モメントは(ちから)が抜けるのを感じた。

「どうして…、力が…っ。」

カリウムによる著しい筋肉痛である。

「けぇーっ、けっけっけ。どうした?かかってこいよ」

「…っ、」

震える右手でスティックを持つ。

『リン!エレメント・ショット!』

元素シューターを注射器のように扱い、骨を強化してカドミウムによる骨軟化を防ぐ。

「けっ、麻痺ったその手で何が出来る。」

「カリウム不足で筋肉が引き攣ってるだけだ。」

『セレン!エレメント・ショット!』

カリウムをコピーして自分に打ち込み、麻痺を回復させる。

「はっ!」

モメントの蹴りでカドミウムは敗れた。

「けっ、覚えてろよ〜!」

カリウムは逃げた。

加速を発動しようとしたが、トライアングルもまたカドミウムの足掻きでメッキ塗装されていた。

「くそ、」

大地はカドミウムのスティックを拾う。

「宇宙…」

人を殺めたことを気付かされる苦しみは計り知れない事である。一体誰が悪いのか。そんな事を考えても何が解決する訳でもない。大地はクラックの拠点へ戻ることにした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おいチュー!カドミウムやられたぞ!!」

大焦りをかますヨウ。

「まあ、まだカリウムがいるから大丈夫ね。」

「そうやって毎度落ち着いてるからクラックに負けるんだ!あの時みたいにもっかいクラック突撃しかねえ!」

「今モメントが大体のスティックを持ってんだ。ここで勝てば…」

「ええ。でも勝てるかしら?」

「何弱気になってんだよ!」

「弱気じゃないわ、冷静に考えて。相手はモメントだけじゃない。いつメメントの邪魔が入るか…」

「くっ…どうしてだよ。どうして勝てねえんだよ!」

机を叩く。

バケモノを監視する為のモニターが少し揺れる。

チューはそれを確認して言う。

「…行きたければ行きなさい。インはそれを実行してメメント・モリを誕生させ死んだけれど。」

「…っ、」

ヨウは何かを堪え、一言も声を出さずにその場を去った。


(ガイネン)…」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ったく、なんでだよ!何すりゃ勝てんだよ!」

人と肩がぶつかる。

「あぁ、どこ見て歩いてんだ!?」

ヨウの反発を押さえつけるように質問がぶつかる。

「君。アイソトープだね。」

「あ?何で知ってんだ。」

「メメントに勝ちたいと思っているね。」

「メメント…!?その名前どっから、」

「勝たせてやろうか。」

怪しいが、その怪しさに気づかぬ程、ヨウは焦り憤っていたのである。

「勝たせてくれ。」

「これを使うと良い。」

渡されたのは、注射器だった。

そこでようやくヨウは危ない事に気が付く。

「えっ、注射器?」


「では。また会いましょう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

病院。

「今日で退院となります。お疲れ様でした。」

バケモノに襲われて数ヶ月が経ち、蓮の師匠は身体を悪くして入院していたが、いよいよ退院の日を迎えた。

「ありがとう。」


窓ガラスの割れる音。

鉛筆工場で最後に見た景色と同じものであった。

「…怪物、!?」

慌てたが、すぐに看護師を避難させる。

「逃げるんだ!!」

「え?は、はい!」

怪物の事は噂になっていた世ではあるが、いざ我が身に降りかかると動くことの出来ない看護師であった。

走り出す看護師は殴られた。

「!?」

K=カリウムのバケモノだ。

「けっけっけ、ここまで来ればアイツらも…」

「そこまでだ!」

『モメント・アクチノイド!』

「なんで!」

モメントのパンチで飛ばされるバケモノ。

『酸素!エレメント・ショット!』

やって来た央駆の撃った元素シューターに反応してカリウムは赤紫色に燃えた。

「熱ッ!炎色反応しやがった!!」

バケモノは央駆に指をさす。

「けっ、ここまで来るとは面倒な奴だ。」

蓮の師匠は央駆と目が合った途端、縋り付いて問う。

「蓮は!!」

その目は涙を纏っていた。

「蓮は…どうした!?最近連絡が無い、あの子ならすぐに返す筈だ何があったんでしょう!?」

両腕を振られる央駆は歯を食いしばって答えるしか無かった。

「…彼は、」

「うあああああっっ!」

バケモノの怯える声。

「なんだ、」

宇宙が歩いてきた。

足音は一音ずつ、地を伝って脳まで響き渡る。

「カリウムか。」

Tbチューニングキーを、ダイナミックタムのアタッチメントパーツと連結させる。

『テンションボルト!』

チューニングキーを右に回す。

調律(チューニング)!』


『メメント・モリ!!』


メメント・モリ(調律済)がバケモノへ近づく。

「お、お前確か強いんだよな!?」

「倒す!」

連結されたTbチューニングキーをひねる。

『ダイナミック・チャージ!』

4分音符でビートが刻まれる。

「逃げて。」

看護師は逃げる。

『C』

もう一度ひねる。

『D』

もう一度、

『E』

『F』

『G』

『A』

『B』

最後にもう一度。

『C』

16分でビートが刻まれる。

バケモノの胴体にボルトが出現。

「何!?」

メメントはTbチューニングキー本体をプッシュする。

『チューンメメント・インパクト!』

「はああああああっ!!」

人差し指と親指でつまむように手を出すと、大量のチューニングキーがバケモノに付いたボルトと連結。

メメント・モリが手首を180度時計回りにひねる。

チューニングキーによってボルトが回転する。

「お前の技ほぼ拷問だって…わあああああッ!」

カリウムは爆散し、スティックはメメント・モリの手元へ引き寄せられた。

蓮の師匠が反応する。

「その姿は…!」

央駆にそうしたように、メメントの腕にしがみつく。

「蓮は…!」

メメントは宇宙の姿に戻らずに言い切る。


「死亡しました」


徐々にその手は力を失っていく。

「何故…、何故!!」

メメントを叩く。

「クラックは我々を守ってくれるんじゃなかったのか!どうして弟子が死ななければならなかった!」


沈黙。


深い、大変深い声混じりの溜息を吐く。

「貴方たちの事は信じられない。」

それ以上の事を言わず、病院を去っていった。


「どうして」

大地はメメントに向かって聞く。

「事実だからだ。すまない、お前を殺す。」

大地は激昂せず、宇宙の何かを察した。

「何があった」


「死後の世界を観た。」


意味のわからぬ発言だが、嘘では無いと確信できた。

「そこでは地上で死亡した英雄が争い合っていた。(ガイネン)にも出会った。戦おうとした。勝てなかった。無理だ。従うしかない。人間には勝てない。」


一度死にかけた宇宙は、ダイナミックタムで死後の世界‐ラボアジェ神殿を観た。

声を除いて初めに聴こえてきた音は、剣と剣の交わる音であった。かつて教科書で見たような偉人だ。

四方八方で戦闘の嘆きが聞こえる。

もしかしたらMr.クーロンにも会っていたかもしれないが闇の中で会話していたのであるから、容姿だけでは確認できなかった。

ただ、蓮の姿だけは確認できた。

「蓮、!」

(ガイネン)の声が脳に染みる。

「貴様も戦うのだ。水上 宇宙。」

「これは何の為に…!」

「戦いの為の戦いだ。」

「ふざけるな!死人を弄んでいるのか…?」

『テンションボルト!』

ダイナミックタムを操作した。

「ほう。貴様もエレメントスティックを…やはり惹かれる運命のようだな。幾らでもかかって来い。」

「うおおおおおっ!!」

走った。筈だった。

が。

自分の存在が消えたのをしっかりと感じられ、直後に眼が認識したのは蓮の姿だった。

「!?」

すぐさま足を止めた。

「なんで!?」

右耳を通る声。

「我こそが神だからだ。」

右を振り向く。

心臓を貫く(つるぎ)

はっきりとこの目で剣先を見た。

が。

痛覚を感じなかったと思うと、傷すら付いていなかった。

気がつけば剣先は消えていて、床の奥に神が居た。

「!?」

「周りを見ろ。」

よく見ると、闘っている英雄たちは傷1つ無い。

「え、」

「我…(ガイネン)由来の治癒力だ。今貴様に確かに刺さった剣の痛みも、刹那に癒える。」

「そんなっ」

床が消えた。

「?…うわあああああ!!」

無に弾む身。

頂点で横に弾かれ、見えぬ壁にぶつかる。

「うわあっ!」

「これが力だ。全てを操る事のできる、神の力だ。」

宇宙は、思い知らされた。

「何時もこのラボアジェ神殿から貴様らを見ている。今すぐ貴様の世界から良き戦士を殺してここへ連れて来い。さすれば世界は救われる。」

「そんな、事ッ、」

神と目が合ったと思うと、脈が上がるのを感じる。

口から腎臓が飛び出る。

「…ッ!?」

戻る。

宇宙は吐いた。

が。嘔吐物は結晶となり砕けた。

「!?」

「驚愕の連続か、全て我が力。今すぐにでも貴様の世界を一息で滅ぼす事が出来るのだ。ただ滅びてしまえば繁栄もしない。即ちラボアジェ神殿の繁栄に限界が来てしまう。故。貴様が殺すのだ。英雄を。」


「勝てない。」

宇宙からのその言葉を受けた大地は提案する。



「決着をつけよう、メメント。」

【所持スティック】

〈クラック〉

水素、炭素、酸素、ガリウム、フッ素、ネオン、リン、アルゴン、カルシウム、スカンジウム、セレン、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、カドミウム、アンチモン、タンタル、タングステン、オスミウム、水銀、鉛、コペルニシウム、ホルミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム

〈水上 宇宙〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、ヘリウム、カリウム、ラドン、フレロビウム


〈アイソトープ〉

ヨウ素 (ヨウ)


NEXT▶24.革命的バトル

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