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エレメント・メメント  作者: 廣瀨 玄武
第二章【同じ川に二度入ることはできない】
23/44

22.神秘的ラボアジェ

メメント・モリは"調律"された。

意識を維持しながら戦う事ができるようになったメメントは、最強の力でバケモノに立ち向かう。

ダイナミックタムを通して、新たな世界へ踏み入れる。

「この一撃で、お前を倒す!」

「意識が戻っている…?」

メメント・モリのパンチを受けたヘリウムは吹き飛ぶ。

「馬鹿な…ッ!?」

「はあっ!」

キック。

「うわあっ!こうなったら…!」

ヘリウムはラドンのスティックを出す。

「危ないっ!」

央駆は生身の大地を口を抑えるようにして守った。

ラドンのスティックを地面に叩きつけるバケモノ。

グラウンドに穴が空き、地下水に眠っていたラドンが気体として地上を襲う。

「放射性物質!」

「へ、へっ、これで小学校の奴らも…」

「ふざけるな!」

大地が立ち上がる。

『モメント・アクチノイド!』

『屈折』

空気中のラドンがヘリウムのバケモノに直撃する。

「決めろメメント!」

自然と言葉が漏れる。

「…ああ!」

連結されたTbチューニングキーをひねる。

『ダイナミック・チャージ!』

4分音符でビートが刻まれる。

『C』

もう一度ひねる。

『D』

もう一度、

『E』

『F』

『G』

『A』

『B』

最後にもう一度。

『C』

16分でビートが刻まれる。

バケモノの胴体にボルトが出現。

「何!?」

メメントはTbチューニングキー本体をプッシュする。

『チューンメメント・インパクト!』

「はああああああっ!!」

人差し指と親指でつまむように手を出すと、大量のチューニングキーがバケモノに付いたボルトと連結。

メメント・モリが手首を180度時計回りにひねる。

チューニングキーによってボルトが回転する。

「ば、馬鹿な…うわああああああああああっ!」


バケモノは、破裂した。

メメント・モリはヘリウムとラドンのスティックを獲得。

宇宙へと姿を戻す。

「メメント…戻ったのか。」

呆然とする大地。

「本当に良かった、これで自我を奪われずに戦えるな」

央駆が宇宙の肩に手を置く。

「ああ、記憶が無くならずに戦えるよ。」

宇宙が振りほどく。

「思い出してしまった。」

「え?」

「隠してたのか」


「俺が…俺が蓮を殺してたって。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おい!またやられちまったよ!!」

ヨウがビデオ画面を破壊する。

「かなり良い所まで行ったのに。たまたま妙なアイテムが出ちゃったわね、そして…」

チューは怪訝な顔つきである。

「どうしてバケモノが喋っているのかしら。」


「まだ生きていたとはなあ、チュー。」

「あら、テノールさん。私を舐めない方が良いわよ」

「しかしそうだろうと思ってはいたよ、ソプラノに何度も騙されてきてる。」

「ソプラノ…あの女ね。何を企んでいるのかしら。」

「俺にも分からなくなってきた。」

「な、なあ、あんたらって何者なんだよ。」

ヨウが何とか割り込む。

「アイソトープの連中には事細かくは言えないな、だが」

「だが…?」

(ガイネン)信者のお前らの味方とは言いきらない。」

「お前、(ガイネン)に背くのか!?」

「ヨウ、お前は(ガイネン)を見たことがあるか」

「…無い。」

「見たことがないから見たいんじゃない。ねえヨウ?」

「そ、そうだ!」

「浅はかだ。お前たちは(ガイネン)の恐ろしさを全く知らない、いずれ苦しむ事になるだろう。」

「何、テノールさんは知っているの?」

「…ああ。」

「どうして」

「俺は、昔の未来で(ガイネン)と戦った。」

「え?」

「昔の未来って」

(ガイネン)が、世界を支配する未来だ。」

「未来って」

「俺は未来から来た。そして…」

「俺たちは今で言う、クラックだ。」

衝撃の発言に固まるアイソトープ側。

「てことは敵じゃねえか!!」

立ち向かうヨウの頭を押さえつけ、壁にぶつける。


「教えてやる、あの時水上宇宙が死んでいなければ、未来の人口はたったの4人だ。」


「4人ですって!?」

流石のチューも冷静さを保てなかった。

「1人の裏切りで誕生した(ガイネン)によって世界は殆ど壊滅状態、リム・ストローク博士の設計したオガネソンタイマーで過去へ移動してきた訳だ。」

誰も頭を整理できなかった。

「オガネソ…ん?」

「ああ。オガネソンタイマー、今はクラックの施設にある緊急スイッチだ。」

「リム・ストロークって…タイムトラベルをそんな昔から、」

「あの博士の技術力は異常だ。元素プレイヤーを作るくらいにはな。」


「なんで俺たちにそれを」

少し情報を整えた後、ヨウがいつになく真剣な声色で問う。

「俺はソプラノが怪しくて仕方がない。」

テノールは(ガイネン)の墓に座る。

「あっ、おい!(ガイネン)のお墓だぞ!!」

「俺たちはコイツに全てを壊されたんだ。」

墓を叩く。

「ちょっと不敬!不敬!」

(ガイネン)はどうすれば復活するか、お前たちなら知っているだろう。」

「全てのエレメントスティックを、バケモノとして実体化させること…」

「そうだ。ソプラノは今、下方大地にスティックを集めさせている。」

「おかしな話ね、クラック側だった人間が(ガイネン)を復活させるような事をするなんて。」

「だから怪しいんだ、あいつは答えない。」

手を叩くヨウ。

「まっ、俺たちに聞いたのが間違いだったな。アイソトープにとっちゃ好都合でしかない情報だ。」


「…そうか。」


テノールの推測が間違っていなければ、

チューは少しだけ悩んでいる顔であった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

宇宙はダイナミックタムを掲げる。


「ようこそ、私の部屋へ。」

「Mr.クーロン、質問だ。」

「どうした。意識がハッキリとしているようだな。」

「蓮もインも殺したのは誰の意思だ。」

突拍子の無い質問に困惑するも、ありもしない息を飲んで答える。


「…神の意思だ。」


間を置いて、語り出す。

「少し昔の話をする。」

それは、Mr.クーロンの過去の生涯の話だった。


「私は、クラックで生まれた。」


驚くべき1文目に声を引っ張られそうになったが邪魔してはならぬ気がして何とか引き止まった。

「そこでは呼吸をするが如くメイプルの両親による怪物対策の研究と、私の生まれる前日に死んだリム・ストロークの残した数多の機械の解析が行われていた。」

「だが、我々の代のクラックは暗黒期。メイプルの両親はリム・ストロークと関わっていたにもかかわらず何も進展がなく、メイプルの両親は研究中に危険物質の過剰摂取で死亡。給料の問題で第一隊員は次々とやめていき、ついに私だけが残された。」

「違う職に就こうとすればクラックは謎を置いたまま壊滅することとなったが、私はリム・ストロークの残した謎達を放っておく訳にはいかなかった。」

「これさえあれば、私は世界を支配出来るかもしれない…そんな悪魔の芽生えた私の心に(ガイネン)の言葉が脳裏に響いたのだ…。」

薄い、それでいて味の濃い音を口から吐く。


『我を信ずる教えを説け』


「なぜお告げが私に届いたのかは分からん!だが、神による麗しき支配の元で生きれば、私はこの地獄から解放されると信じた!そうして私は(ガイネン)の墓をたて、クラックの保持していたスティックを捧げた。」


「…そして私が死んで23年が経つ。」

「23年?」

意外と最近だった。

だが、宇宙が疑問に思ったのはそこでは無い。

「何月何日だ。」

「ハッキリとは覚えていない。が、あれは夏だったか…」

「夏…分かった。もういい。」

「待て。もう少し語らせろ。」

「もういい」

「語らせろ。」

「…」

咳き込む音が闇中に響き渡る。


「水上 宇宙。君も聞かなかったか?」

「聞くって何を?」

「神のお告げだ!!」


『エレメントスティックを備えよ。』


「!?」

宇宙は思い当たる節があった。

それは、蓮を殺した時の脳内──メメント・モリの戦闘中に永遠に鳴り響いた【頭が良い】という声に苦しめられたあの時の音だ。

完全に乗っ取られたように、操作されたようにネオンのスティックを目前の墓に供えた記憶が蘇る。

「…なんで聞こえたんだ、それに俺の心臓が動き続け」

「おっと、呼ばれてしまった。」

Mr.クーロンは会話を終了させようとする。

「待て」

唐突に変わる声色で、会話は続行される。

「人を殺める苦しみがあるのだな。」

宇宙は拳を強く握る。

「……当たり前だ。」

「分かった、君も本来は"こちら側"の者だ。」

「こちら側?」

「ああ。(ガイネン)よ、宜しいだろうか。」

宇宙は何が行われているか、さっぱり分からなかった。

闇の中の闇だからである。

が、

「了承がおりた。やはり(ガイネン)であるからな。」

「何の了承だよ」

宇宙が分からぬ事を分からぬようにぶつける。


「クルックス!!」


この声は。

「なあ、君も聞こえたろう?今の声が。」

聞こえた。

「これは、(ガイネン)の…。」

「そうだ。」

すると今までブラックであった世界は一瞬にして碧くなり、光芒が差し込むそれの下には大きな神殿が現れた。

絶景という言葉では表現しきれぬ感動を前に、息を飲む。

「こ、ここは……?」

目の前にはフードを被った謎の男が2人。

一方は分厚く大きな楽譜を、もう一方はチューブラーベルを携えていた。

「おいクルックス。一度階段を昇りかけたと言えど、彼はまだ生きている。」

チューブラーベル側の男が険しい顔で訴える。

「それも偶々音楽を聴いただけで……」

そんな男の文句が聞こえていないかのように、楽譜を持っている男が答える。

「君はガイネン様に歓迎され続ける。」

「ここは英雄の居場所…」



「【ラボアジェ神殿】だ。」

【所持スティック】

〈クラック〉

水素、炭素、酸素、ガリウム、フッ素、ネオン、リン、アルゴン、カルシウム、スカンジウム、セレン、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、アンチモン、タンタル、タングステン、オスミウム、水銀、鉛、コペルニシウム、ホルミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム

〈水上 宇宙〉

ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、ヘリウム、ラドン、フレロビウム


〈アイソトープ〉

ヨウ素 (ヨウ)


NEXT▶23.高圧的キャスリング

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