道化遊戯 正義しか見なかった刑事と正義の味方になれなかった探偵の回想 三田守 その2
北斗千春によってドナドナされる予定の三田守だが、ライフステージの違いを思い知らされる事になった。
「じゃあ、車を回してきますので少し待って……」
「だ・ん・な・さ・ま」
真面目系クズの三田守でも分かる。
これ地雷を踏んだ奴だと。
「これから行くパーティーって旦那様が自ら運転するようなステージじゃないのよ」
「鶯谷駅までタクシーってもったいなくありません?」
三田守は女性あるあるの地雷を躊躇なく踏み続ける。
北斗千春の笑顔はとても綺麗であった。
隠れて見ていた『ズヴィズダー』スタッフの女の子は後に語る。
あれは激怒していたと。
「旦那様。確認だけど、どういうルートで九段下に行くつもりなの?」
「鶯谷駅から山手線で秋葉原駅に行き、そこから岩本町駅まで歩いて地下鉄で九段下」
「だ・ん・な・さ・ま」
その激怒が分からない真面目系クズは更に地雷を踏みぬき、すっと御御足を見せつけられる。
もちろん、真面目系クズにその意図、高いヒールの意味なんて分かる訳がなく。
「いつもながら色っぽいですね。千春さん」
「ヒール。これで歩くの大変なのよ」
地雷を踏み過ぎて怒りがオーバーフローしたらしく、怒りの笑顔が苦笑に変わる。
知らないというのは罪ではない。学ばない事が罪である。
「……九段下まで、タクシーですか?」
「正解。ちゃんと呼ぶのよ。旦那様」
タクシーは現役タクシー運転手で今回の結婚式の花婿である近藤俊作の伝手を使って彼の知り合いを呼ぶことにした。
ベテランらしく北斗千春の顔も知っているようで、車内の会話もはずむ。
「千春姐さん。今日はめずらしくおめかしで?」
「ええ。知り合いの結婚式に母親役で呼ばれてね」
「ああ。近藤の奴今日結婚式だったっけ?
あいつが所帯を持つとはねぇ……坊主は近藤の手伝いだっけ?」
「はい。探偵の方のお手伝いとネットカフェの副店長をさせてもらっています」
タクシーは山手線内に入り文京区東大方面へ。
東京の道はどこもかしこも基本混んでいた。
「じゃあ、坊主の方に結婚祝いを渡すから、近藤の奴に渡してくれないか?」
「あ、はい」
「馬鹿野郎。こういう時の祝いがご祝儀袋な訳ないだろうが。
奴の探偵側の情報だよ」
情報とは人と人を繋ぐから情報なのだ。
そんな人と人を繋ぐタクシーというのは思っていた以上に情報が集まるのである。
近藤俊作が探偵の副業ではなくタクシー運転手を本業に選んだのもそういうシナジー効果を見越していたのかもしれない。
「ここ最近、強盗事件が相次いでいるのは知っているだろう?」
「ええ。ニュースでやっていましたね。
白昼堂々と現金や貴金属が入ったカバンを奪われるって奴でしたっけ?」
「ああ。警察にも話したが、犯人の奴ら警察を撒く必要から複数タクシーを乗り換えていてな。
連中も馬鹿じゃないから色々と横道に逸れるように乗り継いでいくんだが、どうもいくつか乗り換えた先で港の方にに向かっているらしいんだよ」
「有明客船ターミナルにちょうど来ているわね。豪華客船『シャングリラ』号。
カジノもある超豪華クルーズ船よ。
旦那様。一緒に乗ってみる?」
船など退屈だからいいやと口にするほど三田守もクズではないので、あいまいな笑みでごまかす。こういう所で空気が読めるからなんとか犯罪者にならずに済んだのだろう。
後楽園が近くなってきた事もあり、渋滞は更に激しくなる。
タクシー運転手は渋滞なのをいい事に話を更に進める。
「どうもこの強盗、狂言じゃないかって国税局の偉いさんを乗せた時に聞きましてね」
「狂言ですか?」
「そうだ。坊主。
たとえば一億円が入ったカバンを強盗にとられたとして、その一億が後で見つかったとしよう。
だけど、そもそもカバンに一億は本当に入っていたのかな?」
狂言をするという事は、狂言をするだけの理由があるのだ。
それに金が絡むとなると、おおよその理由は二つしかない。
脱税か、マネーロンダリングだ。
「結婚式のご祝儀にしては物騒じゃない?」
「たしかに」
北斗千春にたしなめられて、タクシー運転手も苦笑する。
空気の読めない三田守だけは、その情報の意味を考えていた。
タクシー運転手がご祝儀として渡してくれた情報は、近藤俊作が追っていた事を意味している。
何のために? そんなのは一つしかない。
三田守も絡んだ新宿ジオフロントテロ未遂事件。
それを演出しようとした振付師とこちら側で呼ばれた人物は、事件がなかった事になった為に警察でも捕まえる事ができなかったが、近藤俊作だけは彼を追っていたのだろう。
「はい。九段下桂華タワーに着いたよ」
「ありがとう。これはお代ね。祝い事だからおつりはいらないわ」
「姐さんの場合、いつももらわないでしょうが。
またのご利用お待ちしておりますよ」
九段下桂華タワー前で北斗千春は改めて三田守を見て一言。
「とりあえず、着ている物は全部交換ね」
三田守は沈黙を貫き、近づいてきたメイドの相手は北斗千春に任せる事にした。
九段下への行き方
これは実体験。
私は年に一度日本推理作家協会の新年会に出ているのだが、その帰りに秋葉原の『新田毎』の蕎麦をできるだけ食べるようにしている。
その時の一番最初の記事がこれ。
『作家さんの集まるパーティーなるものに参加してみた』
https://ncode.syosetu.com/n7395ip/ #narou #narouN7395IP
ライフステージの違い。
庶民の君たちには一生理解できない...世界のセレブが露出の多い服を着る本当の理由【岡田斗司夫 / サイコパスおじさん / 人生相談 / 切り抜き】
https://www.youtube.com/watch?v=wJqEpk4bS4o
あまりに面白くて『プラダを着た悪魔』のDVDをポチってしまった。
なお、2がもうすぐ公開である。




