3.「こいつぁ出物だよ!」
ゲームで訪れたゴルンゴドは、町というよりはダンジョンであり、洞窟内の所々に人が住んでいる態だった。買い物をした露店の軒先で、移動時遭遇が発生したりもする。訪れる時期が遅めなこともあり、結構な難敵が登場した記憶があった。
しかし数度ばかりの魔物の襲撃を退けて、辿り着いてみると。峡谷の壁面に穿たれ築かれていることこそ同じだったが、ゴルンゴドの集落は、入り口からして異なる様相を呈していた。
「思ったより、明るい感じなんだなあ」
感心して見上げる先にあるのは、崖の裂け目。しかしただ壁面に切れ間があるのではなく、左右には全高3メートルほどの色違いの石像が、門柱よろしく据え置かれていた。その頭上に渡された石版には、『ゴルンゴド』の文字が刻まれる。
特に門番のような者がいるわけでもなく、入門は自由であるように見えた。しかつめらしい鎧姿の石像に目をやり、なんとなく象明を見る日出郎。
【ロックマック・ゴックサック】
【岩人種・石英の民/男・28歳/境界守Lv.14】
【体30 敏16 感21 知15 精20|HP115/115 LP41/41 EXP82/392】
「ゴルンゴドへようこそ、旅の方」
「これより先に魔物はおりませぬ。けして武器を抜かぬよう、お願いいたします」
ほとんど同時に左右の石像――としか見えぬ容姿の巨人――が身を屈め、岩を擦り合わせるような声をもって、歓待と警告を発してきた。
彼らこそがこのゴルンゴドで、そして各地の山岳地帯や地下都市で暮らす、岩人種である。血肉を備えながらも鉱物質の肉体を有し、耐久力と精神力に優れる反面、素早さや鋭敏さに欠く。
獣人種が祖となる動物ごとの民族に分かれているように、彼らは体を構成する鉱物によって細分化され、同じ人種と思えぬほど多様な外見と性質を持つとされる。
門番の一人ゴックサックは石英の民、いま一人に目を向けるとこちらは『燐灰の民』となっていた。
いずれにせよ、動き出してなお石像であるかのような外見である。直前に象明を見た日出郎ですら、ぎょっとなって硬直したのだ、不意を打たれた残り三人の驚きは如何許りか。ハチェトリーは咄嗟に身構え、ジャベリナに至っては警告に歯向かうよう、その手に槍を生み出しかけた。彼らを乗せた騎竜たちにも、動揺が見える。
ただ一人チェイネだけが愛騎を降りると、儀仗兵の敬礼を王族が鷹揚に受け流すように、優雅な所作をもって二人の岩人種に相対する。
「御機嫌よう、門衛のお二方。お勤めご苦労様」
にこりと笑ってスカートの裾を摘み、軽く膝を曲げて微笑みかけた。略式の跪礼、ただそれだけの何気ない挨拶だというのに、背後に豪奢な飾りでも幻視できるかのようだ。
「おお、これは何処の高貴なる姫君か」
「過分のお言葉、痛み入る」
片膝を突いて頭を垂れる、二人の巨人。たおやかに手を振って応えた淑女は、呆気に取られる仲間たちに振り返る。
「さ、参りましょうか……なんですの?」
「いや」
「その」
言葉を濁す主従を後目に、ジャベリナがずばりと切り込んだ。
「お前、ホントにお嬢だッたんだな」
「えっ! そこを疑ってらしたの!?」
疑うというより、忘れていたのだ。外見や喋り方は高貴なお嬢様そのものであるし、実際、徒人ならぬ家柄の出ではあるのだが。
「なんでしょうね。一緒に旅をしていると、ついその、気安くなってしまうというか」
「親しみ……そう、親しみやすいんだよ!」
「勇者さま」
うん俺いいこと言った、と内心で自画自賛する日出郎に対し、チェイネも優しい微笑を見せる。
「だからまあ君がお姫様でお嬢様な風に振舞っていると、変というか、びっくりしちゃうんだよ。サーセンした」
「……勇者さま」
言わなくてもいいことまで正直に言ってしまう日出郎に対し、チェイネはなんとも情けない顔を見せた。巨人二人も、微妙な顔だ。
ともあれ皆も騎竜を降りて、堂々と門を潜り、洞窟内部に進む。通路はすぐに幅も高さも優に十数メートルになり、洞窟と言うよりアーケード街のようだ。
あちこちに通気口を掘り開けているのか、広さもあって、空気が淀んでいる感じはしない。そして採光が不十分な代わりに、天井にも壁面にも人工の明かりが灯されている。
圧巻なのは天井一面を覆う正方形の照明群で、橙色を基調にゆっくりと色彩を変えており、揺らめき投げかける瞬きはまるで夕暮れの水面のようだ。
「素敵……!」
「ええ……なんと明媚なことでしょう……」
少年と淑女が陶然と声を上げ、少女でさえ、ぽかんと頭上を見上げていた。ただ独り日出郎だけは、高速道路のサービスエリアみたいだなあ……と方向性のずれた感心の仕方で、若干の温度差がある。
ここは正門前の大通り、という位置づけなのだろう。峡谷の荒涼たる景色と裏腹に、大勢の人々が行き交う活気のある光景が広がっていた。
通路の左右には露店が並び、そこここで歓談する声に混ざって、客引きをする商人たちの威勢の良い呼びかけが響く。
「安いよ、安いよ! 最新型の大型冷却装置が今なら二千、たったの二千!」
「この軽さでこの切れ味! こいつぁ出物だよ!」
「ね、新鮮でしょう? 朝掘りのシカタラ根を直通貨車で運んだからこそ、この瑞々しさ! うちでしか味わえない逸品だよ!」
声をかけているのも、かけられているのも、ほとんどが岩人種だ。門番の二人のように石像同然の肉体の者もいれば、頬や関節部など皮膚の薄い部分だけが硬質化している者もいる。
共通しているのは誰もが皆、宝石のように輝度と彩度の高い瞳を持っていることだ。ギリシャ彫像のような美女にはこれ以上なく似合っているが、奇岩を削り出したかのごとき厳つい顔の中年男まで、きらきらした瞳なのだから反応に困る。
「壮観ですこと! 私、旅暮らしの中でも、こんな大勢の岩人種を見たのは初めてですわ」
彼らとは趣きの異なる、好奇と感嘆の思いに目を輝かせながらチェイネが言うと、ハチェトリーも瞳を煌めかせた。
「僕なんか岩人種と会ったこと自体、今日が初めてですよ! すごいなあ、立派だなあ」
それは俺もだなあ、と日出郎は頷くけれど、彼の場合そもそも初めて見るものが多過ぎる。そんな風に感心しきりな仲間たちを余所に、ジャベリナだけは天井を見上げていた時のような感銘は窺わせず、庭石でも眺めるような目を岩人種たちに向けていた。
少女の視線を受けると、強面――と言うべきか、荒削りと言うべきか――の男たちはぎごちなく目を逸らし、張り切らせていた声のトーンを落とす。ユターの村で遭遇したような露骨な怯えとは異なる、警戒と反発の滲み出た態度だ。
「……へッ。行くぞ、お前ら。ここいらの店じゃ、大した物は見つからねーヨ」
いや『大した物』は求めてねーよ、と突っ込むことは許されぬ空気だったので、なんとなく気まずくなりつつその場を離れる。日出郎は無論のことハチェトリーも、最近ではチェイネも、すっかり馴染んでいたため忘れていたのだ。魔人種に対する世間の捉え方、というものを。
それでもまあ人の多い大通りを離れ、脇道を歩き出せば、拒絶するような空気は幾分か薄れた。というよりもジャベリナがわざとそういう道を選んだのか、どんどんと猥雑で不穏な空気が漂い始める。
「安いぜ、安いぜ! 最新型の軍用掘削装置が今なら二千、たったの二千!」
「この軽さでこの切れ味! こいつぁ出物だよ!」
「な、活きがいいだろう? 昨夜の競売品を直通貨車で運んだからこそ、この初々しさ! うちでしか扱えない逸品だよ!」
相も変わらずきらきらした瞳をしたまま、煤けた風合いの男どもが野太い声を上げている。店構えも大通りの活気がありつつも整然としたものと異なり、いずれも小じんまりとして薄汚く、なにより胡散臭い。
上野と秋葉原と中野を合わせて小汚いところだけ抽出したみたいだな、というのが日出郎の感想だ。
飲食店もカフェやビストロ風の店はなりを潜め、串焼きや麺類、なんだかわからない煮物などの店ばかりとなる。当然、何処も酒類とセット、もしくは酒こそが主役という態だ。
「兄ちゃん、麟竜用の蹄鉄いらんか? 古代の泉宝で、消耗は多めやけど爆速を保証するで」
パソコンパーツのような触れ込みで鈍く光る蹄鉄をひらひら振って見せたのは、背丈は日出郎の腰くらいまでしかないのに腹回りはさほど変わらない、ずんぐりした体型の男。髪や眉、顎一面を覆う髭などが全て岩石になっており、そういう仮面でも被っているかのようだ。
ゲームなどでお馴染みの『ドワーフ』を思わせる男の言葉に、首を振る。
「いや、長旅なんでいいです」
ちらと背後のインテを見やった。麟竜の炯々と光る目が、意に沿わぬ物など着けようものなら蹴り殺してくれる、と訴えているように見えた。思い込みだと、ありがたい。
道幅も天井までの高さも狭まっていて、巨体の騎竜は居心地悪げだ。門番を務める二人のような巨体の者に合わせてか、道そのものは大きく造ってある。しかしごちゃごちゃと建てられた店舗や、ひっきりなしに行き交う人々が、空間を削っているのだ。
ドワーフ親爺はすげない日出郎の返事を聞いても引き下がらず、じろじろと彼と、彼の背後に控える三人を見比べる。
「ほんほん、綺麗どころ三人も揃えとんのか、ええのう。ほな夜は難儀しとらんか? ええ精力剤あるで? 気持ち良くなる薬なんぞどないや?」
「いや、無縁なんでいいです」
言ってて少し切ない。そんな彼の背後で三人の仲間が、三者三様の表情を浮かべていたのだが、それを目にしたのはドワーフ親爺だけであった。
「皆さん。その、騎竜たちも休ませなきゃいけませんし、ひとまずどこか宿を取りませんか?」
微妙な空気を振り払うように、ハチェトリーが提案する。
「賛成ですわ。特にインテは、場所を取りますし」
「ぶるるるぅ(すまない、我が堂々たる体躯ゆえに)……」
それでなくとも四人と四頭、というのは大所帯だ。普通の商店街に大型二輪を押して進入したようなもので、通行人の中には迷惑そうな目を向けてくる者もいた。
いったん大通りに戻って、そこそこ良い宿に部屋を取る。
亭主はジャベリナを見て少し顔つきを厳しくしたが、礼儀正しいハチェトリーと気品溢れるチェイネが矢面に立つと、それ以上なにか言うことはなかった。
宿の名前は『熊の蔭亭』、亭主である巨体の岩人種の姓も同じ名前である。素泊まりで一人160グラウカス、銀貨四枚という値段は少々お高く感じるが、騎竜の世話や荷物の保管もきっちりやってくれると言うので、そこは納得しておくべきだろう。
なおこの宿が本当に安全であるかの保証はないので、役人に訴えて解決できないトラブルが発生したら、ラフガルド王国の公使館に飛び込むことになる。国策で召喚された勇者であるから、決して無碍にされることもないだろう……とはハチェトリーの弁だ。
二部屋とって男女で分かれる予定であったが、相部屋しか空いていないと言う。まあこれまでの旅程で夜営する際は、焚き火を囲んでの雑魚寝であったのだ。屋根の下だからとて無理に部屋を分かれる必要はなかろうと、六床あるその部屋を借り切って、逗留することにする。
ハチェトリーはどう交渉を進めたのか、ちゃっかり四人で600グラウカスに負けさせていた。
「おお」
部屋に入るなり、思わず声を出してしまう。精々が地下迷宮の玄室を小綺麗にした程度だろう、と見くびっていたが、なかなかどうして。ちゃんと宿屋の一室、という体裁を有していた。
床は板張りだし、壁や天井は漆喰で塗り固められ、一面には大きな窓もある。木製の大窓を開放すると、その向こうは明るい中庭に繋がっていた。
さほど広くはないが一面の芝生に木々も植えられ、どうやって採光しているのか日差しが降り注いでいる。天を仰ぐと、どうやら通気口と思しき穴から鏡でも使って、外の光を導き入れているようだ。
「岩人種は日の光を浴びなくとも生きていける、と聞き及んでいます。ですからこれは他人種や家畜、植物のためのものなのでしょうね」
並び立って庭を眺めながら、ハチェトリーは感心した声で言う。ゴルンゴドのような環境ではそれほど日光は重要視されなさそうなものだが、なるほど外に対して開かれたこの宿には、必要な配慮であろう。
実のところ夜勤生活が長かった日出郎も、ろくすっぽ日光に当たらなかった時期があるので、その必要性を実感していなかった。しかしビタミンDの生成や体内時計の調整など、太陽光を浴びる恩恵は大きい。
「まァ長逗留するわけじァねェんだ、細けェことはいいヨ」
そう言いながら、荷物を投げ出したジャベリナは通路側、つまりもっとも窓から遠いベッドに飛び込んだ。小さな体が仰向けに、少し硬めの寝台の上で弾む。
「ちょっとリナ、不作法ですわよ。……勇者さま、勇者さまは、どの寝台をお使いになりますの?」
「え? ああ、余った所でいいよ。レディーファーストでどうぞ」
と言ったら、不思議な顔をされた。どうやらファラスにレディーファーストの文化はないらしい。
「まあ俺はこだわりないし、隅っこでも真ん中でも……真ん中はないか」
苦笑した。ハーレムものの主人公でもあるまいに、美少年と美少女と美女を侍らせてその中心で眠る、などおこがましい。その卑屈な笑みに、ハチェトリーが珍しく、窘めるようなことを言う。
「勇者様。貴方は僕たちを統べる方なのですから、ご遠慮などなさらず、何事も率先して決めていただかないと」
「うぇっ!?」
「そうですわね。勇者さまに堂々と振る舞っていただかないと、従士としてやりづらいのは確かですわ」
チェイネまで、そんなことを口にした。そうは言われても、指導者どころかバイトリーダーの経験すらない日出郎だ。見目麗しい仲間たちを相手に堂々振る舞うのは、なかなかハードルが高い。
まごつき、挙動不審になる日出郎。それに対してベッドから身を起こし、少し考えながら、ジャベリナが言った。
「なんかアレだな、お前、谷に入ッたあたりから妙に……しゃッきりしてねェな」
言葉はあやふやだが、伝えたいことはわかる。そして確かに、少女の指摘どおりかも知れなかった。ピックフット戦で良い所を見せられなかった影響が、地味に続いているような気もする。
その思いは全員に共通するもので、なんとなく目を逸らしてきた問題でもあった。しかしいつまでも放置しておけるものでなし、良い機会なのに買い物は翌日に回し、夕食までひとまず現状把握の会議をすることにする。
ハチェトリーは一もニもなく賛同し、ジャベリナも面倒そうにだが同意した。意外に乗り気でなかったのはチェイネで、
「勇者さまに問題などありませんわ。私たちもおりますし、いざとなればあの凄まじい合成召術がありますもの」
と何故か誇らしげに言う。無駄に胸を反らすものだから、ぶるんと双丘が揺れ、思わず視線を奪われる日出郎。
他二人の半眼に気づくと慌てて咳払いをし、改めて仲間を見回した。中央のベッドに彼が腰掛け、その隣にハチェトリーが立って、正面に座るチェイネとその後ろで横向きに寝転がるジャベリナ。
「前に言ったかも知れないけど、〈共有才産〉はあんまり燃費の良い技じゃないんだ。四人分の技能を合成すると、LPの四割を持っていかれる。つまり、間でレベルアップできなけりゃ、三発は撃てないんだよ」
燃費という言葉が通じないことに気づいて、使用に対する消費の効率のことだよ、と補足する。
「でも、威力を考えると二発も撃てれば充分では?」
「つーか、アレを二発食らッてまだ立ッてるヤツに、勝てる気はしねーな」
楽観的な意見と悲観的な見解が、立て続けに提示された。先のチェイネの誇らしげな物言いと併せて考えるに、仲間たちは以前放った合成召術に、日出郎が思っている以上の信頼を置いているようだ。
当の彼自身からすれば、範囲や威力が大き過ぎるし、消耗も含めると使いづらい術だという印象である。そもそも降って湧いたような妙技によるもので、それを言えば勇者の恩恵やレベルアップによる能力の向上も――
そこに考えが至って、ああそうか、と気づいた。つまりは、彼は。
「自信が、ないんだな」
自分を信じる、ということ。それができずにいるのだ。
召喚された時には既に就いていた、勇者という職業。越界種固有の妙技に、勇者専用装備。自分で魔物を倒さなくとも蓄積される経験点と、それによるレベルアップ。
どれもこれも、望んで得たものでも、得ようと努力したものでもない。気がつけば手に入れて、無我夢中で振るってきた力。
「元いた世界じゃ俺は、何の取り柄もない、誰かの役に立ってるわけでもない、無駄飯喰らいのキモデブだったからなあ……それが勇者って言われて、勇者ってだけでずるくさい能力を手に入れて」
「勇者様」
「そもそもなんで俺なんだ、って感じだよ。ひいひい言ってるうちに勝手に強くなって、みんなも強くなって。でも改めて魔物と向かい合えば、俺の根っこは相変わらずキモくて弱っちい、ただのデブなんだ」
「勇者様!」
喋っている内どんどんと卑屈な気持ちが溢れ、饒舌になった日出郎の言葉を、ハチェトリーが遮った。
はっとなって見ると、涙目の少年は跪いて、主の固く握り締めた拳に手を添えている。
「知らない間に僕たちの期待が、貴方を追いつめていたのなら、ごめんなさい。でも勇者様、どんな形で手に入れたものでも、今は貴方の力です。貴方の力が、僕たちを守ってくださったんです」
見上げてくる藍青色の瞳、空のような海のようなその輝きが、真摯な想いを伝えてきた。信頼、尊敬、そして親愛を。
「ハチ公の言うとおりだな。胸ェ張れとは言わねェけどヨ、背中を丸めてちゃ出ねェ、そういう力もあるんだゼ」
「そうですわ。それに、私たちが勇者さまに、不平や不満を言ったことがありまして? それは遠慮などでなく、勇者さまを本当に信頼に足る方と、認めているからです」
約一名からの罵倒は度々受けた気がするが、まあそれを言うのは無粋であろう。ともかく自分より年下の、なにがあっても守ろうと心に決めた者たちにここまで言われて、いつまでも腐ってはいられない。
「ようしわかった! じゃあ、今日はみんな一つのベッドで固まって寝よう!」
「「「そうじゃなくて」」」
一斉にツッコミが入った。
¶
余談だがその晩、ハチェトリーとチェイネは遅くまで『あれは実は君にだけは本気だったんだ、さあおいで』なんて言われる妄想をし、なかなか眠れずに過ごす羽目になった。
日出郎は日出郎で、冗談にしてもちょっとセクハラ気味だったかなあ、なんて悶々と過ごしている。
ジャベリナは大の字になって爆睡した。
【岩人種】
獣人種のケモノ度と動揺、彼らの鉱物度も個人差の範疇である。外見だけはゴーレムのようでも血は流れているし、食事や生殖も普通に行う。
彼らの名前は父由来のものと母由来のものを合わせてつけられ、姓も新たな家系を興す際には父姓と母姓から一部を取って命名される。
【ロックマック・ゴックサック】
昨年、三つ年下の幼馴染と結婚。その後、新妻の妊娠が発覚。現在、生まれてくる子供の命名権を争い夫婦で冷戦中。
【石英の民】
白っぽい岩石のような体を持つ民族で、巨体と怪力を誇るが、動作は鈍重。民族的に〈雲海〉系の召術に適性と耐性を有する。
稀に水晶のような肉体を持つ者も現れる。光線銃が透過して通用しなかったりするのかも知れないが、生憎ファラスに光線銃はない。
【境界守】
成長時、肉体と精神+1、自由割振2点。防衛の術式を習得可能、幻覚と惑乱の術式に耐性。HP計算時にレベル+1。
【燐灰の民】
体色は様々(多いのは緑色、褐色)だが美しい光沢を持つ民族で、岩人種にしては珍しく、柔軟かつ機敏。その分、若干非力であるが、他種族に比べればまだまだ力持ちの部類である。
門番を務めているのはまだ新米だが、岩人種基準ではイケメンであり、既に女性ファンが存在したりもしている。
【サービスエリア】
日出郎がまだ子供の頃の、家族旅行での思い出である。夜のサービスエリアに浪漫を感じる層は、一定数いるであろう。
【大型冷却装置】
単純に冷蔵庫である。大型と言っているが、容量で言えば200リットルほどと、現代社会で言えばコンパクトタイプに類する品。
【シカタラ根】
大根に似た形状の根菜だが、太い部分は殆ど茎であり、どちらかと言うとカブの仲間。ラフガルド王国ではお馴染みの野菜で、2章1話でジャベリナが作ったポトフにも入っている。ゴルンゴドではサラダやマリネに使うのが一般的。
【軍用掘削装置】
ドリルである。ゴルンゴドでは無闇にそこらを掘ると、すぐ他人の土地を侵食してしまうので、大っぴらに扱うのは歓迎されない。日本の都市部で野焼きをするようなものであろうか。
【昨夜の競売品】
推して知るべし。
【麟竜用の蹄鉄】
一昔前オーバークロックは基本だったが、最近は値段に対する基礎性能が上がっている上、そこまで高スペックを要求されることも少ないため、趣味的な行為となりつつある。騎竜の話である、念のため。
【精力剤】
著名な医者にあやかった屋号を掲げる薬局が、手広く取り扱っているとかいないとか。
【気持ち良くなる薬】
脱法品である。「ダメ。ゼッタイ。」
【熊の蔭亭】
一流店とまでは言わないが、いわゆる『冒険者の宿』と比べると、ネットカフェとシティホテルくらいの差がある。亭主の名前はバウンベアン・ベアーバウアー、髭面の大男で鉱物質な部分はあまり目立たず、熊の獣人種と言っても通じそうな外見。
【公使館】
ファラスでは国際法はまだ未発達であるため、在外公使と言ってもその国に関係性の深い貴族が寄越した代官、くらいのポジションでしかない。当然、全権代表などという立派なものでもない。トラブルの相談をしても、基本的には現地の有力者に口利きを頼む程度が精々で、当然それなりの対価を要求される。




