自分で言うのもなんだけどクソゲーだね!
勇者くんの戦闘スタイルは、魔法戦士、だね。杖としても使える剣で攻撃しつつ、魔法も放ってくる。彼のすごいところは、攻撃しながらしっかり魔法の準備もしちゃうところだ。
ゲームみたいな、詠唱中は戦えない、なんてことはないのだ!
「だからなんだと言う話でもあるね」
「何故……届かない!」
私は何もしていない。棒立ちであくびなんてしちゃってみたり。勇者くんは剣を振ってるけど、私の結界を破れずにいる。
「あっはっは。どうしたどうした。私はまだ何もしてないよ?」
「余裕のつもりか!?」
「余裕だとも」
私の結界は、三層ある。内側の方が硬い結界だ。一層目すら破られていないのに、焦ることなんてできないよ。
「そう思わないかい? クソ虫」
「きゅ……。あ、足を、どけてほしい……きゅ……」
「んふ。やなこった。安心しなよ、死なないようにはしてるから」
「いっそころして……」
あっはっは! それこそやなこった!
お。勇者くんが距離を取った。こっちが何もしないことを理解したのか、長い詠唱が必要な魔法に集中することにしたらしい。それでも私を警戒し続けているのはさすがと言うべきか。
「広範囲魔法だね。属性は炎。付与は雷。爆雷魔法ってところかな。大規模な爆発に雷で追撃。ふむふむ。悪くない魔法だ」
「詠唱だけで、そこまで分かるか!」
「おん。無論だとも。魔女をなんだと思ってるのかな? そして魔女の立場として言わせてもらえば……。面白みの欠片もないクソ魔法だね! もっとこう、ひねりを加えようよ! 爆発の後に美味しい飴ちゃんが降り注ぐ魔法とかどう!?」
「何の意味があるんだそれに!? バカなのか!?」
「うわひどい! お師匠と同じこと言う!」
お師匠に美味しい飴ちゃんを降らせる魔法を話したら、ものすごく呆れられて、救いようのないバカだね、なんて言われたよ! ひどいと思わない!?
「それはそれとして、このままだと明菜ちゃんたちも巻き込むね。ほらほら、こっちにおいで」
「え、わ、あわわ……」
「ひゃあ……」
渦巻く魔力に怯える二人を私の側に移動させる。魔法でふわりとね。ちゃんと結界で包んであげよう。魔女様は優しいのだ。見捨てる時は見捨てるけど。
そして魔法が放たれる。大爆発が引き起こされて、雷がほとばしる。いやあ、派手だなあ!
「たーまやー」
「師匠! 花火じゃないと思います!」
「似たようなものじゃない?」
芸術は爆発だってなんかどっかで見たよ!
そんなことを笑いながら言っていたら、ばりん、と何かが割れる音が聞こえてきた。何か、というか私の結界だけど。
「へえ?」
私の目の前には、尖った岩。魔法で放たれたものらしい。これにもそれなりの魔力が使われてる。なるほど、広範囲の魔法は目くらましで、こっちが本命か。
まあそれでも一枚目の結界しか破れなかったわけですが。いやあ、私が言うのもなんだけど、クソゲーだね!
「まだ結界があったのか……!?」
勇者くんが驚いてる。気付いてなかったんかい。
「おん。あるよ。私の結界は三層だ。ちなみに二層目の結界は一層目の倍ぐらい硬いよ。三層目はもっとね。だから、がんばらないと私には届かないよ?」
「……っ! 化け物め!」
「くひひ。よく言われるよ」
むしろ化け物と呼ばれていない魔女なんていないと思う。魔女という言葉に、化け物という意味が内包されているようなものだし。
「ディザスター様……!」
「我らも!」
「ああ……。やれ!」
お。ここでリッパーとメルトも参戦だね。さすがに勇者くんも分が悪いと思ったらしい。でもキャスティアは動かない。苦悩に満ちた顔だ。さてさて。どうするのかな。待ってあげるのは少しだけだよ? 飽きたら殺すから。
リッパーやメルトも攻撃してくるけど、私の結界には影響しない。勇者くんの岩の魔法と同時に攻撃されたところで、意味なんてないよ。変わらないから。
「な、なあ! 友だちだろう? 結界消してくれよ!」
「あっはっは。無茶苦茶言うね、メルト。愚痴は聞いてあげるよ。私も楽しいから。でも、だからって私の世界に手を出そうとして見逃してあげるわけないでしょ?」
「だよなあ! 正論だよクソ!」
これが私の世界以外なら、ぶっちゃけ無視したんだけどね。それは現地の問題になるだろうから。
選ぶ世界を間違えたら死ぬだけだけど。あの大魔女様の世界に手を出したのなら、それこそ何もできずに殺されるだろうし。こうして遊んであげることすらないと思う。
「勇者くんも諦めが悪いねえ。気付いてるでしょ。この世界の全てを魔力にしたところで、私にすら勝つことはできないって」
「……っ」
まあ、結界を破ることぐらいはできるだろうけど……。さすがにそうなったら、私も全力だ。こうして何もしないなんてあり得ない。動くし攻撃するよ。当然だね。
「もっと言えば、あの世界には私のお師匠がいる。私よりも普通に強いからね? どうするつもりだったのかな?」
「魔の森とはそこまでだったか……! 魔王よりも強いだろう!」
「おん。私でも倒せるからね」
お師匠が魔王を倒していれば召喚なんてなかっただろうけど……。さすがにそれは責任転嫁、かな。お師匠も召喚とかあったことを最初は知らなかったらしいし。
のんびり話していたら、明菜ちゃんがおそるおそると聞いてきた。
「あ、あの、師匠、さっきから、召喚とか勇者って……」
「おん。気になる? ディザスターはね、私の世界に召喚されて魔王を打ち倒した勇者なんだよ。死んで転生して、こんなことやってるみたいだね。私が召喚されたのも、あの子の召喚に巻き込まれた形だね」
「そんな……!? じゃあ、どうしてこんなことを……」
「本人が言ってたでしょ。復讐だって」
その復讐にこの世界を巻き込むな、と言うなら、それはそう。
「ほらほらへいへい。どうしたどうした。二層目すら壊せてないよ! そんなにちんたらしていたら……一層目を戻しちゃう!」
「な……!?」
「結界が一瞬で!?」
「張り直せるのかそれ!?」
「いや当たり前でしょうがバカなの? どうやって結界を張ってると思ってたの? 特に一層目なんて片手間でできる程度だよ」
ちゃんと私の魔法、私の魔力で張られた結界だ。張り直せないわけがないでしょバカかなバカだったわ。バカじゃなかったらこんなことしてないわ。
壁|w・)魔女様エンジョイ中。




