再びお邪魔してみよう!
「うおおおん……。なんで勝てないんだよぉ……」
「あっはっは」
はい。普通に明菜ちゃんたちの勝利でした。危なげなく勝ってたよ。
考えてみれば当然と言うか……。強化前ならともかく、今だとあの怪物は明菜ちゃんたちの敵にすらならない。本当に瞬殺していて、ちょっと笑ってしまった。
提案した私が言うのもなんだけど……。クソみたいな作戦だったね! あっはっは!
「その様子だとうまくいかなかったみたいだね」
「そうなんだよお……。スズラン、手伝ってくれよお……」
「だめだよ。正直ボクは君たちを信用しきっていないからね」
「だよなあ……」
本当に、よく飲むなあ。ちょっと呆れてしまう。それだけストレスがあるのかもしれないけど。
「君たちの上の人はどうなのかな? 強いんだろう?」
「社長は、まだその時じゃないって言ってたなあ……。副社長は、社長の許可が下りないって……」
「なるほどね。君たちの社長が原因ってことか」
勇者くん、何を考えているんだろう。ティアストーンはほとんど手に入ってないけど、それでいいのかな。必要だから集めているんだと思っていたんだけど。
ふうむ……。そろそろもう一度、話を聞いてみようかな。いろいろ聞きたいこともあるし。
潜入なんてもちろんしない。こういう時こそ、友達を頼らないと、ね?
「メルト。提案がある」
「あん? どうしたよ」
「ボクをその社長に会わせてほしい。その人との相談次第では、力を貸してあげてもいいよ」
「な……!? 本当か!?」
「もちろん」
ここで大事なのは、力を貸すと明言しないこと。あくまで、相談次第。嘘は言ってないよ、嘘は。本当に、話の内容次第では勇者くんについてもいいと思うから。
「で、でも……。あたしたちの拠点に招かないといけないんだよな……」
「そうだね。それぐらいは見せてもらわないと、ボクも信用できないから」
「う……」
悩んでるね。こうして一緒にご飯に来ることはあっても、結局はお互いに素性を知らない存在だ。拠点に招くことに抵抗があるのは当然だと思う。
でも、ここは私も譲れない。勇者くんとお話しさせてほしいから、ね。
しばらく待っていると、メルトが意を決したように膝を叩いた。
「分かった! あんたを、あたしたちの拠点に連れて行く!」
「おん。いいのかな? 自分で言うのもなんだけど、怪しさの塊だと思うけど」
「ああ、そうだよ! でも、正直あたしたちだけだと手詰まりだ! あたしたちは、社長に恩返ししたいんだよ!」
「恩返し、ね」
単純な上下関係ではないらしい。何かしらの経緯があって、メルトは勇者くんに従ってるってことかな。もしかすると、リッパーも同じなのかも。
そのあたりも教えてほしいな。交渉次第、かな?
「よし! 行くぞ、スズラン!」
「ああ、はいはい。とりあえずお会計頼むよ」
「おう!」
というわけで、また勇者くんの拠点に向かうことになった。
さてさて。元気にしてるかな?
お会計をして、メルトの転移で私は彼女たちの拠点にたどり着いた。
「おおー……」
相変わらずの、こてこての悪の組織の拠点だ。少しぐらい隠してるかなと思ったのに。
「ここがあたしたちの拠点だ! どうだ、かっこいいだろう!?」
「そうだね。でも見た目が悪の組織の拠点そのものだけど?」
「あ……。いや、その、たまたまそう見えるだけというか……」
「おん。なるほどね。そういうこともあるか」
「そ、そうだよ! そういうこともある!」
ないと思うけどなあ。
メルトに案内されて、彼らの拠点の城の中へ。階段で上階に向かう。前回と同じように、階段でてくてくと。
そうして歩いていたら、下りてきた人影に気がついた。リッパーだ。
「メルト……。誰を連れてきたんだ?」
「あたしの友人だよ。めちゃくちゃ強くてね。ディザスター様との相談次第で、協力してくれるらしいんだ」
「協力、ね」
じろじろと値踏みをするように私を見てくるリッパー。ちょっと不愉快だけど、我慢我慢。
「どうも。陰陽師のスズランだ。よろしく」
「陰陽師、だと……!? 陰陽師がなぜここにいる!?」
おお? どうやらリッパーは陰陽師のことを知ってるらしい。これはボロが出る前に押し通らないといけないやつだ。私は陰陽師に詳しくないから。
「陰陽師も一枚岩じゃないってことさ。ボクは、自分の信念に従って動いてるんだよ」
「信念、だと?」
うっわ、めちゃくちゃ胡散臭そう。いや、私も正直自分で胡散臭いって思ったけど。
リッパーは私を睨んでいたけど、ふんと鼻を鳴らした。
「問題があれば、ディザスター様が処理してくれるだろう。行くといい」
「どうも」
そんな簡単に自分たちのボスに会わせていいのかと言いたくなるけど、それだけ自分たちのボスの強さを信じてるってことなのかも。
でも、分かる。分かるよ。この世界だけで言うなら、間違いなく最強だろうから。
私が黙っているのが不安だったのか、メルトが慌てたように言った。
「その、あれだよ。リッパーはあんな言い方したけど、別に悪いことにはならないからさ」
「おん。そのあたりはメルトを信じてるよ」
「そ、そっか! そっかそっか!」
わあ。とても照れてる。ちょっとかわいいと思ってしまった。
でもごめんね。君の気持ちを裏切っているのは、私の方だよ。悪いとはちっとも思ってないけど。
私が正体を明かしたらどんな顔になるのかな。見てみたいな。そんなことを考えながら、私はメルトの後を追った。
壁|w・)今回はちゃんと招かれて入ってるからせふせふ。




