幹部さんの愚痴も聞いてあげるよ!
夜。私は居酒屋にいた。誘われたからだ。誰にって? もちろん……。
「うおおおおん……」
メルトにだよ。めちゃくちゃ泣いてるよ。めんどくせえ!
「おかしいだろお……。なんで、なんで二人とも二倍になってんだよお……。インチキにもほどがあるだろちくしょう……」
「…………。えっと……。そう、だね……?」
どうしよう。ものすごく反応に困る。こいつ、私の正体が分かっててやってるのではなかろうか。そう思ってしまうよ。いやだって、隠す気あるのかって状態だし。こいつが、ね。
「あー……。危険物ってやつを悪いやつが狙っていて、それと戦ったとか、かな?」
とりあえずそう聞いてみた。一応、スズランとしては知らないはずだから。
メルトははっとしたように我に返って、こほんと咳払いした。今更取り繕おうとしても無駄だと思う。
「こほん……。いや、悪かった。だいたいそんな感じだ」
「なるほどねえ。かなりの強敵みたいだね」
「ああ……。正直、どうしていいか分からねえ……。副社長からもちょっと怒られるしよう……」
副社長……。キャスティアか。立場上、怒るしかないだろうからね。ただ、そこまできつく怒られたわけでもなさそう、かな?
キャスティアも強く言いづらいんだと思う。三つ目のティアクリスタルは、キャスティアが回収に失敗したようなものだから。その結果、明菜ちゃんたちに強化アイテムが渡ったからね。
「どうするのかな? このまま敵とやらに回収されっぱなしというのは問題だろう?」
「あー……。いや、まあ、社長が言うには、別にそこまで、らしい」
「おん……?」
なにそれ。ティアストーンはいらないってこと?
「あたしも詳しくは知らないけど、回収できなくても問題ないとか、なんとか……?」
「ふうん……?」
「あ、いや! スズランに言っても仕方ないってことは分かってんだよ! その、あんま気にしないでくれ!」
いや、気になるけど。でも私が聞き出すのは、ちょっとおかしい、かな。
「でもよ。ずるいと思わないか? なんか急に強くなるんだよ! おかしいだろ!」
「んふ……。まあ、そうだね。うん。そうだね」
強化アイテムだからね! 劇的に強くならないとだめだと思います!
でも、メルトからすれば理不尽にしか感じないっていうのも理解できる。
だから。
「じゃあ、メルトも使えばいいんじゃないかな。道具を」
「道具……? そんなもの……」
「ないのかな? 仲間とか、臨時の傭兵とか、そういうのでもいい。本当に、ないのかい?」
「…………」
メルトは少し考えて……。はっと、何かに気付いたみたいだった。
「いや、でも、今のあいつらに意味あるのか……?」
「何か思いついたのかな? なら、とりあえず試してみるといい。トライアンドエラー、だっけ? どんどん試すべきだよ」
「ああ、そうだな……」
うん。そう。
多分こいつが思いついたのは、あの怪人も使うことだと思う。二人だと勝てないなら……。少しでも戦力を増やせば変わるかもしれない、てね。
明菜ちゃんたちには悪いけれど、これもまた訓練。是非とも頑張ってほしい。もっともっと強くならないと、ディザスターには勝てないだろうから。
「スズラン!」
「おん?」
「一緒に戦ってくれ!」
「だめ」
「ちくしょう、だよなあ!」
うん……。違うよね? 私を当てにしていたわけじゃない、よね?
ちょっと考えてくる、とメルトは先に帰ってしまった。微妙に不安になったよ……。
そんなちょっとしたアドバイスをしてから、二日後。ついにリベンジマッチの時が来た、らしい。
「リッパー! メルト! そのティアストーンを渡して!」
「断る。欲しければ奪ってみせるがいい!」
公園の真ん中で、ティアフレイムがリッパーへと叫んでる。リッパーが手に持っているのはティアストーン。いつもの構図だ。
「ふわああ……」
そんな恒例のバトルを、私は木の上、枝に腰掛けてのんびりと眺めてる。
あの変な怪物を使っている時は本当に単純だった。ティアストーンを媒介にして怪物を作ってるみたいなんだけど、それを倒して、媒介になっていたティアストーンを回収して終わり、みたいな流れだ。
私としてはそれを見てるだけでも楽しかったけど、ワンパターンだったのも事実。でも前回はついに幹部との戦いになっていたから、今後はもっと盛り上がっていくはず。
いやあ……。楽しみだね! ここからどんな戦いをしてくれるのか……!
「一対一なら、私たちは負けないよ!」
「ん……! 泣いて謝るまで刺す!」
「おい! なんかそっちの青いやつ、怖いこと言ってねえか!?」
「あ、えと……。アクア、もうちょっと穏便にね……」
「わかった。魔法で溺れさせ続ける」
「怖いぞそいつ!?」
なんだかティアアクアが過激だ。相手を改心させるためなら暴力も辞さない、みたいな考えになってない? ニチアサヒロインとしてそれは大丈夫?
ともかく、戦いが始まる……始まろうとしたところで、メルトがにやりと口元を歪めた。
「悔しいが、お前たちは強い。それこそ、あたしたちよりも強くなっちまってるよ」
「え……。それじゃあ……」
「だから、あたしたちも使える手は使うぜ! リッパー!」
「ああ」
メルトが叫んで、リッパーが頷く。そうしてリッパーが掲げたものは、ティアストーン。その宝石のような石はわずかに光ると、その石を核として怪物が形成されていった。
獣人、みたいな怪物だね。二足歩行の虎みたいなやつだ。動きは速そうだけど、今更二人の敵にはならない。
もっとも、それがあの怪物だけだったら、だけど。
「一対一になると勝てないのなら! 二対三にしてやるよ!」
「な……!? ひ、卑怯だよ!」
「卑怯で結構! 我らに必要なものは勝利のみだ!」
そうして、怪物を含めた二対三での戦いが始まった……!
壁|w・)卑怯な悪の組織だ!(なお今まで怪人相手に二対一をしていたのはヒロイン側というのは触れてはいけないお約束)




