ひっくりかえしてやりなおし!
「ど、どうも、お師匠……。なにしにここへ……?」
「隠遁のから買い物を頼まれてね。暇だし、対価ももらったし、来てみたってわけだ。で、あんたは何やってんだい」
「いえ、その……。見学、というかですね……」
「あん?」
こわい。お師匠こわい。私はそれなりに強くなったけど、未だにお師匠には頭が上がらないんだ。シンプルに私より強いからだけど。
長い金髪をポニーテールにしたお師匠は、ぐるりと振り返って四人を見据えた。ティアフレイムたちを。見られた四人はびくりと体を震わせてる。いきなりの規格外だからね。怖いよね。しかも私と違って敵か味方か中立か、何にも分からないからね。
「あん……? なにやってんだい、これは」
「いやあ……。こう、正義のヒーローが悪者を倒したところ、みたいな?」
「なんで固まってんだい? なら早く殺すべきじゃないのかい? うん?」
「みんなの気持ちを代弁すると、お前が出てきたからだよ、だと思うよ」
「誰に向かってお前って言ってんだい殺すよコラ」
「あいだだだだ!?」
あいあんくろーが! お師匠のあいあんくろーが! せめて素手でしてください! 魔法で爪を生やさないで! 死ぬ! 死んじゃう! この程度では死ねないけど!
お師匠はため息をついて私を解放してくれた。助かった……。
「で? 今はどういう状況なんだい、これは。もうそろそろ落ち着いたんだからはやくやればいいだろう?」
「おん。無茶言っちゃだめですよお師匠。せっかく固めた覚悟がお師匠の登場でふにゃってなったんだから」
「あん……? あー……。なんだい。つまりはあれかい。殺す覚悟がなかったってやつかい」
「おん。その通りだね」
「はあ……」
お師匠が呆れたようなため息をついた。頭をがしがしとかいて、それからティアフレイムへと歩み寄る。ティアフレイムが戸惑っている間に、お師匠は剣を取り上げてしまった。
「あっ……!」
「ガキがいっちょまえに悩んでんじゃないよ。覚悟ができてないならくだらんことすんな」
ぱちん、とお師匠が指を鳴らす。すると変身が解除された。
うーむ。一瞬の魔法構築。私でないと見逃しちゃうね!
「テメエらはさっさと失せな。あたしはバカ弟子を連れて買い物すっから、それまで出てくんな。いいね?」
「いや……。我らは負けたのだ。この際、あなたでもいい。俺たちを殺して……」
「バカがしゃべるなくたばれ阿呆。テメエらは敗者なんだ。敗者は黙って勝者に従いな」
「それはできない。我らには我らの正義がある。見逃されたのなら……」
「黙れ」
「……っ」
おお……。お師匠、怒ってる。しかもこれ、めんどくさいことに巻き込むなっていう理不尽な怒りだ。自分から首を突っ込んだくせに、なんて正論を言おうものならぶん殴られるから私は何も言いません。命は惜しいので。
「テメエは大人で敗者だろう。勝者のガキに余計なもんを背負わせるなって言ってんのさ。理解したなら失せな。まだぐだぐだ言うなら、あたしが明確に敵になってやるよ」
「…………」
さすがにお師匠を敵に回してはいけないというのは理解したらしい。リッパーたちは何も言わずに立ち上がると、その場から姿を消した。
とりあえず、これで終わり、かな?
本音を言えば……。本音を言えば! 仕方なく幹部にトドメをさして、そのことで悩み、そして立ち上がるヒロインを見たかったのだけど……!
というか今から見れませんか?
「そのあたりどうですかお師匠」
「あんたがろくでもないことを考えてるのは分かったよ。あたしがキレる前に黙りな」
「へい」
黙ります。お師匠は怖いのだ。
「さて……。おい。ガキども」
お師匠が呼ぶと、明菜ちゃんたちはびくりと体を震わせて、けれどしっかりとお師匠の目を見た。この子たち、変なところで精神が強いよね。かっこいい。
お師匠もそんなこの子たちの根性は好ましかったのか、口の端がわずかに持ち上がっていた。
「いいね。根性あるじゃないか」
「え? あの……」
「あいつらを勝手に逃がしちまって悪かったね。謝っておくよ」
「あ、いえ……。ありがとう、ございます……。正直、あのままやっていたら、後悔していたと思うので……」
「ん……」
そっと静香ちゃんが明菜ちゃんの手を握る。明菜ちゃんは静香ちゃんへと力無く微笑んでいた。
とてもいい画だと思います。素晴らしい。
お師匠はそんな二人を鼻で笑って、言う。
「あんたたちは、戦うってことをもうちょっとちゃんと考えるんだね」
「え?」
「あいつらはまた来るだろうさ。その時に、戦って、倒して、どうするか。しっかりと考えておくんだね。あたしは今日しか来ないから、次は止めないよ」
「…………。はい……」
「まあこれは、何も言ってなかったうちのバカ弟子にも問題があるがねえ?」
「はい。さーせん。覚悟なかったとは思ってなかったんです」
いや、本当に。幹部をどうするかなんて覚悟、勝手に決まっていくものだと思っていたからね。
でも今回のことがあったんだから、二人もちゃんと考えるでしょ。私はその考えを、答えを待つよ。それで後悔するかは、本人次第。でもこれは、自分たちで答えを出さないといけないものだ。
なんて、偉そうなことを言うつもりはないけどね。
お師匠は私に胡乱げな目を向けてきたけど、呆れたようなため息をついて言った。
「ほら、買い物に行くよ! カレーを買わないとね!」
「はいはい。それじゃあ、がんばってね。明菜ちゃん。静香ちゃん」
二人なら、きっと大丈夫だと思うから。
明菜ちゃんは憔悴しきった顔で、けれどしっかりと頷いた。
壁|w・)もう一度幹部戦ができるどん!
「お師匠が私より師匠していてじぇらしぃ」
「弟子の頭がわいてるから反省したんだよ」
「!?」




