お約束とはいえ二倍はおかしくない?
そして、ピンチには逆転がつきものだと私は思うわけですよ。
「アクア……!」
「ん……。やろう!」
フレイムが、新たなティアクリスタルを取り出した。それは叶恵ちゃんから受け取ったもの。
「な……!?」
「まさか!?」
狼狽する二人の前で、新たなティアクリスタルが輝く。その輝きは一際強くなり、ティアフレイムたちを包み込んだ……!
パワーアップイベントってやつですよ! 中盤とかであるよね! 新たなアイテムとかを手に入れて、強化されるやつ! 強化フォーム!
物販の販促の心強い味方……いや、なんでもないです。
そうして光が消えていき……。新たな姿に生まれ変わった二人が現れた!
「…………。いや、そのままでは?」
なんか衣装に白いラインが入っただけだね。大きな違いはないと思う。あくまで主体は炎と水だからかな? 光の力を二つに分けて使ってる、というのもあるのかも。
でも……。その効果は、劇的だった。
「あり得ない……!」
リッパーが驚愕する気持ちも分かる。
魔力の量がシンプルに二倍になってる。フレイムもアクアも二倍になってる。
いやなんでだよ。シャインの力を二人で使ってるんでしょ? じゃあ半分ずつになるんじゃないの? 二人で三人分みたいな感じになるんじゃないの? なんで四人分になってるの? どういうことなの?
「すごい……!」
「力が……みなぎってくる!」
倍の力だからね! そうなるよね!
おかしい。私との訓練でも使ってたけど、ここまでにはなってなかったはずなのに。どうしてこうなった。
「あ、あり得ないだろ! なんでティアクリスタルが一個増えるだけで二人とも倍増してやがるんだ!」
そうだ! 言ってやれメルト! パワーアップイベントってそんなものかもしれないけど!
そして、ティアフレイムが叫んだ。
「そんな単純なものじゃない! これは……ティアシャインの想いものせてるんだ!」
「くっさ!」
「師匠!?」
思わず叫んだ私は悪くないと思う。そのせいで隠蔽の魔法も切れてみんなの視線がこっちに集まってるけど、私は悪くない! いやそれよりも。
「友だちの気持ちがあるから、効果二倍! いやくさい! くっせえ! びっくりするぐらいくさい!」
「ひ、ひどくないですか!?」
「いやだって……。友だちの気持ちでー! とか。友だちの想いがー! とか。真顔で言う人初めて見たよ」
「……っ」
「や、やめてあげて、師匠。明菜が真っ赤になって震えてる」
いやだって。いや、分かってる。ニチアサだからね! お友達の想いを受け取って超強化! いいと思います!
「んふ……だ、大丈夫……いいと、おも、まふ……ぶふ……」
「アクア! 師匠がいじめる!」
「どうどう……。かわいそうに……」
泣きつくティアフレイムを抱きしめて撫でるティアアクア。うん。仲良しなのはいいことだよね!
そんな私たちの様子に、リッパーが視線を鋭くして問いかけてきた。
「魔女よ」
「おん。なに?」
「師匠と呼ばれていたようだが?」
「そだよ。軽く鍛えてあげてるの」
「つまり……。お前は、やつらに協力している、ということだな? 中立ではなく」
協力。協力ねえ。
「いんや? 取り引きだよ」
「取り引き、だと?」
「アルバイトを紹介してもらったからね。そのお礼でちょっと付き合ってあげてるだけだよ。それ以上でも以下でもないのさ」
「そんな理由で、だと!?」
「いやいや。お金を稼ぐって大変なことなんだよ。特に私なんてこの世界での戸籍とか身分証明とかないからね。かなりの恩だから、ちょっと訓練に付き合うぐらいやるよ」
直接手助けとかはしないけどね。訓練ぐらいなら取り引きの範疇だと思ってる。
でもリッパーは納得できなかったみたいで、私を睨み付けて叫んだ。
「それならば! 先にこちらが職を斡旋したら協力したと言うのか!」
「え、うん。そうだけど」
「ええ!?」
驚いたのは明菜ちゃん。何を今更驚くのやら。ちょっとだけ呆れてしまった。
「あのね……。何度も言ってるけど、私は基本的に手出ししない。何かしてもらったりとかしたら、そのお礼で何かする。それぐらいだよ」
何度も何度も言ってることだけど。
「私はね。今ここで君たちが負けたとしても、助けたりしないよ。その義理もない。そこまでの恩は受けてないからね」
薄情だと思われるかもしれないけど、別に構わない。それが私のあり方だから。
明菜ちゃんたちはショックを受けたような顔をしてる。あっはっは。ごめんね。
「それならば……! 我らが金を出しましょう! 働かなくてもいい金銭を差し上げる! 我らに協力しろ!」
そんなリッパーの提案。ふむ。
「嫌だけど」
「な……!? 何故だ!?」
「いやだって……。お金を直接もらうって、なんか後が怖いから」
対価として何を要求されるか分かったものじゃないからね。だから、お金を直接受け取るのは避けたいところだ。それに、何よりも。
「すでにお金に関することはしてもらった後だからね。その後に条件がいいからって乗り換えたら、今後の契約に信用がなくなるよ」
ここで他の契約があり得るのかと聞かれれば多分ないとは思うけど……。それはそれ、これはこれ、というわけで。それに、意味不明な転生とかで私の世界に情報がいくとも限らないし。
勇者くんたちの例があるからね。本当に油断できないと思ったよ。
悔しそうに顔を歪めるリッパーの肩をメルトが叩く。どうでもいい、といった顔だった。
「リッパー。魔女のことは忘れろよ。直接手出しはしないって言ってんだ。むしろ、今は目の前のあいつらだろ」
「あ、ああ……。そうだったな……」
構える幹部と、慌てて応じるティアフレイムたち。改めて、バトルだね! パワーアップイベントの直後なんてお決まり展開になりそうだけど、でも直接見るのはとても楽しそうだ!
「どっちもがんばれー」
私がそう応援すると、四人とも何とも言えない微妙な表情になってしまった。解せぬ。
壁|w・)ぱわーあっぷ!




