追加戦士を期待していた時が私にもありました
なんとなく全てが終わったような感じになっているけど……。なんと! まだ私たちはもう一泊残っているのだ! 劇場版は! 終わらねえ!
「でもキャスティアたちは帰っちゃったんだよねえ」
明菜ちゃんと争ったから……という理由でもなく、どうやら普通に今日までの宿泊だったらしい。普段の目立つ格好ではなく、本当にただの一般人の見た目で普通に帰っていった。
チェックアウトの手続きをしているのをちょっと離れた場所から見ていたけど、三人での行動だったみたいだね。
私が見ていることにキャスティアは気付いたみたいで、薄く笑いながら小さく手を振ってきた。かわいいところがあるよね。とりあえず私も振り返しておいたよ。ふりふり、と。
というわけで、あと一泊は今度こそのんびりできるってわけだよ。
私としてはもう一波乱ぐらい欲しかったけどね。贅沢は言えない。…………。何か起きない? 起きませんかそうですか。
温泉以外は暇なので、明菜ちゃんたちが魔法で遊ぶのを見守ることにする。明菜ちゃんと静香ちゃん、叶恵ちゃんは魔法を使った鬼ごっことかをしていた。子供か。子供だったね。
他の人に見られないように結界を張って、ついでに魔法の訓練みたいなことも。初めて魔法を使う叶恵ちゃんも、それはもう楽しそうにしていた。ただ、戦闘訓練とかは全然しなかったけど……。これからするのかな。多分、いわゆる追加戦士枠、みたいなものだと思うんだけど。
「叶恵ちゃんは訓練とかはいいのかな? 夕方までは私も暇だから、よければ見てあげるけど」
ちょっと疲れたのか休憩し始めた叶恵ちゃんに聞いてみる。叶恵ちゃんは、なんだか苦い表情だ。
「魔法は……すごく気になります。きっと、ちゃんと使えるようになったら楽しいんだろうなって」
「楽しいよ!」
側でジュースを飲んでいた明菜ちゃんがそれはもう満面の笑みで言った。とりあえず黙ってなさい。ほら、ジュースもう一本あげるから。
「わあい」
「明菜、単純すぎる……」
静香ちゃんが呆れてる。そっちは任せて、叶恵ちゃんの話を聞こうか。
叶恵ちゃんはそんな二人の様子をどことなく羨ましそうに眺めながら、言った。
「シオンさんは、魔法に詳しいんですよね?」
「おん。この世界では誰よりも詳しい自信があるよ」
「明菜ちゃんたちは……ずっと前から、戦っていますよね?」
「まあ、そうだね。それなりに長く戦ってるね」
私からすれば全然だけど……。まだ子供なこの子たちからすれば、長い時間のはずだ。
「今から追いつくのは……大変、ですよね」
「あー……。それはそうだね。だからこそ、やるなら早いうちに、だよ」
追いつけないほどの差ではないと、私は思うからね。がんばればきっと大丈夫だとも。
けれど、叶恵ちゃんは、そうですよねと頷いて……。そして、立ち上がった。
「明菜ちゃん! 静香ちゃん! 続きやろう!」
「おー!」
そしてまた遊び始めた。ふうむ……。どうするのかな? まあ、明日からでもいいと思うけど。
結局その日は特に訓練とかはせず、私ものんびり温泉を楽しませてもらった。キャスティアたちも帰ったから、気兼ねなく温泉の露天風呂で星見酒。私自身はお酒を買えなかったから、桐子さんに付き合ってもらった。至福の一時でした……。
そして翌日、帰る時間。旅館の前で、明菜ちゃんと静香ちゃん、叶恵ちゃんはお互いの手をぎゅっと握っていた。再会の約束、みたいな感じかな?
「また来てね! 約束だよ!」
「うん……! 絶対にまた来る!」
友情って……いいよね……!
そうしてみんなで車に乗って、走り始めて……。私は気になっていたことを聞くことにした。
「ねえ、明菜ちゃん」
「はい。なんですか、師匠?」
「叶恵ちゃんのティアクリスタル、どうして持ってるの?」
そう。明菜ちゃんの荷物には、叶恵ちゃんのティアクリスタルがしまわれていた。叶恵ちゃんが今後も持っておくかなと思っていたんだけどね。
「叶恵ちゃんから預かりました。きっと必要になるから使ってほしいって」
「ふうん……。なるほどねえ」
これはあれだね? 追加戦士じゃなくて、パワーアップイベントってやつだね? 私は詳しいんだ。
「いいね。それ、明菜ちゃんたちは使えるの?」
「はい。一応は、ですけど……。これを使っての変身はできないですけど、力は引き出せる、みたいな感じです。ね、静香ちゃん」
「うん。強い武器とか作れそう」
「なるほどなるほど」
やはりパワーアップイベント、だね! ならば! 師匠としてやることは!
「それじゃあ、帰って一段落したら、その力の使い方を学んでいこうか。大切なものを預かったんだから、ちゃんと守れるように強くならないと、ね」
「はい!」
パワーアップの手助けぐらい、いいよね?
だって今のままだと、明菜ちゃんたちに勝ち目がなさすぎる。キャスティア相手ですら、二人では勝てないのだから。
だから、ここでてこ入れをしておこう。もっと長く戦えるように。ニチアサをもっと長く楽しめるように、ね。
「んふ」
「きゅ……。魔女が邪悪なことを考えてるっきゅ……」
「明菜ちゃん。ちょっとそのクソ虫をこらしめておいて」
「はーい!」
「きゅううう!?」
「こら! 車で騒ぐんじゃない!」
どったんばったんとにぎやかな車内。なんとなくこの人たちに親愛を感じるようになってきてしまってる。私らしくない、かな?
もっとも。だからといって、戦いそのものに手を出したりはしないけど。どっちが勝っても私には何の関係もないのだから。
キュルをくすぐる明菜ちゃんと、抵抗するキュル。それを呆れた顔で眺める静香ちゃん。良介さんたちは苦笑い。そんな楽しそうな様子を見て、私は表情が歪むのを必死に隠した。
ああ……。本当に、愉しいなあ。
壁|w・)パワーアップイベントでした。
ここまでが第三話となります。
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