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異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~  作者: 龍翠
第三話 劇場版にもお邪魔する魔女さん

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19/20

もう会わないことを願います(笑)


「ありゃま」

「…………。どうも」


 露天風呂で出会ったのは、キャスティアさんでした。いやあ、よく会うね!


「てっきりもう帰ってるかと思ったよ」

「慰安旅行ですから。私だって休みたいのです」

「あっはっは。なるほどねぃ」


 二人で温泉に入ってのんびりと。


「…………。もう会わないことを願いますかっこわらい」

「やめてくれませんか!?」

「あっはっは!」


 いやあ、本当に早い再会でした! 私はいいと思うよ。うん。


「旅館、きれいに元通りになっていますね」

「おん。さくっと直したよ」

「正直、驚きました……。とても素晴らしい魔女になっていたのですね……」


 ふうむ……。私も、言っていいのかな?


「私としては、聖女さんが悪役幹部さんになっていることが驚きだよ」


 私がそう言うと、キャスティアは驚いたようにこちらに振り向いた。目をまん丸にしてる。なんでそんなに驚くの? まさか自分が気付いているのに相手は気付かないとでも思ったの?


「あなたは……気付いて……」

「んふふ。当然、気付いてるよ。私を追い出した国の聖女様だってね」

「…………」


 警戒の色。どう対応すればいいのかと悩む気配。あは。いいね。ここで殺し合うのも楽しそうだ。まあせめてもうちょっと実力が拮抗していればと思うけどね。


「別にやり合ってもいいけど、勝てると思ってるの?」

「…………。やめておきます……」

「おん。賢明な判断だね」


 なんとなく私の力を察してるのかな。ある程度は隠してるんだけどね。


「詩乃様」

「…………」


 それは。

 ああ……。懐かしいね。久しく呼ばれていない名前だ。


「よく覚えているね」

「忘れません。忘れたことが、ありません」

「んふ。そっか」


 私の、以前の名前。魔女としての名前ではなく、故郷の両親からもらった名前。


「詩乃様。あなたは……私を恨んでいないのですか?」

「恨む? どうして?」

「あなたを……追放したからです。生き残ると考えていた人は誰一人としていなかったでしょう。私は……知っていて、止められませんでした」

「あー……ね……。なるほどねえ……」


 つまりあれか。この子、実は気に病んでいたのか。それはそれは。うん。


「ぶはっ! い、いまさら! いまさらそれ聞くんだ! あっはっは! ばっかでえ! くははは!」

「そこまで笑いますか!?」

「んふ……! 笑うねえ! 当然笑うよ! だって……」


 そんな昔のこと、もう覚えてないんだよ。


 私がそう言うと、キャスティアは目を見開いて絶句した。


「何百年と生きてきて、そんな昔の恨みなんて持続すると思う? ぶっちゃけ当時どう感じていたかすらろくに覚えてないんだよ。心底、今更どうでもいい」

「…………。そう、ですか……」

「おん。だから君ももう忘れていいよ」


 それに、もう遠い記憶ではあるけれど……。私は恨んでいなかったはずだ。むしろあの時にあったのは、諦観。全て、諦めていた。そのはず。

 いやマジでほとんど覚えてないんだけどね。あっはっは!


「詩乃様」

「そっちの名前で呼んでほしくないなあ」

「申し訳ありません。ですが今は……かつての聖女として、お話をさせてください」

「…………。まあ、いいよ」


 私にとっては、大事な名前だ。でもそういうことなら、今だけは見逃そう。


「詩乃様。私にできることがあれば……仰ってください。私はかつて、あなたに許されないことをしてしまいました。例え間接的にでも、です」

「いや、だから……」

「あなたが何も気にしていなかったとしても、罪が消えるわけではありませんから」

「…………」


 なんというか……。真面目だなあ。眩しくなるぐらいに、ね。


「あなたの望みを聞かせてください。私にできることなら……信念を曲げてでも、叶えさせていただきます」

「それは罪滅ぼしのつもりかな?」

「はい」


 わあお。即答。これ多分、ディザスターを裏切ってあの子たちにつけ、なんて言ったらマジでやりかねないな。

 それはだめだ。つまらない。私はニチアサヒロインのがんばる姿が見たいのだ!


「んー……。じゃあ、まあ……。勇者くんを裏切らないでね」

「は……? 勇者様を、ですか?」

「そうだよ」

「ですが……勇者様は……」


 やっぱりこれ、元勇者くんと元聖女さんはお互いのことに気付いてないのか。んふ。それはそれで、おもしろいね。当然、私は何も言わないとも。


「まあ、気持ち的なものだよ。うん」

「そう、ですか……。あの子たちにつけ、とは言わないのですね」

「言わないよ。今の私は悪い魔女だからね。戦いをのんびり楽しく見守るのさ」

「それはそれは……。ふふ。変わりましたね」

「あっはっは!」


 何百年も生きると、人は変わるものなのさ。これでもいろいろやってきたからね。


「ですが、分かりました。もしも勇者様の生まれ変わりと出会うことがあれば……。その時は、勇者様に従います」

「近くにいるとは考えないの?」

「あり得ません。だって、もしもいるなら、今の私を止めてくれるはずですから」


 あー……。そういう考えなのか。これきっと、元勇者くんも同じこと考えてるな。だから二人ともお互いのことに気付かないわけだ。

 なんというか……。バカだねえ。本当に。


「それでは、私は先に失礼しますね」

「あいあい。私のことは……特に詩乃のことは他の人には言わないでね」

「はい。お約束しましょう」


 キャスティアは優しく微笑んで、頭を下げた。とても綺麗な笑顔だ。思わず見惚れてしまいそうになるぐらいに。


「こうしてお話ができて……。本当に、良かったです」

「ま、そうだね。私も昔の知り合いとお話しできて楽しかったよ」

「はい。次はもうこのように話すことはないでしょうが……。またお会いしましょう」

「おん。またねぃ」


 そうして、キャスティアは帰っていった。

 んふ。さてさて。この出会いがどうなるか……。楽しみだねえ。


壁|w・)シオンにとっては、もう今更どうでもいい過去なのです。


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― 新着の感想 ―
しの? うたの?
まさかの二人とも気づいていなかった!? 2人の悪の組織の動機はなんだろうな? どこぞのアニメマスコットやゲームの相棒妖精?などで訓練されたオタクである我々からしたら温泉に同行しようとする変態マスコット…
……元勇者くんと元聖女さん、自業自得とはいえお互いに気付かない気付けない、というのは切ないねぇ……。
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