旅館をぼろぼろにしたからです、したからです!
そうして転移した先にいたのは、キャスティアだった。いや、狙ったわけじゃなくて、たまたまなんだけど。
でも、せっかく会ったんだしお話しするのも悪くないよね。
突然現れた私に、キャスティアは驚いてるみたいだった。
「やあ。キャスティア。逃げ帰ってる最中かな?」
「…………」
ぴくり、とキャスティアの頬が動いた。あっはっは。煽ってるわけじゃないんだよ。ほんとほんと。魔女さん嘘つかない!
キャスティアは小さくため息をついて、
「あの少女……三人目は、あなたが連れてきたのですか?」
「はて。なんのことだか分からないね」
「私があの子の接近に気付かないはずがないでしょう。あなたが何かしたのでしょう? 手を出さないのではなかったのですか?」
「…………」
気付くよね! 当たり前だよね! むしろ気付かない方がおかしいよね!
んー……。よし。
「私のお気に入りに手を出したからね」
「お気に入り、ですか? それは……」
「旅館。ぼろぼろにしちゃったでしょ。ちょっといらっとしました」
「あ……。それは……。なるほど……。たしかに、申し訳ありませんでした……」
え。あ、認めるの!? さすがに無理筋かなと思ってたんだけど、納得してくれるとは思わなかった。キャスティアも悪いとは思ってたってことかな。
「ええっと……。どうしましょうか? 修理は……そういった魔法は使えないのですけど……」
「おん。私の気も晴れたからね。修理ぐらいはしてあげよう」
「それはどうも……。あれ? じゃあどうして邪魔を?」
「いらっとしたから」
「…………。そ、そうですか……」
そうなのです。それで押し通します。
「ところでさ。どうして他のやつを呼ばなかったの? リッパーだっけ。彼一人でも呼べば、普通に押し切れたんじゃない?」
ティアシャインが加わって三人になったとしても、リッパーが合流すれば普通にキャスティアたちが勝ったと思う。その場合でも私は手を出さなかった。だからちょっと疑問なんだよね。
キャスティアはなんだか苦笑いを浮かべて、肩をすくめて言った。
「だって、慰安旅行ですから」
「え?」
「普段がんばっているあの子たちのための慰安旅行なんです。それなのに、お休みだと言いながら仕事にかり出すのはかわいそうでしょう?」
「…………」
それは……。うん。うん。
「ふは……。あっはっは!」
「ちょ……。笑わないでください!」
「んふっ……。いやいや。いいと思うよ。理想の上司ってやつだね」
いや本当に。悪の組織ではあるんだろうけど、上司としてはすごくいいと思う。少なくとも私は気に入ったよ。だからといって協力はしないけど。
「ふふ……。嫌いじゃないよ。そういうの」
「それはどうも。もういいでしょうか?」
「うん。ありがと。またね」
「もう会わないことを願いますよ……」
キャスティアは疲れたようなため息をついて、そのまま歩き去って行った。
うん。本当に、どうしてこんなことしてるのやら。まあ……。どうでもいいことか。
とりあえず、あのぼろぼろになった旅館をさくっと修理するとしましょう。建物の時間を軽く巻き戻せば十分かな?
翌朝。良介さんの前で、明菜ちゃんたちは正座させられていた。桐子さんも目が笑っていない笑顔だ。静かに怒ってる。
「明菜。静香ちゃん。叶恵ちゃん。どうして怒られているのか、分かっているかな?」
「う、うん……」
「あの、その……」
「すみませんでした……」
とても丁寧に謝る三人。土下座しそうな勢いだね。昨晩あんなに頑張ったのに、なんてかわいそうなんだろう。あっはっは。
いや、ね。これが、夜にお出かけしてたから、みたいな理由だったら、私もちょっとはかばってあげようかなって思ったかもしれないんだけど……。
この子たち、朝帰りかましやがったからね。
旅館の建物の時間をちょっと巻き戻して、建物を修復。そうしてから三人の帰りを待ってたんだけど……。ぜんっぜん帰ってこないでやんの。何やってんだあいつらってちょっと思っちゃったよね。
で、ちょろっと魔法で様子を見てみたら……。魔法初心者の叶恵ちゃんと一緒に魔法で遊ぶ三人の姿が! アホかと思ったね。
多分、魔法を知らない叶恵ちゃんに明菜ちゃんがどんなことができるのか教えて、その流れで魔法で遊び始めて……みたいな感じだったんだとは思う。
思うけど戦い終わったその場で遊び始めるバカがどこにいるんだよと。ここにいたわけだけど。
そうして遊んでいる間に日がすっかり昇って朝になって。当然良介さんたちも起きてきて、子供三人がいないことにとても驚いたわけでして。
はい。問い詰められました。ある程度のことは話しました。叶恵ちゃんの持っている石が狙われて、襲われたこと。三人が戦って、無事に撃退したこと。
そしてその後、今の今まで遊んでいること。
まあ、普通に怒ったよね。当たり前だよね。まっすぐ帰ってこいって話だからね。
ちなみに私もちくちくと言われてしまった。起きないようにしていたこととか。三人を呼び戻したことでチャラみたいな感じにはなったけど。
「友だちの宝物を守るために戦う……。それは、いいことだと思う。正直父親としては、子供に戦ってほしくなんてないけれど……。二人が強く希望して決めた道だ。一度認めた以上、今更それについて問答したりはしないよ」
けれど、と良介さんはため息混じりに言った。
「朝帰りは……違うだろう……」
「はいぃ……」
本当にね。まさかの朝帰りだからね。えっちなことをしていたわけじゃないけど、それでも中学生が朝帰りだからね。不良かな?
私が良介さんたちを起きないようにしていたのも、戦い終わって帰ってきて、ぐっすり眠ってはい終わり、いい旅行でした、で終わらせられるからだったし……。気付かずに全部終わってるならそれでいいかな、と思ったから。
それが朝帰りですよ。隠せないよね。だってちゃんと寝ていたはずだったんだから。
良介さんのお説教はまだまだ終わる様子はなくて……。私は暇なので朝風呂いってきまーす!
壁|w・)リッパーさんとメルトさんはお部屋で酒盛りをしていました。




