福引きといえば……あれだよね!
「ああ……生きてるって……幸せ……」
「大げさだねえ」
私、シオンは商店街でのんびり団子を頬張っていた。お団子、いいよね。みたらし団子がとても好きです。美味。
この和菓子屋さんは店内飲食できるスペースがあるお店。お店の隅っこにテーブル席が二つだけあって、誰でも利用して構わない、という場所だ。
というわけで、お給料をもらってから毎日のように通ってる。和菓子、好きなんだよね。ケーキみたいな洋菓子も好きだけど、和菓子が一番好きだ。
雇い主の桐子さんに聞かれたら怒られそう……いや、あの人ならこの程度で怒らないか。あらそう、なんて言いながら笑いそう。いい人だよね。
ちなみに私のお給料は日払いでもらってる。その日働いたら帰り際にもらえる形。とてもありがたいです。
「ほら、シオンちゃん。これもどうだい?」
「おお、桜餅! いいですねえ! くーださい!」
「はいはい」
店主のおばあさんから桜餅をもらう。もちろんちゃんとお金は払います。
んー……。この独特な食感と味がいいよね! ただ甘いだけじゃなくて、桜の葉の塩漬けからくる甘じょっぱさがいい。素晴らしい。最高。
「おはぎはどうかな?」
「おはぎ! もらいましょう!」
和菓子! さいっこうだね!
さてさて。軽く三千円ほどの和菓子を平らげて、お支払いした後にもらったものがこちらです。
「ててーん。福引き券です」
「し、ししょ……。おも、い……」
「きゅう……」
明菜ちゃんたちを戦闘訓練でぶっ倒してから、明菜ちゃんを椅子にしてる。いや、全体重はかけてないからね。ほんとほんと。
「動きは良くなってきたかなあ。相変わらず明菜ちゃんが猪突猛進だけど」
「うう……」
「もう少し考えるように」
「はぁい……」
うんうん。素直なことはいいことだよ。
「そんな素直ないい子たちにプレゼント。この福引き券を代わりに使う権利をあげましょう」
「え……。別にいらな……」
「あ?」
「わあい! 嬉しいなあ!」
そうでしょうそうでしょう。子供はこういうのが大好きだからね! 無理矢理言わせた? 知らないですねえ!
「で、でも師匠。自分で引かないんですか?」
「一枚でやめた。ティッシュだった」
「ああ……。それで、どうして私たちに……?」
「んー……。定番ってやつ」
「え?」
この福引き、特賞が温泉旅行なのだ。二泊三日、五人まで。明菜ちゃんの一家は三人家族。お兄さんがいるらしいけど、寮暮らしだから家にいない。つまり三人。静香ちゃんで四人。あとは私を入れて五人になるって寸法よ。
「そろそろ温泉旅行回があってもおかしくはない!」
「また意味の分からないこと言ってる……。当たらなくても怒らないでくださいね?」
「あっはっは」
「怒らないでね!?」
「あっはっは!」
その時はその時ってやつだね! あっはっは!
というわけで、福引き会場に移動。商店街のど真ん中にちょっとしたスペースがあって、そこで福引きできるようになっていた。まだたくさんの人がガラガラと回してる。
景品は……よしよし。特賞はまだ残ってるね。
まあ、残っていて当たり前なんだけど。
「なんだろう。並ぶと……ちょっと楽しみになってきたかも!」
「うん……。わくわくする」
「シズちゃんは何が欲しい?」
「んー……。三等の、本」
「私は一等のゲーム機がいいな!」
いいねえ。夢があるよね。宝くじみたいなものだと私は思ってるよ。
少し待って、ようやく私たちの順番になった。
「どうぞ!」
「はーい! 師匠、がんばります!」
「がんばれー。目指せ特賞だよ」
「それはさすがに無茶ですよ!」
そうだね。係のおじさんもにやにや笑ってるしね。
残ってる福引き券は三枚。つまり三回引けるってことです。
それじゃあ、ちょこちょこっと。
明菜ちゃんがガラガラ回して出てきた玉は、赤。赤は……三等。
「おめでとうございます! 三等の小説セットです!」
「わあ! やったよシズちゃん!」
「明菜、すごい……!」
二人とも手を繋いで飛び跳ねてる。かわいいなあ。
「ほらほら。あと二回あるからね」
「あ、はい!」
というわけで二回目。今度は静香ちゃんが回す。出てきたのは……銀。
「お、おめでとうございます! 一等、最新ゲーム機です!」
「うそお!?」
「おお!」
二人とも驚いてるね。うんうん。こういうご褒美も必要だよね。
二人が何か察したのか、私の方に振り返ってくる。何かな? 私は悪いことはしないよ? するとすれば……仕返しぐらいさ。あっはっは。
明菜ちゃんが最後の一回を回す。そうして出てきたのは……金。
「ああ……」
「やっぱり……」
二人が笑顔を引きつらせる反対側、係の人は目を大きく見開いて絶句していた。
「まさか……あり得ない……」
「おじさん? どうしたのかな? ほら、金だよ?」
「はっ……。あ、はい、えっと……。おめでとうございます! 特賞です!」
笑顔を引きつらせるおじさんから特賞の旅行券を受け取る。いやあ、ラッキーだったね! ほんとほんと!
ちょっぴり弟子たちからの視線が痛いけど、私は気にしないのです。
「師匠。ああいうのはよくないと思います」
福引き会場から少し離れて。いつもの公園で明菜ちゃんにそう言われてしまった。
「ふむ。何の話かな?」
「福引き。何かしましたよね」
「したね」
まあ今更誤魔化しても無駄だろうし。魔法でちょちょいと出てくる玉を入れ替えさせてもらった。
「そういうのは……」
「だって、先に不正したのはあいつらだしね」
「え?」
あのガラガラ、中に金の玉なんて入ってなかったのだ。つまり旅行券が出ることはあり得ない。何のためかなんて分からないけど……。自分たちで使うか、換金するか、そんなところだったんじゃないかな。
「そんな……」
「悪意ってのはね、大きなものばかりじゃないんだよ。こういう目立たない部分もあるの。覚えておきなさい」
「…………。はい……」
これから生きていく上で、こういうのは大事だからね。悪意にはある程度敏感になってほしいものだ。
「でも、師匠、さすがに一等、三等はやりすぎだと思う」
「おん。それ、私はガラガラに何もしてないから」
「え……。本当に?」
「うん。君たちの運だよ」
私がそう言うと、ちょっとだけ複雑そうな顔をしていた二人は少し安心したような表情になって、そして嬉しそうに笑った。やっぱりかわいい子には笑顔が似合うよ。私も嘘は言ってないからね。
最初の二回、ガラガラの方には何もしていない。ただ二人に、運が良くなる魔法をかけただけ。運が良くなる魔法ってだけだから、外す可能性ももちろんあった。最後に勝ち取ったのはこの子たちの運だ。
でも……。運を良くした結果、引き当てるのがお互いの欲しいもの、というのはちょっとおもしろい。いいパートナーだよ。仲良しなのはいいことだね!
「それはそうと、旅行だよ旅行。明菜ちゃんのご家族に相談しなね」
「え……。師匠が使うんじゃ……?」
「おん。私一人が使ってももったいないでしょ」
「師匠の家族、とか……?」
ふむ。私の家族。つまり私の師匠と、あとあのお客様ぐらい、かな……?
「この惑星が消滅してもいいってことかな」
「お父さんに聞いてみます!」
「そうしなさい」
いやまあ、さすがに冗談だけどね。あの人たちも、無意味に惑星を消したりなんてしないから。
できない、とは言わない。というよりやろうと思えばできると思う。特にあのお客様は規格外過ぎて怖いから。世界は広いよね。本当に。
あ、そういえば、私が地球に行ってるって話したら、カレーパンとレトルトカレーを頼まれたんだった。どこで知ったのか知らないけど、買っておかないとね。
「じゃあ、とりあえず解散しよっか。明菜ちゃんはちゃんと相談しておくようにね」
「はい! 任せてください!」
その場で解散。私もコンビニでいろいろ買って帰ろうかな。旅行、楽しみだなあ。
…………。私も数に入れてくれてるよね? 大丈夫だよね? 信じてるよ明菜ちゃん……!
壁|w・)温泉回! ぽろり(首)もあるよ! …………。冗談です。




