魔女、二人目の幹部でピンチ!
私の生活は、朝はアルバイト、夕方は明菜ちゃんたちの指導、という形で落ち着いた。明菜ちゃんたちは時折ディザスター一味と戦ってるみたいだけど、私はそれには関与していない。そこまでの協力は、アルバイトの紹介程度じゃできないからね。
そうして、一週間ほど経った後の、今日。
「またやってるなあ」
土曜日のお昼過ぎ。魔力の流れを感じて、私は小さく笑う。今日も元気にニチアサをしているらしい。
「いらっしゃいませー!」
接客をしながら、その場の様子を魔法で眺める。ダブルタスクなんて余裕なのだ。遠視の魔法でニチアサな戦いを眺めながら、しっかり接客もこなす。充実してるなあ!
「んふふー」
「あら。機嫌が良さそうね、シオンちゃん」
「あはは。そう見えます?」
桐子さんに話しかけられて、笑顔で答える。いやあ、機嫌も良くなるってものですよ。二人とも頑張ってるからね! 師匠として嬉しいです!
そうして楽しく働いていたら、そいつは来た。
「邪魔するよ!」
入ってきたのは、なんかハイレグというか……。すごい服装の女性だ。二十代後半に見える女性で、髪は右半分が青、左半分が赤になってる。
うん。なんだあれ。え、この世界ってあんな髪色もあるの? ストレートに気持ち悪いんだけど。
「なにあの髪色」
桐子さんがぼそりとつぶやいた。よかった。さすがに二色はあり得ないらしい。
「へえ……。ここがあのガキどもの拠点かい」
おん……? こいつ、ディザスター一味か。なるほど。
「へへ……。おらあ!」
そいつは近くのテーブルを思い切り蹴り上げた。テーブルが宙を舞って、轟音と共に落下……しそうになったので、キャッチして元の位置に戻す。壊れたらもったいないからね。
お昼過ぎでピークは終わってると言っても、まだお客さんの目はある。なんならこっちにスマホを構えてる人もいるぐらい。肖像権の侵害ですよやめてほしい。まあ私は訴える先がないけどね! いろいろとやばい身の上なのでね!
「テメエ、邪魔してんじゃ……、いだだだだ!?」
テーブルを蹴り上げた阿呆の頭をわしづかみにして締め上げる。あっはっは。ぶち殺すぞクソガキ。
「店内での暴力行為はお止め下さいねお客様ー」
「て、テメエが言うな! テメエのこれはどうなんだ!?」
「あっはっは。店長、ちょっとこっち関係っぽいので、出まーす。いいですかね?」
「いいよー」
店長さんから許可をもらったところで、阿呆の頭を掴んだまま外に引きずり出した。そのまま、ゆっくり認識阻害をかけて、周囲からフェードアウト。そうしてから、結界の中にぶち込んだ。
「まったく……。いきなり何やってくれてんのかなあ。一般人に迷惑をかけるのはだめでしょ」
「テメエ……! あたしの邪魔をしやがるつもりか! いい度胸だ!」
阿呆が何かを放り投げた。あれは……コイン、かな? そのコインは光り輝くと、異形の化け物に変わっていく。怪人だね。ニチアサの敵だね! 分かるとも!
「やれえ!」
「ガアアアア!」
コインの怪人が私に襲いかかってきた。
ので。
「んんっ……」
『跪け』
言葉に魔力をのせてぶつけた。それだけで、怪人はその場に倒れ伏す。よっわ。
「な、なにが……」
そして阿呆は何も分かってないらしい。一応幹部だよね? 弱くない?
とりあえず……。邪魔なものを処理、だね。
『沈め』
『沈め』
『沈め』
ん……。三回か。三回で怪人はぐしゃりと潰れた。一回ごとに重力が十倍になっていっていたから、よく保った方かな。
「さてと」
「ひっ……」
阿呆に視線を向ける。阿呆は思わずといった様子で後退った。
「一応言い訳聞いても……」
「な、なんなんだ! お前……なんなんだよ!?」
「おん……?」
あれ……。これ、もしかして私のことに気が付いてないやつ? さすがに私のことそのものが共有されていない、なんてことはないだろうし……。
確かに髪の色を変えて変装っぽいことはしてるけど、魔力の質とかは変えてないからこいつら相手には普通に分かるだろうって思ってたんだよね。あの子たちを見学してる時にお客さんに見られてしまった時のための変装だったからさ。
ふむ……。ばれてないのか。ふむ。
…………。あは。
いいね。いいね! ばれてないんだ! そういうことなら……ちょっとぐらい、遊んでもいいよね!
唐突に乱入してきた魔女とは別の、強大な力を持った現地勢力……とか! 楽しいんじゃなかろうか! じゃあちょろっと魔力の質も変えちゃおう! さすがに勇者くんに直接調べられたらばれちゃうだろうけど、しばらくは大丈夫だろうからね!
「私は……陰陽師だよ。最近、この地域で普通ではない争いの痕跡があったからね。調べていたんだ」
「な……」
「どうやら君も関与しているらしいね? 話を聞かせてほしいな」
にっこり笑って語りかけてあげる。優しく、できるだけ優しくね。
「ふ、ふざけんな! そんなやつが、なんで都合よくあいつらの拠点にいるんだよ!」
「ふむ……」
あ、どうしよう。ぜんっぜん考えてなかった。え、と……。あー……。
「まずは調査からと思っていたからね。どうやらあの家の子が関わってるみたいだから、内部から調査しようと思ったわけさ」
「くそ……っ! そういうことかよ!」
おお、納得してくれた。一安心だね!
ああ、でも、もちろん一方に肩入れしすぎちゃだめだと思う。すでに弟子にしているだろ、というのは置いておいて。あれは正当な対価だから。
「何を勘違いしているか知らないけど、今のところ君たちと敵対しようとは思っていないさ」
「は?」
「言っただろう? 調査だと。どちらに正当性があるか分からない以上、こちらはまだ手出ししないとも」
「テメエ……! 攻撃してきただろうが!」
「そりゃあ、一般人の店に手を出したからだろう? しかも、仮にとはいえボクが世話になっている店だ。当たり前だけど……次は陰陽師との敵対行動として見なすよ」
「……っ」
これぐらい言えば、さすがにお店に直接手を出してくることはないでしょ。私との実力差ぐらいは理解できただろうから。
阿呆は私を睨み付けて、けれど何もせずに背を向けた。
そして去り際に一言。
「ディザスター様が出てきたら……。テメエなんか、一瞬で殺されるからな!」
「そうかい。会えるのを楽しみにしてるよ」
「チッ!」
舌打ちを残して去って行く阿呆の女。気配が消えるまで待ってから、私はゆっくりと息を吐いた。
うん。とりあえず勢いで行動しちゃったけど……。後から思ってしまったことがある。
この世界、陰陽師いるんじゃない?
いや、だって、ニチアサの変身ヒロインがいるぐらいだよ? だったら、陰陽師ぐらいいてもおかしくないと思う。いやむしろいてほしい。見てみたい。あ、いや、それはよくて。
後から陰陽師が出てきた時にややこしくなりそうだなと思いました。
んー……。まあ、いっか! その時はその時、だね! むしろ会えるのを楽しみにしておこう! もしも私の手に負えないぐらいだったら困るけど……。さすがにそれはないと思うし。勇者くんもそれぐらいは調べて行動しているだろうから。
んっふっふ……。いやあ、楽しくなってきたなあ。あまり介入しすぎないように気をつけないといけないけど、これからあの子たちが何をやってくれるのか、とても楽しみだよ。
ああ……。本当に。
「たのしみだなあ……」
思わず吊り上がる口角を手で隠し、私はその場で忍び笑いをした。
さあて。アルバイトに戻りますか!
壁|w・)魔女 (によって)、二人目の幹部(で→)がピンチ!
ここまでが第二話となります。
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