表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑種と未来人の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第四章 新たなる力
108/112

第八十五話 平原を崇める者、山岳を崇める者

第八十五話 平原を崇める者、山岳を崇める者



 翌日、月曜日。


 いつもの様に朝の支度を済ませ、いつもの様に学校へ向かう。


 グラウンドから元気の良い声が聞こえてくる中、廊下を歩いていると。


「や~ん!虎毬ちゃん可愛い~!」


「えへへ。て、照れますねー」


 隣のクラスから聞こえてきた声に視線を向ければ、窓際の辺りで虎毬さんが複数の女子生徒に囲まれていた。


 しかし、険悪な空気はない。むしろ……何というか、姦しいと、言って良いのだろうか。


「やっぱりツインテール!ツインテールは全てを解決する!」


「笑止!ツインテールにも複数種類があると分からない奴が、語るな!」


「ね、ね。ポニーテール!今度はポニーテールにしてみよ、虎毬ちゃん!」


「え~?もう、しょうがないですねー」


 ツインテールにした虎毬さんが、照れた様子で笑っている。どうやら、他の女子達から正しい意味で可愛がられているらしい。


 それを、男子生徒達がチラチラと遠目に見ている。


「遠海さん、マジで可愛いな……」


「な……俺、元々は巨乳の方が好きだったんだけど……」


「バカ、教室でそういう話題出すなって……!虎ちゃんが汚れる……!」


「は?お前、何でそんな馴れ馴れしい呼び方してんの?」


 ……聞かなかった事にしよう。


 男子生徒が結構な割合新しい性癖に目覚めている様だが、知らない。知らないったら、知らない。


 キャッキャと黄色い声を上げながら髪型を変えていく虎毬さん達を見ていると、一瞬、否、半瞬。


 魔眼の動体視力でなければ捉えられない刹那の間に、彼女の視線がこちらを向いた。


「───」


「ひっ……!」


 思わず情けない声をあげながら、一歩後退る。


 こっっわ……!フルカスと相対した時みたいなプレッシャーが、唐突に襲ってきた。全身から嫌な汗が噴出する。


 隣のクラスの者達は、誰も彼女の眼光にも、自分の動揺にも気づいていない。虎毬さんは、先ほどまでと変わらず女子生徒達と楽しそうに笑っていた。


 ───笑ったら斬る。


 あの言葉は、冗談ではなかったらしい。


 頬を引きつらせていると、背後から声がかけられた。


「あれ、矢川。どうかしたのか?」


「っ、あ、ま、松田君。おはよう……!」


 不思議そうな顔をしているクラスメイトに、どうにか笑みを浮かべながら挨拶をする。


 彼は不思議そうな顔をしながら、隣のクラスを覗き込んだ。


「おはよう。てか、何を見て……ああ、遠海さんか」


「あー、まあ、うん。同じ異能者だし……」


「そっか。分かるよ、矢川……お前の気持ち……」


「え?」


 どういうわけか、したり顔で何度も頷く松田君。


 あれ、何か嫌な予感が。


「お前も……遠海さんが気になっているんだな……!」


 松田君、お前もか。


 気になっている理由が絶対に違うが、真実を説明できるわけもなく視線を逸らす。


「いや、その……」


「隠すなって。かくいう俺も、最近遠海さんの事が気になってしょうがないからな……前は、普通のデカパイグラビアアイドルの写真で興奮できたのに……ふっ。今は、貧乳でしか興奮できなくなっちまったぜ……!」


「お、おう」


「この前、偶然遠海さんと話す機会があってな……あの愛くるしさは、もはや凶器だ」


「そっかぁ」


「っと、朝からする話じゃなかったな。でも、恩人だからって俺はこの恋を……譲る気はないぜ……!」


「あ、大丈夫。僕は、巨乳派なんで……」


「隠すなって。さ、行こうぜ。これ以上は、ファンクラブに目を付けられるぞ」


「ファン……えっ」


 困惑していると、肌を刺すような敵意を感じ取る。


 咄嗟に『霊装』を展開しそうになるのを堪えながら視線をそちらに向ければ、隣のクラスの男子数人が、こちらを睨みつけていた。


 そのプレッシャーは虎毬さんやフルカスと比べれば、非常に弱々しい。その代わり、何かドロっとした気配だった。


 え、こわぁ……。


「俺達のクラスにも、ファンクラブはいる。気をつけろよ、矢川……!」


「……うっす」


「でも、偶にファンクラブは彼女公認の写真をくれたりするから、仲良くしておくとお得だぞ、矢川……!」


「……うっす」


「見るか?俺がこの前もらったブロマイドを。矢川……!」


「いらないっす……」


 ……いつの間にか、学校が侵略されていた件について。


 いや……ここは、ポジティブに考えよう。


 かつては異能者だからと、自分を必要以上に恐がっていた松田君が『この恋は譲らない』と言ったのだ。それだけ、こちらを『無暗に暴力を振るう存在ではない』と信じてくれているという事だろう。


 うちのクラスにも虎毬さんのファンクラブがあるという事は、異能者への恐怖心も減っている証拠だ。これは、良い傾向と言える。


 そう己に言い聞かせながら、自分の教室に入った。


「おはよう……」


 改めて、教室内を見回してみる。


「はぁ……はぁ……!今日も虎ちゃんは可愛かったなぁ……!あの猫耳が、俺を狂わす……!」


「虎毬は私の妹。たぶんそう。部分的にそう」


「な、なあ……遠海さんってさ……彼氏とか、いるのかな……」


「ようこそ、虎毬たんの沼へ……!」


「あの子を産みたい」


 これまで、きちんと向き合ってこなかった教室。自分が目を逸らしている間に、誰も彼もが変わってしまった。


 あの男子生徒は、あんな変質者みたいな顔をしただろうか?


 あの女子生徒は、この前大学生の彼氏がいると他の生徒に自慢していなかっただろうか?


 あの男子生徒は、スマホに大量の巨乳グラビアアイドルの写真を入れてきて、先生に密告されて怒られていなかっただろうか?


 あの男子生徒は、その密告をした、品行方正な風紀委員ではなかっただろうか?


 あの女子生徒は……いや、あの人は元々あんな感じの言動だったわ。じゃあ良いか。


 一部を除いて、まるで別人の様になった生徒達。まだ入学して2カ月程度。知人とすら言えない関係だったが、ここまで濃かったら嫌でも気づけたはずなのに。


 だが、彼ら彼女らの奇行に、自分は今更になって気づいた。


「どうした矢川。顔を真っ青にして。やっぱり遠海さんのブロマイド見るか?」


 ニッコリと笑いながら、語り掛けてくる松田君。その目は、驚くほど澄んでいた。


 ああ、そうか……とっくにもう、ここは自分の知らない場所になっていたのだな。



 ……え、なにこれ。ホラー?



*    *    *



「って、事があったんですよ」


「ほーん、よくあるよくある」


「あってたまるか」


 放課後。美由さんの家のガレージで、パソコンを操作していた璃子先輩が面倒そうな顔でこちらに振り向く。


「言うてさー。あーしの学校じゃそういうのマジで珍しくないし……わざわざ語る事でもなくない?」


「待って?突然漬物石サイズの情報ぶつけないでもらえません?」


「そんな驚く?オタク君……もっと、他の生徒の事とか見た方が良いよ?」


「え、これ本当に僕がおかしいんですか……?」


 あまりにも自然な様子の璃子先輩に、だんだんと自分が間違っていたのではと思えてきた。


 いや、でもやっぱおかしいのは周囲だって。僕は正常だよ絶対。


「あーしのクラスでもよく上級生のお姉様方のファンクラブがキャイキャイ言っているし、そういうもんでしょ」


「待ってください。璃子先輩の通っている学校は女子校ですよね?」


「あん?そうだけど」


「詳しく、お願いします。詳しくです」


「え、なに、キモ……」


 素で引いている璃子先輩の様子に胸を抉られたが、耐える。


 リアル女子校で百合の花が咲き乱れているかもしれないんだ!砲声弾雨の中を駆け抜けてでも、知る価値はある!


「そんな事より、お尋ねしたい事があるのですが」


「美由さん。これは大事な事なんだ……!そんな事と言われるべきは、君が今持っている物の方なんだ……!」


「いえ、どう考えてもこちらの方が重要かと。正気に戻ってください、耕太さん」


「はい……」


 最近、美由さんの言葉が偶に鋭くなる。良い事ではあるんだけどね?あるんだけどね……。


 しわしわのピカ●ュウみたいになりながら、美由さんの方に振り返る。彼女は、両手で拳大の物体を持っていた。


 というか、自分が作った魔道具である。


 缶ジュースほどの大きさをした、飾り気がない木材でできた円筒状の物体。


「耕太さん。学校での愚痴をこぼす前に、作業机に置いたこれの説明をお願いします」


「魔物をカメラで捉える為の光源」


「…………なるほど」


 もの凄い間の後、美由さんが頷く。心なしか、そのアメジスト色の瞳が遠くを見ている気がした。


 大方、『こいつまた重要な魔道具放置してやがる』と思っているのだが、今回はしょうがなかったのである。


 愚痴を言って自分を落ち着かせた後、それの説明をする予定ではあったのだが。璃子先輩の反応が予想外過ぎて後回しにしていただけだ。


 でもやっぱり重要度高いと思うんだ……女子校の百合事情……。


「もしや、既に実用段階なのですか?」


「たぶん?その実験も、今日やろうかと」


「あーしの方は準備できてるぜー」


「あ、ありがとうございます。じゃあ、やりましょうか」


「ういー」


「……軽い……あまりにも……!」


 美由さんが目を強くつぶり、眉間に皺を作る。おお、彼女にしては珍しい表情を。


 やはり、彼女の表情筋が育ってきた気がする。特撮による教育って、意外と成功するんだな……偶にアカン学習するけど。


 そんなこんなで、ガレージの外に出て、地面に例の魔道具を置く。


 更にその数メートル離れた位置に別の三脚とビデオカメラを置いて、手作りの魔力入りの紙をレンズの前に張った。


 これまたその隣にも三脚と、今度はスマホを設置と。


 最後にポケットから消しゴム4つ分ぐらいの小さな木箱を取り出して、魔道具とカメラの間の地面に置く。


「それは?」


「ああ、魔物を実験で用意できないし、ぼやっと魔力を出すやつを作ってみた。試しに出してみるから、目視できるか試してみよう」


 そう告げて、木箱の端を軽く指で押す。内部の供給用スクロールが起動し、上に向かって5秒間ほど魔力を放出した。


 魔法や異能という『形』を持たずにただ放出しただけあって、すぐに霧散する。また、出力自体も弱いので、魔眼でもなければ捉える事はできない。


 それを確認する為、美由さん達に視線を向ける。


「どう?見えた?」


「いえ……そもそも何かしたのですか?」


「うーん。見えはしなかったなー。何か、希薄な魔力が放出されて、すぐ霧散したって感じ?」


「あ、璃子先輩は分かるんですね」


「でも、さっき言った通り目視は無理。感覚だけだねー」


「なら、大丈夫です。実験が上手くいけば、これの影が見える……はず」


 ちょっと自信なくなってきた。


 どうしよう。皆これができる前提で話を進めているのに、失敗したら……。


 不安で胃がキュッとなっていると、璃子先輩がカメラの傍に立つ。


「こっちは準備OKまる水産だぜー」


「あ、じゃあ、やりましょう。美由さん。そっちの魔道具の、側面にある突起を押して」


「はい」


 美由さんが魔道具の突起を押すと、円筒状の魔道具上部から光の玉が射出された。


 1メートルほど上で、光の玉は停滞。その光量はLEDライトと同程度と言った所だ。


 これだけなら、ただの照明弾。しかし、本番はここから。


「魔力を流します」


 そう告げて、こちらも突起を押しスクロールを起動。魔力を放出する。そして、すぐに撮影の邪魔にならない様に数歩分後退した。


 はたして、成功しただろうか……不安に思い、璃子先輩の方を見る。


 彼女は、ビデオカメラの画面を見つめながら。


「……グレイトだぜぇ、オタク君」


 ニヤリと笑いながら、親指をたてた。


「よかったぁ……」


 安堵から、大きくため息をつく。理論上は大丈夫と思っていたが、やはり実際にやるとなると別だ。


 胸を撫で下ろしている自分をよそに、美由さんが大慌てで璃子先輩の隣に向かう。


「見せてください!……なるほど、これが……」


「だねー。すぐに影は消えちゃったけど、しっかり映っているよ」


 自分も画面を見に行くと、璃子先輩が脇にどいてスペースを作ってくれる。


 しかし、すぐ隣に美由さんがいて、肩が触れてしまいそうなのだが……彼女は食い入る様に画面を見つめて動かないので、慎重に近づいた。


 ふわりと、鼻腔に良い香りが流れ込んでくる。それを意識しない様にしながら、画面を覗き込んだ。


「おお」


 紙で塞がれ、その上から光を浴びせられたレンズ。白い背景に繊維がチラホラと見える中、中央に黒い影が映っていた。


 ぼんやりとはしているが、確かに魔力の影を撮影できたのである。


 いやぁ、良かった良かった。


「実験は成功ですね」


「おうよ。ハイタッチしようぜ、ハイタッチ!」


「えっ」


 璃子先輩が満面の笑みで右手を挙げる。


 少し戸惑いながらこちらも手を挙げると、彼女の方から勢いよく掌を合わせてきた。


「ヘーイ!グッジョブオタクくーん!」


「い、いえーい?」


 どうリアクションして良いのか分からず、取りあえず曖昧な笑みを浮かべておく。


 嬉しいは嬉しいのだが、安心の方が強くてテンションが上げづらい。


 でも、自分は凄い事をやったのだという実感が、沸々と湧き上がってくる。


「てか、あの光なんなん?ずっと滞空してんだけど」


「あ、アレは、『火弾』と『破邪』の簡易スクロールを手書きで作って、組み合わせたものです。ちょっと調整が必要ですが、あの魔道具なら『魔力を効率的に照らし出せる』ので」


 普通の光源では、異能者の目なら兎も角魔力の紙に影を作るのは難しい。それこそ、太陽みたいに強力な概念を放っているのなら別だが。それでは、夜間や屋内で敵を捉えられない。


 そこで、魔力を重点的に照らす魔道具を作ろうと思ったのである。調整も簡単だし、材料さえあればその辺の中学生でも図工のノリで作れる代物だ。


「後は、このカメラと別のカメラを組み合わせて……」


「もうできているぜぇ、オタク君。同時にできなきゃ意味ないからな」


 不敵な笑みと共に、璃子先輩が三脚からスマホを外す。それを数回タップした後、こちらに見せてくれた。


「おお……!」


 凄い。普通のカメラが捉えた映像の中に、魔力の黒い影が映っている。違和感なく、組み合わせができていた。


 現代技術ってスゲー……。


「これ、リアルタイムでできるんですか?」


「あったぼうよー。オフラインでやるんだったら、容量けっこう食うかもだけどなー」


「でも、予算とか人員とかの問題が解決したら」


「誰もが魔物を捉える事ができるってぇわけよ」


 数秒間璃子先輩と見つめあった後、そっと右手を挙げる。


 そこに、勢いよく彼女の手が合わさった。二度目のハイタッチである。


「いえーい!やってやったぜー!」


「やりましたね、璃子先輩!これたぶん凄い事ですよ!」


「たぶんじゃねぇよ!マジで凄いって!胸を張れ胸を!」


「おっす!自信もちます!」


 胸を張って、両手の握りこぶしを頭より高い位置に掲げる。


「コロンビアポーズじゃねぇか!アッハッハッハ!」


 ゲラ笑いする璃子先輩に渾身のドヤ顔をしていると、美由さんがふらりとこちらに近づいてきた。


「耕太さん……」


「え、あ、うん」


 コロンビアポーズのまま、彼女に視線を向ける。


 また、『なんで港で死んだんですか?』と言われるのだろうか。


 いつも通り『知らんがな』と答える準備をしていたら、突然美由さんがこちらに抱き着いてくる。


 ……抱き着いてくる!?


 脳の処理が追い付かない。彼女の両腕がこちらの首に回り、首筋に額が当たる。


 そして、その爆乳が鳩尾あたりに思いっきり押し付けられた。


「───おお」


 ───それは、衝撃としか言いようがなかった。


 どこまでも形を変える様な、柔らかさ。かと思えば、ほどよい反発でこちらを押しのけ様としてきた。だが、美由さんがその華奢な両手に力を籠める事で、互いの体は離れる事なく密着し続けている。


 暑くなってきた事もあって、お互いにTシャツ姿。薄い布地と、彼女の下着を挟んで、自分の体にお胸様の感触が伝わってくる。


 ムニュリ、という擬音ですら足りない。柔らかく、弾力がある感触。そう、これが。これこそが……。



 ───おっぱい。



 産まれてきてくれて、ありがとう。美由さん。


 産んでくれて、ありがとう。父さん、母さん。


「生きていてくれて……ありがとうございます……!」


 それはこっちの台詞です。


 美由さんの言葉は、予想外のものだった。それに返事をする事は、当然ながらできない。


 というか、こちらの胸の辺りに彼女の口があるので、吐息がかかるのが感覚で分かる。何かこそばゆい。


 だがそれ以上に、おっぱいが……!


「きっと、きっとこれで、多くの命が救われます。人類は、戦える……!」


 いやいや。ケニングを作った人達に比べれば、そこまで言われる様な事じゃぁないって。


 きっと、世界のどこかで既に基礎研究が行われ、魔物を捉える技術だってもうすぐ一般的なものとして公開されるよ。


 と、内心で語るも、口からは出せない。なぜかって?


 今喋ろうとしたら、全ての単語が『おっぱい』に変換されかねないからである。


 やばいな……人の脳みそって、ここまでバカになれるんだ……。


 というか、あの、マジでやばい。生理的な現象がですね。


 美由さんは感極まっているのか、全身で抱き着きにきている。必然、その太腿もこちらに押し付けられていた。


 腰から下は厚手のツナギ姿なので、彼女の柔肉の感触は伝わってこない。が、自分の生理現象はバレる可能性が高い……!


 自覚できるぐらい興奮しているのに、血の気が引いてきた。ははん……さてはこれ、死ぬやつだな?


「うんうん、良かったね……!それはそうと美由っち。何かオタク君の顔色が赤くなったり青くなったりしているんだけど」


「貴方がいて、本当に良かった……!」


「あ、これ聞いてねぇや」


「……けて」


「おん?」


「たすけ、て。璃子先……輩……」


 受け取って、ください。理解して、ください。


 この……助けを求める声を……!


 自分の意図を察したのか、璃子先輩の視線が一瞬だけこちらの下腹部に向かった後。


「……おおっ」


 顔を真っ赤にしながら、美由さんを引きはがしてくれる。


 瞬間、全力で回れ右。彼女らに背中を向ける。


 見られては、いないはずだ。位置的に、美由さんの体で璃子先輩からは目視できない位置だった。


 あの反応は、ただ生理現象を察しただけに過ぎない。


 ……それはそれで、辛いッッ!!


「ぐす……璃子先輩……?」


「おーけー、美由っちー。それ以上はいけない。ブレイク、ブレイク。オタク君困っているから」


「耕太さんが……?」


「……死にたい」


 あ、口が滑った。


「耕太さん!?い、いけません!何が、何が原因ですか!説明をしてください!全力で問題を解決します!」


「ダメだ美由っち!今は!」


「私にできる事なら何でもします!だから!」


「本当にダメだ!それ以上は!」


 ───僕は、駆け出した。


 本当に死ぬ気はない。ただ、走りたかったのだ。


 美由さんの声を背に受けながら、前傾姿勢で足を動かす。お世辞にも、綺麗なフォームとは言えまい。


 だが、その速度はきっと……かつての強敵達を彷彿とさせるものだったと、断言できる。


 ああ……風に、なりたい……。



 そして、一時間ぐらいしてから美由さんの家に戻ってきた。



 また抱き着かれそうになるも、璃子先輩がガードしてくれたので事なきを得る。


 だが、美少女2人のお胸様がぶつかり、潰れる光景はしかと目に焼き付けた……。


 ……まだ脳みそがバカなままだぜ!もうひとっ走りしてきます!




読んで頂きありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。励みになっております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


『コミュ障高校生、ダンジョンに行く』の外伝も投稿しております。そちらも見て頂ければ幸いです。


Q.耕太は情報を虎毬さんに思いっきりぶつけたそうですが、伝えていない事ってあるのですか?

A.ロッソさんが闇堕ちした事は話しましたが、具体的に何をやったかと固有異能、それと『矢広耕太』が未来で語られている姿は、伝えていないですね!

 特に後者はできるのなら墓場まで持っていきたいと耕太は考えています。闇に葬りたいのですね。

 ケニングについても、かなり大雑把にですが教えています。美由さんの許可もあったので。ただ、機体の詳細についてはそもそも耕太が知らないので伝えられません。


Q.公安がこんなに目立って良いのかよ!

A.

遠海さん

「うっさいわね。5月時点だと、これぐらいやらないとマジで対象へ向けられる感情が『迫害』に変わりかねなかったのよ。ズメウの霊的災害以降は、流れも変わったけどね」

安田さん

「せんぱーい。スプーンがじがじしながら喋らないでくださいよー」


Q.この人気ぶりだと、虎毬さんが耕太に接触するのやばくない?

A.

遠海さん

「他の生徒にも似た様な距離感で接しているから、ヘイトの分散は完璧よ。そもそも角が立たないタイミングで会っているしね」

安田さん

「その結果、大量の被害者……もとい性癖を歪められた子達が……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おっきいのも、ちっちゃいのも、いいじゃない。 おっぱいだもの。 みつを。 あ、私はちっちゃくておっきいのが大好物です。どことは言いませんが。
これがいい大人のやることか⋯?やっていいことか⋯??? あとファンクラブについてリコパイは1話消費してもらっても⋯いえ!こうたくんへのご褒美回ってやつですよ!
小鳥遊さんは交尾は知ってるのに自分の体が耕太君にどういう生理現象を引き起こしてるのかまだ理解が足りてないねぇ。 肉体あるころはその破壊的なお胸様とか無かったからねぇ。 低身長巨乳は全然アリなんだが、一…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ