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82話 それでもずっと。末長く一緒に

「たくさん食べてねアリス」

「足りなかったら言えよ。つか俺が足りないから追加するわ」


 あはは。お互いに隠してた秘密をみんな吐き出してスッキリ、というわけでお兄様と私の正体判明パーティーしちゃおうか。みたいな流れに何故かなってしまった。


 何故かしっかり用意されていた下拵え済みの食材、うちの傭兵団ってパーティー頻度が高い気がしないでもない。たっぷりのお肉を堪能させてもらったから嬉しいんだけどね。


 パーティーで何故か盛り上がったのは私達が日本にいた頃の話だった。

 

 異世界からやってきたなんてトンデモ話は、説明下手な私なのに意外にもすんなり受け入れられた。


 それから語ってくれたのはランキスさんの過去。

 始めた頃はやっぱり苦労したんだそう。用心棒の仕事してたのに勤務中にグースカ眠っちゃって、数日でクビにさせられたとか。あれこれ悪いのはランキスさんじゃ?


 でもスタートして僅か数年でここまで大出世したんだから、宙渡りを抜きでも才能はあったんだろうね。


「じゃーな、冷え込むから暖かくして寝ろよ」


 楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていった。もう解散しなきゃいけない時刻だ。


「おやすみアリス。……えーと」

「ラズウェルでいい」


 わりとあっさり言われちゃって、ランキスさんは頭をポリポリ掻いてる。


「今後も頼りにしてるよ、ランキス」


 ランキスさんの表情が和らいだ。

 さっきのパーティでも二人の会話は乏しかった。実はそれって珍しい光景だったりする。

 

 いつもは不思議な空気感というか、絶妙に会話は弾まなくって。一見すると不仲っぽいけど、性格が似てるようで似てない、けど妙に波長は合ってるっていう本当に不思議な間柄。そんな2人だったりする。


 何年も一緒にコンビ組んでるんだもんね。二人が組んだのが傭兵団の始まりなんだし、私も知らないことがいっぱいあるだろう。


「眠たい」


 ランキスさんは大あくび。なにせこれから聖堂教会の総本山へ、蜻蛉返りしなきゃならないのだそう。


 ゴドゥバ氏による降伏宣言が、ここミステクタ首都で為された。完全勝利したから一件落着、そう簡単にはいかない。


 面倒くさい事後処理とかあるのだそう。そもそもングスさんやオランタさんウェルザーさん置き去りにしてるらしいし。


「やべー眠たい凄く眠たい」

「信者虐殺を避けて、平和的な解決方法を選んだのはランキス様でしょう。公国としてできる限りの支援を行わせますから尽力してくださいな」


 リリファさんにぴしゃりと言われちゃった。どうやって解決していくのか不明だけど、私もやれることがあるなら協力していきたいな。


「頼りにするわよアリス。……ランキス様、眠気覚ましの薬草を渡しましょうか」

「頼むわ。あー日付変わるまでに寝たい」


 ぶつくさ言うランキスさんを宥めつつ、リリファさんも見張りの蟲達を残してグリンラードへと帰還していった。


 ……。


 二人きりになっちゃって。

 パーティの後ってどうしてこんなに寂しいんだろう。

 アパートが途端に広々と感じてしまう。


「疲れてるね。お風呂に入ろうか」


 静かになったリビングで、そんな風に耳元で囁いてくれた。甘えるように、腰にそっと腕を絡める。ふわりとお姫様抱っこ。


「怖かったんだ」


 少しだけ震えながら彼は私に告白する。


「典子さんが親愛するお兄さんの名を騙っていると知られるのを。この世ならざるアンデッドと知られることを。何よりも、嘘をつき続けてるのを偲びなかった。……けれども貴女は、俺が正体を明かした後も態度を変えないでいてくれる。……どれほど言葉を重ねても足りないくらいに、それがとても嬉しいんだ」


 わたしも、そう。秘密に縛られてたんだろうな。私も、彼も、知ってしまう恐怖に怯えていた、お互いに深く踏み込んでいく事への恐怖に。


 いつものように一緒に脱衣所で裸になってると違和感。

 あれ。こんなに彼って小さかっただろうか

 少し縮んだ? さっきの、聖なる攻撃の後遺症がまだ消えてない?


 いや私が成長したんだ。身長も少しずつ伸びて、胸も膨らんできて、身体のシルエットも丸みを帯びてきてて。

 もうすぐ幼年期が終わる。


 身体を洗いっこしてからチャポンと湯船に浸かって、そんなことを考える。

 

 お風呂から上がったら、裸のままベッドに向かいませんか?

 

 湯船で暖まりながらそう呟いた。

 

 これからも。

 

 一呼吸置いて。

 

『ラズウェルさん。』


 言ってみてやっぱり謎の違和感。お兄様、が長かったからかな。しっくりこない。まあいいや。

 

『ラズウェルさん。10年後も20年後も、ずっと一緒にいてくださいね』


「もちろんさ」


 驚いた顔もつかの間。

 

 反りが合わない時もあるかもしれない。

 

 それでもずっと。

 末長く一緒に。


 いて下さいね。すぐにいつもの優しい笑顔になってくれた。

 

 キスしながら一緒にベッドへと飛び込んだ。

 

 ラズウェルさん。

 こっそり耳元で囁く。

 

 私、ラズウェルさんの赤ちゃんが欲しいです。

 

 だってラズウェルさんの股間は私の腕よりも膨らんでいるのだから。

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