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55話 結構有名なんだぜ? 可愛い嬢ちゃん達コンビは

「はいよ。熱いから気を付けてね!」


 ありがとうございます。

 ドレスを汚さないよう丁寧に、リンゴ飴みたいな甘いお菓子を一口。うん美味しい。


 右手には綿菓子と海鮮焼き。売ってるのも屋台の雰囲気も日本のお祭りに似たのが多い。ただ味やクオリティは強面さんの串焼きお肉には及ばない。あそこは本物だもん。


「あの店員さんは60点ね。顔はいいんだけどワイルドさに欠けるわ」

「ねえアリス手を繋いで歩きましょう。そう、そして頬とか唇とかも密着させて」


 みんなお祭りを精一杯楽しんでてなにより。ナルシュ君だけそわそわしてるのが気になるけど。

 で、たまたま空いてたベンチで一休みしてたんだけど。


「獣が人間様の定義祭に混ざんなよ」

「空気悪いよなー、ったく」


 ヒソヒソと私達を蔑む声が聞こえてきた。


 懐かしくも再現されて欲しくなかった光景。覚悟はしてたけど、実際やられると結構傷付くな。


 そんな彼等が私達のベンチに向かって歩いてきた。見るからに柄の悪い容貌の男数人組。


 傭兵っぽい格好かつ、鑑定せずとも大して鍛えてないのが丸わかりだ。


 これ見よがしに武装をちらつかせ闊歩している。更にすれ違いざま、お酒の瓶をこっちに向かってわざと傾けた。


 ふーん、そんな意地悪するんだ。じゃあ風魔法を展開っと。


 何故か急に突風が吹いて、質の悪い鈍器を背負った男の上着に、べっとりとこびりついたのだった。偶然って凄いね。


「なっ、テメェら何しやがる!」


 何って風が吹いただけ。私は指一本触れてないよ、変な言い掛かりは止めてほしいな。


 なんて私の心の声を知ってか知らずか、男性達は顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。


「獣のガキが、目障りなんだよ!」


 肩に掴みかかる手をあえて避けない。せっかくのドレスが汚れるのは気分悪いけど。これで正当防衛を主張できるし。

 でもその手はパシッと払われた。


「おいお前ら、アリスに乱暴すんじゃねえ」

「貴方達を見ていると虫酸が走るわね」

「んだとガキ共」


 間に割って入ったナルシュ君とリリファさん、でも全く怯むことない。更にリリファさんを眺めて口笛吹いた。


「オイオイ獣人のガキがもう一匹いやがったぜ。上玉のエルフもいるじゃん」


 ニヤニヤしながらナルシュ君に拳を振りかぶる。

 悠々と避けるナルシュ君。うん毎日訓練してる成果がちゃんと出てる。


 足を引っ掛けられて盛大にすっ転んだ男は動けない様子。頭から地面に激突したから脳震盪でも起こしちゃったのかも。


「ちょっといいかしら」

「な、なんだよ」

「身体はガリガリ、でもお腹はブヨブヨ、顔は不細工で、おまけに性格も最悪と。全然駄目だね、マイナス500点」


 いきなり出てきて妙なこと口走るオランタさん。けど男達は言い返せない模様。まぁ気持ちは分からないでもない。


 オランタさんって超イケメンなんだよね。言及されちゃったら精神的ダメージは計り知れない。

 ちなみに今日の彼女は割とガチに鎧ってて戦闘状態だったりする。強そうだし威圧感パない。


「騒ぎを起こしたのは君達かね?」


 巡回の兵士さんが何人かやってきた。誰か通報したのだろう。途端に男達は媚を売るような笑顔を向けた。


「巡視兵さんよ、獣人のガキ共が因縁つけてきやがったんだ。捕縛してくれや」

「成程。では詰処まで来て貰おうか」


 兵士さんは冷たい視線を浴びせる。


 男連れに向かって。


「はぁ? なんで俺らが、いいから獣人のガキ共を牢屋にブチ込めって!」


 納得いかないからか子供みたいに地団駄を踏む男達に向かって兵士さんは静かに語った。


「お前達は街の住人ではないな」

「だ、だったら何だってんだよ」

「お前達がヴァルカンに対しどう評価しているかは知らん。だが我々の仕事はヴァルカンに住み、生活するものを護ることだ。さあ連れていけ」


 男達は悪態を吐きながらも、国家権力に逆らう胆力は持ち合わせてないよう。素直に従って連行されていった。


「嬢ちゃん達、怪我は無いか」


 ありがとうございます。

 来てくれたのが知り合いの巡回兵士さんで助かった。

 

 この人はアブルィさん。話したのは数回だけど良い人で、獣人でもエルフでも分け隔てなく優しくしてくれる、とても素晴らしい方だ。


 知り合った理由がお兄様の下半身露出じゃなければもっと誇れたんだろうけど。


「とはいえあの連中もある意味助かったろう。続いてたら、そっちの嬢ちゃんに蜂の巣にされてただろうしな」


 蜂の巣。日本ではマシンガンとかで身体中に銃弾を浴びることの喩えで使われるけど、リリファさんなら本当の意味。


「既に卵は寄生させたから。次に彼等が喧嘩を売ってきたならば瞬間、全身を内側から食い破られて、さぞかし痛くて嫌な思いをするでしょうね」


 たぶん死ぬよねソレ。不吉な暗喩っぽく言ってるけど、リリファさんは実行しちゃいそうなのが恐ろしい。


 そ、それよりアブルィさんって街の住人を全員把握してるんですね。


「違う違う、ヴァルカンで獣人とエルフの嬢ちゃん二人を知らない奴は、間違いなく余所者だからだよ。結構有名なんだぜ? 可愛い嬢ちゃん達コンビは」


 うーんリリファさんは美少女でドレスも完璧に似合ってるし。

 私も、可愛いかな。

 もっと可愛くなったら、お兄様はもっと、私を愛してくれる、のかな?






 夕方。もうピークも過ぎて人口密度は落ち着いてきている、この異世界の店じまいは早い。イルミネーションなんて洒落たモノなんて無いから。


「なあアリス」


 私達も帰ろうと、準備してたらナルシュ君が。


「見せたいのがあるんだ。2人きりで、ちょっと付き合ってくれないか」


 私にだけ聴こえる小さな声で、そう誘ってきた。

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