52話 やだ最高! 2人とも超可愛いわ
納涼にはまだ早い中途半端な時期。この世界の風俗には未だちょっと疎い。
どんなお祭りなんだろ。出店とかずらりと並ぶのかな。
お兄様は快くOKしてくれた。きっと下半身を露出して捕まって、ランキスさんが迎えにいくのだろう。
ナルシュ君と二人きり、獣人同士だし周囲からはどう見られるんだろう?
とか考えてたけど、リリファさんも一緒にお祭りを巡ることになった。
治安は多少良くなったとはいえ未だ強盗やらの犯罪は多いらしく。何よりも二人きりだとナルシュ君が良からぬ事を考えるに違いないって。
そんな発想に思い至るのはリリファさんだけだと。結局オランタさんも何故か混ざって4人で祭りを巡ることになった。
「いいアリス。ナルシュも男の子なのだから、暗がりで二人きりになっては駄目よ」
「ちちち違うし、そんなつもりで誘ってねーから!」
「あらあら。みんな青春しちゃってるわね。お姉さんも聖誕祭で格好いいイケメン誘っちゃおうかしら」
色々と入り乱れて凄い会話になってる。
翌日。ナルシュ君の洋服屋さんへと赴いた私達。せっかくのお祭りだから特別なドレスを注文しましょう、ってリリファさんが言ったから。
今日もなんやかんやで爆買いしてる。銀糸の織り込まれた絹で肌触りの良い純白のドレスとか、胸元に大きな宝石が埋め込まれたエメラルド色のドレスとか。
「どちらもアリスに似合うし両方とも購入しましょう。勝負下着も選んであげる。今宵も愛を交わしましょうアリス」
どっちもリリファさんの方が似合いそう、そうだ。
リリファさんもお祭りを巡るんだから、私だけ着飾ってちゃ駄目だよね。だからリリファさんもドレスも購入すべき!
「私は、そのドレスなんて……」
虚を突かれたみたいで動揺してる。
発言内容はともかく、普段からクールで知的で、まるで氷の彫像みたいに冷たい無表情で、声も冷静で。
発言はともかくとして、そんなリリファさんにしては珍しい反応を見せてくれた。
普段からズボンルックで少年ぽい格好ばかりしてるけど。似合ってるけどリリファさんだって凄く可愛いのに勿体ないよ。さっき私に選んでくれたドレス試着してみよう!
「やだ最高! 2人とも超可愛いわ、聖誕祭のドレスは決定ね」
オランタさん絶賛だ。うんうん私の見立て通り。エメラルド色のドレスはリリファさんが着てこそ真価を発揮する。
私の純白ドレスも、意外に似合ってる、かな? 姿見を眺める、うん、そう、悪くないんじゃないかな。
「お邪魔しますグリッドさん」
あれ、ランキスさん昼寝してない。
「ん、リリファ珍しいな。ドレス似合ってるぜ」
「私服に頓着しないランキス様から褒めて頂けるなど望外の喜びです。あと服代は必要経費なのでランキス様宛に請求して下さい」
「お前はマジ一言多いな」
何気ない会話。でもリリファさん、私は見逃さなかったよ。ランキスさんに褒められたとき頬が僅かに紅潮してたよね?
「アリス、可愛いよアリス、愛してる」
ランキスさんの隣に、お兄様も一緒?
「連れてきた。また保釈しにいくの面倒臭いからな」
ああ成る程。昼寝の邪魔をされるくらいなら、って理由か。
「次はアクセサリね。それと冠も。ランキス様せっかくですから午後一杯、付き合って下さい」
「え、俺の昼寝は」
無視して会計を済ませるリリファさん。いつも思うけど本当に奴隷なの?
「アクセサリ買うの? 私イイお店見つけちゃったの案内してあげる」
オランタさんお勧め? こーゆー方々のセンスは信用できるってのが定説だけれど果たして。
「あらいらっしゃい、ってキャー可愛い!」
予想通りというか、店長はそっち系のおネエさんだった。
立派な髭を蓄えた恰幅の良いおじさんなものだから、物凄くものすごーく違和感が凄まじい。
とはいえアクセサリ屋としての才能は確かなよう。店内のレイアウトは見事で、品揃えも豊富で色鮮やか、商品は綺麗だし埃一つない。
唯一の欠点としては値札を見た感じ、ティルの桁がヤバそうで庶民を遠ざけてそうな所くらい。
とはいえ、お兄様達の稼ぎならそう負担にはならないし、私達以外のお客さんも金持ちそうなオーラ放ってる人ばかりだ。
「素敵よアリス」
リリファさんが私を見てうっとりしてる。リリファさんも素敵だよって伝える。
勧めてくれた冠は、王様が被ってるような上部がギザギザになってる、黄金で宝石が散りばめられた様なの。豪華なんだけど仮装みたい。
なので代わりに銀色の髪飾りを買って貰った。
リリファさんと御揃いで購入したんだけど。今日の私は、自己評価ながら並んでも遜色はないんじゃないかな。
獣人の爪にもマニキュアやペディキュアも施してくれて、色もリリファさんと御揃い。
丁寧で細やかな刺繍が施されたミサンガ風のブレスレットとかアンクレットとか。最初は民族衣装っぽくてドレスに似合う? って思ったけど心配御無用、とっても素敵だった。
あっそうだ。
「ん、アリス?」
お兄様にプレゼントです。大切に使ってください。
渡したのは青いハンカチ。日本にいた頃とは違う、たぶんこの世界に来てから染まった髪色に合わせてみた。
「ありがとうアリス、ありがとう」
ヘンなことに使わないで大切に扱ってねー。そんな軽口を叩いてみようかと思ったんだけど。
とっても真剣だったから。私はただ微笑み返すくらいしかしなかった。




