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41話 団長の矜持、ってのは

 私含めた4人での会議をランキス邸にて、といっても私は殆どオブザーバーだったけど。内容はこんなかんじ。


 とある貴族がレストランにて提供するために、食用として購入したエンシェントドラゴンの幼体がいて。

 拘束して檻に閉じ込めてたんだけど破られて、警備員やら料理人やらオーナーやら多数の死傷者が出たらしい。

 

 そのドラゴンを討伐してくれってのが、お兄様達への依頼なんだけれど。

 ただ被害者にあんまり同情できないなっていう側面もある。

 

 なにせそのドラゴンって、奴隷商で一緒に売られてた、おそらくあの子だろうから。状況もマッチしているし。

 悪いけど自業自得というか因果応報というか。黙祷くらいはしてあげてもそれ以上はちょっと無理、みたいな気分だ。


 まあ会議というか仕事説明は20分くらいで終わって、そして今は装備コレクション部屋に案内されてる。


「ラズの奴隷、とりあえずジャマダハルでいいか? ナルシュの予備があるし」


 ランキスさんに、戦闘訓練したいのをリリファさん越しに言って貰うと、なんだか乗り気になってくれてる。

 

 他の種類の武器はよくわからないので、とりあえずシャマダハル。


「ちょいと手ぇ見せてみ」


 ランキスさんの手を近くで初めて見た。

 日焼けした、ごつごつと岩みたいな、古傷が沢山ある、苦労してる人の掌だ。

 定規みたいなので私の掌の大きさとか、指とか爪とか色々と測ってくれた。


「おーし、何種類か見繕ってやるよ」


 そう言って、剣とか槍とかRPGのゲームでよく見掛けるのじゃなくて。なんとも独特な形状してるのを幾つか持ってきてくれた。

 

 その中でも牙が装着されたガントレットを試しに、持ち手の布で巻いたグリップ部分を微調整してくれた。

 

 ありがとうございます。

 本当に、私なんかのために。私もランキスさんやリリファさん、お兄様のように強くなって、皆さんの迷惑にならないよう頑張ります。


「なあリリファ。俺の言葉はコイツに伝わってるんだよな」

「ええ。アリスは博識ですから。あとアリスの名前はこいつではありませんよ」


 あっランキスさんがちょっと申し訳ない表情してる。うーん私は気にしてなかったけど。


「なぁアリス。オメーがラズの奴隷ってだけでここまでやってんじゃないんだぜ。俺は向上心のある奴は大好きなんだ。努力する奴とか、将来に向けて頑張ってる奴なんかは全力で応援してやりたいんだ」


 ……。


「俺自身が貧しい農家の生まれでさ。親や兄貴の言うことは絶対だったし、読み書きすら教えて貰えなかった。せめて団員くらいには同じ轍を踏ませたくねえんだ」


 ランキスさんは憂いを帯びた視線で遠くを眺めてる。

 私は、こんなときどんな言葉を返せばいいのだろう。


「まあ傭兵やっててもキツいけどなぁ。今でこそ屋敷を借りられるくらい儲かってるけど、最初の頃は飯代すら稼げなかったからなぁ」


 そう、なんだろうな。貴族が道楽でやってるならともかくランキスさんは平民だった。

 化け物じみたパラメータだけで仕事が寄ってくるわけないんだから。


「ずーっと空腹で、その辺の雑草と泥水で食い凌ぐ毎日が続いてさ。農家やってたほうがマシだったんじゃねって、日銭を稼げるようになって多少は楽になって……。悪いな、俺だけ喋りすぎちまった。明日は討伐依頼に出掛けるんだから、お前もゆっくり休め。武具はキチンと用意してやるよ」


 もうすぐ夕方。私はお兄様の屋敷に戻る。

 ……ランキスさんも苦労してきたんだろうな。






「ランキス、考え直そうぜ。傭兵ってのは危険な仕事らしいし、この村で百姓やってるほうが安泰だって」


 村を出る前日、武器とか食料とか色々準備してたら、若者衆のリーダー格に呼び止められた。

 コイツは両親が死んでから色々と手を焼いてくれた。

 

 本当に感謝してるマジで。

 だけどコイツは、村の中の小さな世界しか知らない。

 小作農やって、貧困に喘ぎながら、死ぬまで報われない日々を繰り返すだけが本当に幸せなのだろうか。


「俺はお前の為を思って言ってるんだ。確かにお前は村一番の力自慢だし、ちょいと凄い能力を持ってる。だけど世の中ってのは甘くないんだ。いいか、こんなにも説教してくれる奴は貴重だぞ」


 一応コイツはガチ親切なんだろうな。

 けど。

 俺は外の世界を知りたい。

 俺というちっぽけな可能性を信じてみたい。

 

「悪いけどさ、もう決めたことなんだ。準備しなくちゃならねえから、もう行くわ」


 もうソイツは何も言ってこなかった。見送りに来たのはソイツだけだった。






「ランキス様、夕食の用意が出来ました。此方にお持ち致しましょうか?」

「いや、リビング行くよ。ありがと」


 ラズの奴隷にやる練習用の武器なんだけど。

 この手甲殻はもうちょい微調整してやらないと。ちゃんとしたのじゃねーと変な癖とか付いちまうからな。


「あまり根を詰めすぎないようにお願いします。出立は明日の昼ですから」


 それだけ言ってリリファは先にリビングに戻った。


 今日は仕舞いにするか。

 

 俺はチームランキスの団長。

 もう俺だけの身体じゃない。守るべき団員を背負ってるんだ。


 団長の矜持、ってのはカッコつけすぎか?

 

 まあどいつもこいつも、そうそう簡単にくたばるような連中じゃねーし。

 さて。

 メシ食うか。

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