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鳥居をくぐったら、森の主になりました  作者: 千羽鶴
第七章 魔国編
113/114

113 貸したものは返しましょう



「キグミー、あなたは何者なんですか。幻空内にはじめから入ってたわけじゃないのに幻空がとけてない。

幻空外から幻空内に誰かが入ったら解けるのにキグミーが入ってきても解けない」


目の前にいるキグミーはわからないことが多い。

わかってることは、喋れない、陽気で明るい性格、たまにイタズラする

どこの地区にも住んでないからブローチはつけてない。

いろんな場所で過ごしていて、寝る場所もいろんな場所。

なぜか主殿に入れる、むしろ色んなとこに入れるのか?


「しかも、鑑定しても『キグミー、ウサギの着ぐるみ』としかでないんですよね…」


じっとみてたらもじもじ恥ずかしそうな動きをしてるキグミー。くねくねしてたらコンとソラの拘束がはずれる。

すると、何かを差し出すように拳を前に差し出してきた


「なんですか?」


両手を皿のように差し出すと、キグミーがその手に握っていたものを落とす。

チリンっと、聞いたことのあるような音がして、手のひらをみると、そこにあったのは一つの鈴。少し大きめの鈴で見覚えのある鈴だった。


「……月鈴(げつりん)


祖母が持っていた神楽鈴の名、月鈴。

神楽鈴(かぐらすず)とは巫女が神楽舞(巫女舞)を舞う時に持つ鈴で。 シャンシャンときれいな音色が特徴的な鈴だ。

祖母は巫女ではないけれど、月鈴と名をつけた神楽鈴を持っていた。

祖母が持っていたこの神楽鈴は、魔除け鈴として持っていたものだ。

元々鈴には魔除けや神様を呼ぶ効果があると言われている。神社で鈴を鳴らす意味もこれだ。

この鈴は私の誕生日や怪我をした日、祝い事、災い事、そういう日によく鳴らしてくれた鈴で、全部の鈴に月が彫られている


新月(しんげつ)

月は描かれていなく、星が描かれてるらしい。この鈴は祖母の手元になく、無くしたと聞いた


二日月(ふつかづき)

日が沈んだあとに浮かぶ、糸のように見えることがある細い月が描かれている


三日月(みかづき)

さまざまな物語や歌に登場する有名月。日没後の西の空にかかります。その細く輝く姿から「月の剣」とも呼ばれてるらしい。


上弦(じょうげん)(つき)

美しい姿を弓に張った弦になぞらえ、弦月げんげつ弓張月ゆみはりづきと呼ばれてる月だ


十三夜月(じゅうさんやたき)

十五夜の月に次いで美しい月といわれてる月。これから満ちる、縁起のよい月だ


小望月こもちづき

満月への期待をふくらませ、先人は前夜の月に名前を付け、愛でたらしい


十五夜(十五夜)のつき・満月

一晩中、夜道を明るく照らすのが満月。月見がしたくなる月だ


十六夜月いざよいづき

「いざよう」とはためらうという意味。十五夜よりやや遅れて出てくる


立待月たちまちづき

「今か今かと立って待つうちに月が出る」といわれたことから名付けられた月


居待月いまちづき

月が出るのを、居間などに座って待つという意味の名前が付けられている


寝待月ねまちづき

月の出が遅く、寝て待つほどという意味から寝待月と呼ばれている


更待月ふけまちづき

月の出が遅く、夜更けまで待ってようやく出てくる月


下弦(かげん)つき

真夜中に昇り、昼ごろに沈むため、夜明け以降の青空に見えることがある月


(つごもり

月が隠れる、月の末日。月が掠れるように描かれている


そして、神楽鈴は15個鈴がついている。

祖母は月鈴には新月ともうひとつ無くした鈴がある、その鈴には太陽が彫られていると教えてもらった。


そして、手のひらの上にある鈴には太陽が彫られていた


「なんでこれをキグミーが持ってるんですか?」


そう聞くがキグミーはなにも答えない。手のひらの鈴転がす。この神楽鈴との思い出はしっかり覚えてる


小さい頃、家の近くの森の中で迷子になったことがある。

怖いものしらずの子供時代、祖母の持っていた押し花の花を探したくて森に入ったのが始まりで。

辺りはだんだん暗くなって不安で、けれど月明かりだけはとても綺麗に輝いてたのを覚えてる

日が暮れ、周りは森で月明かりをたよりに道もわからず歩いてたら

シャン、シャンっと、鈴の音が森に響き渡ってきた。その鈴の音を追いかけるみたいに月明かりが照らした道を歩いていくと、いつの間にか家まで戻ってきてて、家の前では祖母が月鈴をシャン、シャンっとならしてた。

おかえりなさいっと言って微笑んだ祖母に、ただいまっと言ったのを覚えている

落ち込んでるときも嬉しいときも、祖母はシャン、シャンっと鈴を鳴らしてくれた。

だから、全部の鈴が揃ったらすごく綺麗な音なんだろうなと思ったけど、その無くなった二つの鈴はどこにもなくて

ひとつは新月の鈴、月は見えないが、星が綺麗に見えることから星が彫られた鈴

そして、もうひとつ。月は太陽がなければ光らない、月と太陽は対の存在

だから月の中に一つだけ太陽が彫られた鈴があるのだと祖母は言っていた。

新月の方の鈴はいつの間にかなくなっていたらしい。

太陽の鈴は…


「お友達に貸してるって言ってたんですけど……いやいや、まさかね…その友達がキグミーとかありえませんよ」


だってまず、世界が違いますし。まさかそんな、ねぇ。なんだろ、なんか変な汗が出てきたんですけど


「やめて、両手で手を繋がないで、待ってた旧友みたいに肩とか組まないでいただけます?絵面的にキャ○テ○翼の肩組みたいなことになってるんで

ああ、こんなことしてるうちに弾き出される時間!」


その瞬間、ぞわぞわと肌で感じていた魔気の気配が、まるで蛇口を捻った水道のように溢れるのをかんじとった。幻空の中に居たのに、だ


「弾き出されなかったけど、これは…」


「五十鈴はん、閉まっとるよ。まだ開ききっとらん、全部やない、なにがおこっとるんや…」


肌で感じる、魔国の中で溢れるように魔気が充満しているのを感じる。



「弾かれないことに喜んだらいいのか、呼ばれてもいないし招待はされてないのに、無理やり誕生日パーティーとかクリスマスパーティーとかに割り込む感じで入れたことに驚いたらいいのか…」


《魔国に来た時、子供達にあげた飴はそこまで量はなかったので効果は出ませんでしたが、棒のほうは効果が出ています。先ほどのコロッケのおかげで弾かれずにすんだようです》


魔国に私の…いや、桜国の物を入れたことによって無理やり弾き出せないように会場入り

実は、魔国にはじめてきた日に子供にあげた飴。あの飴の棒のほうは特殊だ、棒部分は飴をなめ終わると勝手に消えるように魔法で工夫したっていうのは嘘じゃないけど、消えた棒は魔国の地面などに細かい粒子のように

付着する。害はないしなにもないけど、今回はやくにたったみたい。

リーナが魔国に行くならって作ってくれたもので、魔国には魔気が充満してるって聞いて、桜国の魔力もあった方が危険が少なくなるかもって作ってくれたけど、違う意味で役に立ちました。

飴もコロッケも桜国の作物を使ってるから、それを食べた魔国の人とまざりあって招待されてないけど、無理やり割り込むことができたらしい


「おかげで弾き出されずにすみました。幻空のおかげで私達は寝てるように見えてるはずですけど。最初にどうにかしないといけないのはやっぱり…」


「そうやね」


「◎」


そろ~りと逃げようとしてるキグミーを正座させ、朝つけていたプラカードを首からかける


「仮にこの鈴を私の祖母がキグミーに貸していたとして、なんでこの鈴を渡したのかだけど。この鈴に彫られているのは太陽。そして、この国の主と妹弟は太陽から生まれたといわれている。

この鈴には意味があるかないかって言われたら、あるってこと。おばあちゃんが貸したってことは何かあるかもしれない」


なぜこの世界に祖母のものがあるのか、なぜキグミーと会ったことがあるのか

そして、魔国にきてから思い出す思い出もだ。忘れなさそうなことを忘れてた。

そして、この国に来てからその思い出を思い出しはじめてる、絵柄のないパズルに絵柄をつけ嵌め込んでいくようにだ


「いいよ、信じるよ。この鈴が傷もなく無駄に艶々なのは毎日きちんと磨いてたから。いろいろ剥げなくてよかったけど、つやっつやすぎてなんか逆に嫌なんですけど」


ペカーっと光を放っている鈴。魔国に来てから近くに居たのはこのキグミーだけってことは、祖母についてしってるのもこのウサギのキグミーだけなのかもしれない。


「とりあえず、夜があけるまえにどうにかしないとですけど、扉も窓もないんですよね…」


先ほどまであった扉と窓ががなくなってる。完全なる密室。脱出ゲームみたくなってる


《完全には入れていないので、夢という場外には弾き出されませんでしたが、今はこの部屋にしまわれているようです。

壁を壊した場合は弾かれる可能性があります》


扉があった場所を見る、壊せるけど壊したら場外に弾かれる…コンの化かしを壁に使っても弾き出される可能性がある

どうしたものかっと、部屋を見渡す。

唯一この部屋で魔国から弾かれないのはキグミーだ。これが脱出ゲームだとして、アイテムがあるとすれば…


「…チャック、開けるか」


ビックゥっと、飛び上がるキグミーの背後に素早く回り込みチャックを掴もうとしたが指の先に何かを掴む感触が伝わってくることはなかった。


「つかめない…もしかして。弾かれるっていうのは、この時間の魔国に関する全ての事から弾かれるってこと?」


でも、キグミーには触れる。ためしにキグミーの頭をぐりんぐりんとなでまわす。しっかり触れる


「昼間ならチャックも触れますかね?」


そう聞くとキグミーは首を左右におおきく振る。昼間もチャックは触れない。

ほんとに脱出ゲームみたいだな…。でも、この時間に無理やりだけど入れたのは昼間の行動があったから…

この部屋からでる方法も何かあるかもしれない、招待されてないってことは、招待される条件があるはずだ。

それがわからないと話にならない。

ゲームとかでアイテムを集めないとストーリーが進まないのと同じことだ、アイテムを持ってないで特定の相手に話しかけてもなにもおきないけど、必要なアイテムを手に入れてから同じ相手に話しかけると違う展開になる。

私はそのアイテムになる何かがないんだと思う…



………よし、寝るか。

諦めって大事だよね。多分今日できることはないのでとりあえず寝る。

ホットミルクのせいなのか、コンとソラがうとうとしてるし


寝よう寝ようと、いそいそとベットに入ったのはいいんだけど


「狭いんですよね…」


「キグミーはん、どきぃ」


「××」


右にキグミー、左にコン、頭上にソラ。しかも全員が密着してきてとてつもなく狭い。

ぐぐっとキグミーを押すがいやいやと首をふる、着ぐるみの頭が擦れて痛い


「わかってます?私今、ベットとベットの境界線に寝てるんですけど。

それと、キグミーの目が開きっぱなのすごく怖いんでやめてください。見つめるな

着ぐるみだからしかたないんですけど、せめて向こうみません?向く気はないと…じゃあ、コンのほうを向いて寝るので大丈夫です…あの、肩をつかまないでください、絶対にそっちを向いては寝ませんからね。自分の顔面の圧を考えてください」


騒がしい気配を背中に感じるが無視してコンにくっつくと、ふわふわ暖かくてすぐに眠れそうだ。

逆に、静になったキグミーが背中にぴとっと張り付く。キグミーからは体温は感じない。着ぐるみの人工的なふさふさだけ感じる


キグミーが勝手に部屋に入って勝手に抱きつくのは、体温が恋しいからなのかもなぁっと思ってる間に、夢の中へと沈んでいった




********





夢を見ている…でも、この夢は私の夢じゃない


草木の揺れる音がする

誰かが話す声がする


誰にも何にも気付かれずただ、過ぎ去る時間

その時間が唐突に終わりを告げる、眩しすぎるほど光とともに


「あなたたちはなにもの?」


小さい女の子の不思議そうな声がする


「どう、可愛いでしょ。?着てみて、貴方達のために作ってもらったの。あなたウサギさんね

そして、あなた達の名前は今日からキグミーなんてどうかな?」


光がまばゆくて、目の前にいる人物は見えないけれど、鈴をころがすような声の女の子だ。

女の子から差し出されたのはキグミーの着ているウサギの着ぐるみだ。

それを着たキグミーが目の前の子を抱き締めている。

暖かいと感じる感情が自分のものであるかのように感じられる。

嬉しい、優しい、暖かい、柔らかい感情ばかりを目の前の子からとめどなく貰っているのがわかる。


そんな感情のまま時間がゆっくりと過ぎていく


「キグミーも一緒に行きましょう。今日は花贈りの日だもの、楽しまなきゃ」


見えないけれど、笑顔で語りかけてくるのがわかる。前の時より、少し大人びた声だ。キグミーの手をひいて歩いていく、楽しいという感情を感じる


「あのね、キグミー。この鈴を友達の貴方に預けたいの。でも、返すのは私じゃない。

その相手は現れないかもしれないし、現れるかもしれない、でも見たらすぐにわかるのはキグミーもわかってるでしょ。

私はこの国を救えない、その強さを私は持ってないから。

次もだめかもしれない。でも、もしかしたら変わるかもしれない。

キグミーが決めて。キグミーがこの人ならって思ったらでいいの。

お願い、キグミーしか頼めないの。この国でキグミーだけが……」



そこからは悲しみ、寂しさ、少しの怒り。そんな感情が渦巻いていて。

女の子と居た時の感情が次々思い出せぬまま時間は過ぎていく。他のキグミーは色んな人と触れあっているが

このキグミーは誰にも触れない、大切な友達との思い出がなくなってしまう気がしたから


そんなある日、魔国の門の先に求めていた何かを見つけた。

急いで門を開き、手を伸ばし逃がさないように強くつかんだ


叫ばれた時の感情……歓喜






















































































寒くなってきましたね。体調には気を付けて過ごしてください。



巡りあったよゴリラチョコォオオオオオ。

となりに狐のイラストが描かれた缶チョコがあったので、そっちに目移りした私を許してくれ



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