砂漠の中の、小森と小海。
「暑い……」
ルビーの背に揺られて灼けつくような日差しに耐えながらスミちゃんを抱え込む。
『(そんなに暑いか? 我には涼しいくらいだが)』
火を扱う紅竜と人間を一緒にしないでくれるかな?
エンリルもご機嫌で、時々虫みたいなものを食べているのが辛うじてうかがえる程高く飛んでいる。
ネチスタの木を降りてからは、砂漠みたいな砂地で、オアシスのように至る所に小さな森が点在していて、吹き抜ける風にスミちゃんは気持ちよさそうに目を細めている。
「皆こんなに暑いのに平気なの?」
今だけはルビーのふわふわの毛が憎い。
一番最初にここに来た時、ルビーと逢った洞窟の外は春みたいに穏やかな気候だったのに、ここは真夏みたい。地球みたいに緯度経度の問題なのかな? 東京から沖縄くらいの距離を移動したとは思えないんだけれど……。
『(あの辺りはトリシャの管轄だからだ)』
ルビーがそこはかとなく呆れ切ったため息をつきながら説明してくれる。
『(地には守りとなる者が存在する。その者の加護で、生きるもの全てが平穏に暮らせるのだ。守りが居ない地は荒れ果て、とても住めるようなものではない。……我らの故郷のようにな)』
なるほど。RPGあるあるだね。ルビーのお里も、紅竜しか行けないって言ってたものね。
『(そして、守りの者の属性に土地は左右されるのだ。トリシャは地と森の属性を得ているからな、比較的穏やかで住みよいと言われている)』
住みよい!
『(どうしたのだ? 急に高い声を出して)』
ごめん。私の世界のテレビ番組に出てた芸人を思い出しただけ。ううう、こっちじゃお笑いなんて言うのも無いんだろうなぁ。
『(ネチスタの木を降りてから、この辺りは代わっていなければソルトの管轄だ。ソルトは我と同じ火を扱う者だからな。人間族には少々暑かろう)』
納得。それでこんなに暑いのか。身体がおかしくなっちゃいそう。もうだめだ!! ルビー! 次のオアシスで休もう、休まないと私倒れちゃう!
ルビーはまた深くため息をついて、少し進んだ所にあった小さな森のひとつをチョイスして、止まってくれた。
………………………………
小森の中には、猫の額ほどの池があったから、そこで休憩することにした。
池の水は透き通っていて、まるで小さな海のように魚のようなものも泳いでいるのが見える。
「すごく綺麗だね!! このお水、飲めるのかな?!」
手ですくうと、きらきらと陽に照らされて輝いている。私が少し口をつけるのを、ルビー達はにやにやしながら見ている。
「ブハッ!」
……! しょっぱい!!!! なにこれ、本当に海みたい!!!!
『(ソルトは昔から海が好きだからな。と、言うか海で捕れるものが好物なのだ)』
ああっ!! 本当だ。よく見たらマグリルみたいなのが泳いでる!
「早く言ってよ、そういう事は……。スミちゃん? 目が三日月になってるよ。もしかしてスミちゃんも知ってたの?」
【……】
何も言わず、目を三日月にしたまんまモチモチと去っていく辺り、知っていたんだろうな。皆、私で遊ばないでよねっ。
『主ー! お腹すいたー!!』
エンリルがヒューッと降りてきて、水面に居た小さな魚を上手にくわえて捕まえた。
「本当だね、お腹すいちゃった。ご飯にしようか~」
小さいながらも海もあるし、何を作ろうかな。




