双陽の旅路。
光が収まると、目の前には何も変わらないスミちゃんが居た。いや、何も変わらないと言ったら語弊があるかもしれない。スミちゃんの額に私のキスマークが浮かんでいる……。
「え、なにそれ」
『(イオリはテイマーだからな。契約した魔物にはテイマーの印が刻まれるのだ)』
「のだ、ってルビーには無いじゃない」
そう、ルビーの身体には私は触れていないし、気づけば契約を結んでいたからね。
『(我はイオリに契約されたのではない、友達になったのだ)』
違いがよく解らないよ……。契約ではないけれど、一応従伴にはなっているって事なのね。
私以上にキョトンとして様子をみているエンリルがようやく口を開いた。
『スミちゃんも一緒にいくの? これからずっと一緒なの?』
そうだよ。一緒に旅をしていくんだよ。私だけじゃなく、これからはスミちゃんも守らないといけないんだよ。出来る?
エンリルは一層嬉しそうな顔をして、うん! と強く頷いた。
そういえばスミちゃん、あんまり喋らないけれど言葉を持たないわけではないみたいだから、リンクは不要なのかな?
【……不要です。わたしの思念通話が通じるのはエンリルを含め限られていますが、従伴契約でイオリ様とも通じるようになったので】
おおっ、凄い流暢に喋るんだね! エンリルがまだまだ子供なのが解るなぁ。
『(生まれて何年経っていると思っているのだ。エンリルと比べてはスミがむごいぞ)』
それもそうか。見た目が可愛らしいから、ついね。従伴の契約のせいもあるのか、苦手だったスミちゃんのぷにぷに芋虫姿が愛らしく思えてきたぞ。
『(さあ、旅を続けよう。エンリル、うまそうな葉をイオリと何枚か見繕って来るのだ)』
『はーい! 主、こっちに柔らかい葉が生えてるよ!』
そうしてエンリルと、柔らかそうな葉っぱを何枚かアイテムインベントリに放り込んで、旅支度を整えた。
……………………
「そういえば、次はどこに向かうんだっけ?」
ルビーの背に乗って、スミちゃんを抱えて問う。ネチスタの木の太い枝を駆け抜けながらルビーが答える。
『(岬のダンジョンに行くと言っておいたであろう。まだ在るかは解らぬがな)』
あ、そうだった。最南端のダンジョンって言ってたもんね。まだまだ先は長そう。
『(しっかりしがみついていられるのなら、もう少し速く走りたい所なのだが)』
スミちゃん抱っこしているから無理だもの。いいよ、このスピードで。じゅうぶん早いよ。
フスッと鼻を鳴らして、ルビーはまた黙々とひた走る。
繁った葉の隙間から、おひさまの光がきらきらしてとっても綺麗。でも、何だか……四方八方からおひさまに照らされている気がする……。
【イオリ様、現在ここらは乾季なので双陽なのです】
双陽……。太陽がふたつあるって事?
『(そうだ。この世界は太陽はふたつ重なって昇る。そしてこの周辺では今の時期だけ、共に昇る陽にズレが生じて、双陽になるのだ)』
おひさまがふたつ昇るってすごいね! お洗濯物がよく乾きそう。
『(イオリの世界は太陽はひとつだけだったのか?)』
うん。太陽も月も、ひとつだけだったよ。
割りと普通に生活しているからあまり気にはならなかったけれど、やっぱりここは異世界なんだなぁと、改めて実感しながら旅路を進んでいくのでした……。




