別れと、契約。
翌朝、マシュさん達と別れて、私達は旅の続きに出る事にした。別れ際にモーリーさんから、透明な石のようなものを手渡された。
「これは何でしょうか?」
どこかで見たことのある、透明な石。どこで見たんだっけ。
「それは離れた場所にいる相手に、何か知らせたい事がある時に使用するものです。こう、魔力を込めながら、伝えたい事がある人を思い浮かべながら握るとですね……」
モーリーさんが実演して見せてくれる。ぎゅっと握った石が淡く光り、親指の先ほどの光がふわりと出てきた。まるでホタルみたい。
「私はモーリー・アロン。アウロラの領主の息子です。今はネチスタの木に居ます」
ホタルにそう話しかけると、空へと放つモーリーさん。しばらく上空を舞って、私の所にホタルが落ちてきた。
ホタルはふわふわと浮いたまま、私の顔の前で先程のモーリーさんの言葉を復唱した。まるで録音したように、モーリーさんの声で再生された瞬間、ホタルはフッと消えた。
「ホワイビーといって、魔物からドロップするものなのですよ。一度きりしか使えないのですが、なかなか高価なので、緊急連絡用といった所ですかね」
「そんな高いものをいただいてもいいのですか?」
もし、父を見かけたら連絡を下さいと笑って、モーリーさん達は去っていった。マシュさんからは、アウロラで採れたミオレの実の皮を乾燥させたものをいただいた。昨日の串焼きにかかっていた柑橘系のやつだね! ミオレの実ってどんなのなんだろう? 機会があれば見てみたいな。
ミュゼさんは別れが寂しいと、涙を浮かべながらマシュさんに引きずられて行った。まるで妹が出来たみたいで楽しかった。
三人が見えなくなるまで見送って、私達も旅の続きの準備を始めた。
『(さて、我らも旅路を進めるとしようか)』
そうだね。木の葉っぱを何枚かちぎってアイテムインベントリに入れて行くから少し待ってもらえるかな?
『この葉っぱ、本当においしいんだよ!』
エンリルがばさばさしながら熱弁している。まあ、確かに少し苦味はあるけれど、焼いたら美味しかったな。アクの強い青梗菜みたいな。
『(で、イオリ。スミはどうするのだ?)』
……考えてなかった。どうするのだ? って言っても、スミちゃんの意志が優先だよ。エンリルの隣にいるスミちゃんのそばへしゃがみ込むと、スミちゃんは顔を上げて首を傾げた。
「スミちゃん、私達目的があって先に進まなきゃいけないんだ」
ジッと私を見つめるスミちゃんのつぶらな目。
「それで、もし、もし良かったら一緒に旅をしてみないかな? 私の目的が果たされるまでになるんだけれど……」
スミちゃんは目をまん丸くさせて私を見つめ、まあるい瞳を三日月のようにして笑った。
【貴女を主と認め、貴女の目的果たすまで、従い伴う事を誓いましょう。ここに従伴の契約を】
あの上品な声の持ち主はやっぱりスミちゃんだったんだね。ん? スミちゃんが頭を突き出して何かを待っている……。どうすればいいんだろう。
『(スミがイオリのものになるという契約だ。触れるなり、焼印を入れるなりするのだ)』
焼印って……。でも、ただ触れるのも芸がないよね。スミちゃんは女性だし、よし。
スミちゃんが突き出した頭に軽く唇を触れると、薄い緑色の光に包まれた。




