ぼんじりと、ネギマ。
脂の焼けるいい匂いが広がって来て、皆のお腹が大合唱を始めた。
「お腹空いたよー! ねえ! マシュ! まだなのー!!!!」
待ちきれないと言わんばかりに足をばたばたさせて暴れるミュゼさん。
「もう少しだから、静かに待ってろ」
もうすぐ出来上がるっぽいから、ミュゼさんにトドメをさそうと思います。
準備しておいたフライパンを焚き火にかざしてしっかりと熱する。う、いつも小さなカセットコンロで料理しているから、フライパン持ったまんまってキツいかもしれない……。
『(持っていればいいのか?)』
ふわふわした長い尻尾がフライパンの取っ手にくるんと巻き付く。この美しい純白の尻尾はルビーさん、あなたですね。
『(おだてても何も出ぬぞ。イオリ、早く作ってくれ。腹が減って死んでしまいそうだ)』
あ、はい。ルビーのお腹が凄い音をたてて鳴っている。これはちょっとやそっとの量じゃ満足しないかもしれないな。
「イオリさん、それは何という器具なのでしょう?」
モーリーさんがしげしげとフライパンを覗き込む。こっちの世界ではフライパンって無いんだっけ?
「私の国の調理器具です。フライパンと言うんですよ」
「ふらいぱん……鉄鍋なのですね」
じっと見つめられながらの料理ってなかなか緊張するなぁ。切り分けておいたもも肉をフライパンに放り込むと、ジュワッといい音をたてながら煙が上がる。
ルビーにフライパンを振ってもらいながらお肉にしっかり火を通す。こんがりと色味がついてきた所にすかさず合わせダレを絡める。砂糖醤油の焦げる匂い、食欲そそるー!
「イオリ! 何それっ! すっごくいい匂いがする!!」
ミュゼさんが寄ってきた。
「もうすぐ出来上がるよ!」
くつくつとタレが煮詰まって来たら、出来上がり!! イオリ特製、もも肉のこっくり甘酢醤油!
「よし。こっちも丁度焼けたようだ。さあ! 飯にしよう!」
エンリルもスミちゃんも、皆で焚き火を囲んで夕食タイム。ネチスタの大きな葉っぱをお皿がわりにして、串焼き鳥を取り分けてあげると、凄い勢いで食べ始めた。
「あぁー美味しーい!! 何でサースコッコってこんなに美味しいんだろう!!」
ミュゼさんが両手に串を持って食べている。本当に好きなんだね。
「んんっ!? イオリさんの作った“アマズジョーユ”とっても美味しいですね! 控えめな酸っぱさと、甘じょっぱい味がサースコッコの肉にとっても合っています!」
「本当だ。これはうまいな。調味料も故郷のものか?」
「そうです。お口に合いましたか?」
マシュさんのお皿が空っぽなのが全てを物語っているんだけれどね!
それにしても……ルビーとエンリルとスミちゃんは何も言わずに黙々と食べている……。脇目もふらずにひたすらに……。
「み、皆、美味しい?」
声を掛けると、コクコクと首だけでお返事。口の中いっぱいにお肉を詰め込んでいるせいで喋られないご様子です。
マシュさんの作った串焼き鳥、私も食べてみよう。脂のしたたるぷりんとした串は多分ぼんじりかな? 熱々のぼんじりをかじると、脂がじゅわっと広がってとろけるような食感……! ほんのりと柚子みたいな香りがする。
「マシュさん、この串焼きいい香りがする……」
「サースコッコの肉に合うだろう? アウロラで採れる果実の皮を乾燥させたものを振りかけている」
脂がこの柑橘の香りでさっぱり食べられて、とっても合うし、止まらない!
「アタシ、イオリの作ったやつがもっと食べたい! これ、すごく美味しい!」
結構沢山作ったと思ったんだけどな。でも目の前でアイテムインベントリ使うわけにもいかないし……。
「ミュゼ、無理を言うものではありませんよ。旅の道中、食事の大切さはマシュを見て理解しているでしょう」
しょんぼりしてミュゼさんが 「はぁい」 と返事をして、焚き火へと向き直った。
もも肉の間に挟んだネチスタの葉も、おネギみたいな味で本当に焼き鳥みたい。ビールが欲しくなっちゃう。
『主ー! これ、これがすごく美味しかったのー!!』
エンリルがばさばさっと私のそばに来て、くちばしに咥えた葉っぱを見せる。かなり気に入ったみたいだね。ここを離れる時は、葉をアイテムインベントリに入れていこうかな。
皆で口いっぱいに頬張って、いっぱいあったサースコッコのお肉をあっという間に完食したのでした。
8月から書き始めたこの小説、相も変わらず思いつきでの連載で、読んでくださっている皆様にも随分ご迷惑をおかけしている事と思います。本年は本当にお世話になりました。私の仕事柄、年末年始や土日祝日が関係ないため、引き続き連載は不定期になってしまいますが、これからもどうぞ宜しくお願い致します。
皆様良いお年をお迎え下さい。




