マシュさんの、解体講座Ⅱ。
グロ描写続きます。苦手な方は飛ばしてくださいね。
「無理をするなよ」
マシュさんが内臓を取り除きながら声をかけてくれる。見た目は鶏と似ているのに内臓はずいぶん違って、胃らしきものは3つあるし、よく解らない臓器が沢山ある。
「内臓は食べたり出来ないんですか?」
スミちゃんがとっても綺麗に血抜きをしてくれたお陰で、本当に内臓を取り除くのが楽だ。日本だとレバーとか食べたりするけれど、どれがレバーなのかは一向に解らない!
私の質問に、マシュさんは答えてくれる。
「サースコッコはこの木の葉を好んで食うが、自分の縄張りに近づく人間や魔物も襲って食うんだ。葉だけを食べている個体の内臓は葉の良い香りがしてうまいが、他のものを食った個体の内臓を食うと体調を崩す。食うまで見分けがつかないから、そういったものは初めから食わないようにしている」
なるほど。危険が少なからずあるものは口にしないという事ね。
「脚の部分の関節を逆方向に折ると簡単に取れるから、やってみるか?」
よしきた。グロいけれど、もうだいぶ美味しそうなもも肉に見えてきたぞ。
ベキベキっと骨の折れる嫌な音がする。ごめんねサースコッコ。美味しく食べてあげるからねっ!
「うまいもんだな。どこかで解体を習った事があるのか?」
「えっ、ええ、まあ……」
今さばいているものよりも遥かに小さいものですけどね。
「よし。後は身体の部分を細かく切り分けたら解体は出来上がりだ」
真っ二つに開かれたサースコッコの胴体部分ですね。
解体作業が苦手なのか、ミュゼさんはあさっての方向を向いてモーリーさんと話をしている。その傍らで、ルビーは丸くなって目を瞑っている。その、口元のよだれの海は、見なかった事にした。
「脂で剣が切れなくなってきた。研ぐから少し待っていてくれ」
マシュさんの大きい剣が脂でテラテラしている。その大剣を研ぐのも大変そうだ……あ!
「私、ナイフを持っているので、指示してもらえばさばきますよ」
今こそスミちゃんに拵えてもらったナイフの出番だと思うの!
「サースコッコの肉の脂はすぐに切れなくなってしまうぞ? いいのか?」
「最高の鍛冶職人に打って貰った品です。大丈夫だと思います」
腰に下げてあった鞘から包丁を引き出すと、シュリン! と良い音を立てた。
「じゃあ、まずは脚の付け根、尻尾が生えていた辺りの肉を切り取ってくれ。ここからここまで、だ」
丁寧に指し示してくれた通りに、ゆっくりと刃を入れて切り進める。
「うわ……!」
刃先に全く抵抗がなく進む! プリンを切っているみたい! スミちゃん、すごい!
「良いナイフだな。切り口が潰れていない」
マシュさんもほれぼれするほどの切れ味。
「次は胴の前面だ。ここから刃を入れて、まっすぐ切ってくれ」
胸肉ですね。ここは脂も少なくて、お肉じたいもピンク色のしっとりした感じだ。スイスイと刃を進めて切ると、大きな胸肉が出来上がった。
「今切り取った所の、少し下側が一番脂の少ない部分だ。切り分けておいてくれ」
ササミの部分かな? よし、出来た。
「後は翼の部分だが、皮は臭くてマズいから全て剥ぐぞ」
皮、食べられないの? 皮せんべい大好きなのに~。残念。マシュさんと黙々と皮を剥ぎ取る。脳内で剥ぎ取りチャンスの音楽が流れてニヤニヤしていたら、マシュさんに訝しげに見られてしまった。
「凄い脂だな……。後は翼の部分を三等分すれば出来上がりだ。もう少しだ、頑張れ」
指示された通りに、手羽元、手羽中、手羽先に切り分けた。スミちゃんに造ってもらったナイフは最初から最後まで切れ味が変わらないままだった。
マシュさんが油落としに研いでくれるというので手渡した。
初めての解体は、マシュ先生のお陰で上出来だったな!
目の前に積まれたお肉の山を見て、そう思った。




