第194話 王都への道 ⑥
サロメが賊の討伐を告げた後、メリザンドが両手に縛られた賊の足を引き摺り、その後ろをセルマも同じように賊を引き摺ってきた。
「賊を4人捕らえましたけど、こいつ等どうします?」
他は?と問い返しそうになり、咄嗟に思い止まった。
捕らえたのは4人と言う事は・・・まぁ、察しろと言う事だろう。
「あ、あぁ、ありがとう」
そう言うと俺は「無限収納」から首輪を二つ取り出し、引き摺られていた賊に近寄り無造作に首輪を嵌める。
「「はぁ?」」「「な?!」」
恨めし気にこちらを見ていた賊たちの表情が驚愕に変わる。
「奴隷である貴様等に命じる!
1つ、自殺を禁じる!
2つ、逃亡を禁じる!
3つ、暴言、暴力、その他、あらゆる犯罪行為を禁じる!
4つ、嘘を吐くことを禁じる!
5つ、俺の質問に対し、沈黙する事を禁じる!
6つ、俺の命令に対するあらゆる抵抗を禁じる!
以上を厳守しろ!」
俺の言葉に賊達は反論しようと口を開いたが激痛に顔を歪め、身悶えする。
「あのぉ、それって『奴隷の首輪』では?」
「そうですけど、何か?」
『奴隷の首輪』はそれなりに取り扱いが厳しい物であり、無造作に楽太郎が使った事で驚きのあまり出てしまった発言だったが、「いえ、何でもありません」と反射的に前言を撤回した。
逆にジャネット以外の同行者は首輪よりも楽太郎が次に起こす行動に注視していた為、ジャネットの行動にサロメ以下楽太郎側の人間がジャネットに警戒の視線を向ける。
その様子を敏感に感じ取ったジャネットは冷や汗を流して慌てて弁明する羽目になったが、楽太郎は突然の弁明に困惑し、奴隷の首輪を使った理由を簡単に説明する。
「拷問とか面倒でしょう?
これなら口だけで多少抵抗するかもしれませんが大幅に時短できるんですよ。
と言う事で、質問だ。
略奪以外の目的はあるか?」
楽太郎の端的な質問に無視を決め込もうとした賊達が数秒もしない内に苦悶の声を漏らし、30秒もしない内に慌てて「ないない!略奪以外の目的なんてない!」と答えるが直後に激痛が走り絶叫を上げる。
「答えないだけでも激痛が走る。
その上嘘を吐けば痛みは倍増だ。
俺の命令を破れば破るだけ痛みは倍々に増えて行くから気を付けないと大変なことになりますよ?」
楽太郎はニッコリとした笑顔で伝える。
「では、質問を続けます。
あなた方は誰かに何かを依頼されていますか?
または頼まれ事はされていませんか?
もしくは人探しをしていませんか?」
その質問に賊は「なんで知って」と言いかけ、痛みが走ったのか慌てて「頼まれた頼まれた!頼まれたよぉ! ウェルズの街にいるラクタローって奴を消せってよぉぉぉ!」と答えた。
答えた賊は荒い息を吐き、ジャネット達は言葉を失う。
そんな中、嫌そうな表情で楽太郎は呟いた。
「やっぱりあいつ生きてやがったか」
そう溢した楽太郎の脳裏に浮かんだのは悪魔ギルゴマだ。
容赦なく処理したから大分恨みを買っているのだろう。
「はぁ、面倒な方向に転がっている・・・
こうなると変装ももう少し何とかしないと駄目か?」
考えに耽ろうとした楽太郎だったが、賊の命乞いの言葉に思考を中断させられた。
「なぁ、助けてくれ!頼む!金輪際盗賊なんてやらねぇ!
う、うぎゃぁぁぁ!」
「そ、そそそ、その通り!これからは真っ当に生きて・・・痛ぁぁぁぁ!」
そう言って悶絶し、自爆する賊達。
・・・
「呆れるほど馬鹿ね」
サロメのその一言に尽きた。
その後も賊達の尋問を続けると賊達はあっさりと拠点の場所を吐いた。
奴隷の首輪は本当に便利だ。
「それじゃ、賊の拠点を潰しに行きますか」
気負う事もなく淡々とそう述べる楽太郎に他の面々も声を上げて呼応する。
「それじゃ、さっさと案内しなさい」
そう言うと捕まえた賊に拠点まで案内をさせた。
拠点の制圧はあっという間に終わった。
拠点は天然の洞窟に手を入れた感じで入り口は一カ所のみ。
なので作戦も何もなく入り口から正面突破で蹴散らした。
エロイーズ、エリー、リゼルはレベル的には負ける事は無さそうだが元々は普通の人で戦い慣れていない。
なので3人を入り口に残し、他の面子で突入。としたかったのだが、ここでも俺に待ったが掛かる。
「いえいえいえ、旦那様は護衛対象ですから、大人しく入り口で待機していてください」
護衛対象、その言葉に反論しようとするが「今回の道中、旦那様は職人なんですからここで暴れたら変装までしている意味がなくなるじゃないですかぁ」と言われ沈黙するしかなかった。
装飾品作りで溜まったストレスを発散させたかったが、この正論には逆らえない。
俺は泣く泣く待つことにした。
一応、今回は極力殺さずに制圧する事を指示したが、どうなる事か。
そう思っていたが、サロメ達は嬉々とした顔で拠点へ突っ込み、小一時間すると満面の笑顔で戻って来る。
「制圧完了しました!」
そう言って嬉しそうに報告し、俺は促されるまま中へと入り、賊の首に奴隷の首輪を嵌めて行く。
全員に嵌め終わると恒例の命令を下し、近くにいた賊に頭目が誰かを聞く。
幸いなことに既に捕えた中にいたのでその頭目に俺を殺すように依頼した依頼人の情報を吐くように命じる。
「カラム村の村長からの依頼だ」
そう短く答える。
カラム村は今日、俺達が泊まる予定だった村の名前だ。
どうやらこの盗賊団はカラム村の村長と通じているようで、依頼人はカラムの村長と言う事だったが、襲って来た賊は20人程で拠点に居た人数は43人。
だが、ここで疑問が浮かぶ。
60人もいる盗賊団が、高が村長程度の言う事を聞くだろうか?
「ふむ、私に隠していることや言ってない事があれば話せ。
特に村長よりももっと上の人間との関わりもあるでしょう?
それと他にも仲間はいますか?」
そう質問すると頭目は目を見開くが直ぐに激痛が走ったのか慌てて口を開く。
「あ、ある!あった!
ムドーの街の代官からも同じ指示があった!
ムドーの代官とは裏取引して討伐隊の情報や美味しい得物の情報を時々貰ってる!
見返りに分け前を渡すのと、時々依頼を受けて奴にとって都合の悪い人間を消したりしてる!
それと他にも仲間はいる。
他の奴等には今、奴隷商を迎えに行かせてる!
今日は別の拠点で捕まえた奴等を奴隷商に売ることになってんだ!
俺もこんなことになってなきゃ向こうに向かってた。
それに今日は狩りをする予定じゃなかった。
だが依頼があったからムドーからカラムに向かう奴等を狙って襲わせただけだ!
くそ! こんなことになるんなら依頼なんて受けるんじゃなかったぜ、クソッたれが!」
頭目はそう吐き捨てるが、その内容は中々に酷いものである。
ゴルディ王国、相当腐ってんな。
「な、なぁ、これだけ喋ったんだ、見逃してくれるよな?」
「見逃す?
なにを?」
「お、俺を見逃してくれ。
もう悪さはしねぇ・・・うぎゃぁぁぁぁぁ!」
「わかり易い嘘をよくもまぁ」
そう言って呆れ声を出すが、奴隷商を迎えに行かせていると言う情報は面倒だが対処する必要が出て来た。
「では奴隷商を迎えると言う拠点の場所と向かわせた人数、それと捕まっている人数を言え」
その後も尋問は続き、ゴルディ王国の腐敗ぶりと喫緊の問題への対処を考えさせられる。
「さて、皆さんに確認したいことがあります。
尋問した結果、捕まった人達が不当に売られようとしています。
私個人としては知ってしまった以上、見捨てると言う選択肢を取るのは私の良心が痛みます」
そう言うとサロメ達から「旦那様に良心ってあったんだ」とか「流石です旦那様」とか悲喜交々の意見が呟かれる。
俺は咳払いして黙らせると話を続ける。
「まぁ、私は基本的に豆腐メンタルなんで、罪悪感に苛まれるのが嫌なんです。
なので彼等を助け出そうと思うのですが、反対の方はいますか?」
そう聞くとジャネットを始め各面々は誰も反応しない。
つまり、反対する者はいないってことだ。
「では、やります。
捕まっている者は助けます。
奴隷商も極力生け捕りにします。
奴隷商の護衛は生死不問ですが、奴隷だった場合は極力生け捕りの方向でお願いします。
そして賊は生死不問です。
大前提として、殺されるくらいなら殺しなさい!
捕まっている者が人質にされても動きは止めない!
人質が死んだとしても悪いのは殺した人間です。
私達にとってなんの意味もない他人を使って脅し、勝手に殺した者が悪いのです。
賊が死に奴隷商を捕らえれば、これから増えたであろう犠牲者は居なくなります。
私はあなた達がこんなつまらない事で死ぬことを許すことはありませんので、それを肝に銘じておいてください」
そう言うと全員が頷く。
「さて、それじゃ急ぎますか。
そこの頭目、さっさと案内しなさい!」
そう言うと俺は天秤棒に頭目を引っ掛けて走り出す。




