あったか~い
「いらっしゃいま――」
「すみません大至急! テンちゃん助けて!」
「そんなに慌ててどうしましたか、お客様」
「接着剤って置いてる?」
「接着剤?」
「聖剣の宝玉が外れた!」
「あ、この前のラストワン賞の。瞬間接着剤はこちらに」
「ありがとう! これでなんとかなりそうだ。いやぁ、宝玉が取れた途端に魔物を倒せなくなっちゃってさー。色んな宝箱を無視してここまでダッシュしてきたってわけ」
「剣がダメでも、魔法も使えるのでは?」
「あまり得意じゃなくて」
「そういえばお客様はいつも、体力回復のポーションばっかり買ってますね」
「魔力回復用のハーブ酒が飲めない。下戸だから」
「勇者に向いてなさすぎる」
「本当にどうしようもない時は、代わりにそのへんに生えてる草を食べるよ」
「民が泣きますよ」
「気持ち、回復してる感じがあるんだよね。というわけで今日もハイポーションをいくつか……あれ、また追加の貼り紙? 『床に魔法陣を描かないでください』?」
「先日、スラ山さんがうっかり踏んで転移させられまして」
「スラ山さんになんてことを!!」
『プルプル!』
「転移先が火口の真上で死ぬかと思った、と言っています。それでも自力で戻ってきて、翌日からは普通に勤務してくれていますよ」
「いつかこの店、貼り紙だらけになりそうだな。こころなしかスラ山さんの体内に灰が透けて見えるけども」
「犯人にどんな呪いを付与するかを相談していたところでした。超たのしい」
「少し犯人に同情する。……お、あったかい商品も並び始めたんだ。そろそろ氷系の魔物が増えてくる時期かぁ」
「毎年、侮って軽装で出発する冒険者が尽きませんからね。はい、こちらのレジへどうぞ。先ほどの接着剤とお会計はまとめてしまいますね」
「お願いします。ポーションと、あとこれ。加温器のところに置いてあったんだけど、別の棚の品じゃないかな」
「この赤い卵ですか?」
「うん。たまにいるよねえ、違う場所に商品を戻す人」
「これ、うちの商品じゃないです」
「……え?」
「……なんだか、ヒビが入っているように見えるのですが」
「……俺にもそう見える」
「……どんどんとヒビが大きくなっている気がするのですが」
「……二人で幻惑の術にかかってるのでもなければ、たぶん見間違いじゃないね」
『ピィ!』
「う、うわ、産まれた?! なんか赤い鳥が産まれたよテンちゃん!」
「小さいくせに、一丁前に炎もチロチロと吐いてますね」
「フェニックスとかかな?!」
「フェニックスは恐らく卵から産まれないかと」
「そ、そうか。ともかく、まずは名前をつけてあげないとだなっ。今後どうするにしたって、呼び方がないと不便だし!」
「ピィちゃんとかでいいんじゃないですか、あなたのネーミングセンスなら」
「いや、ちゃんと考えよう……」
「もしかして飼う気です? 一回うちで処遇を店長と相談しますからね」
「よし決めたピィちゃん!」
「ほら見たことか」
「ピースフルワールド・フォーエヴァーでピィちゃん」
「発音が腹立つ」
『ピ!』
「ピィちゃんも気に入ったって言ってるよ」
「バーコード読み取っただけです」
「紛らわしい!」
『ピ!』
「今のはどっち?」
「私です。ピ」
「…………え?!」




