雑誌
「いらっしゃいませ。なかなか装備がサマになってきましたね」
「テンちゃん、この聖剣マジですごいわ」
「レプリカではなく?」
「なんか、すごい光る。そしてめっちゃ強い」
「なるほど。道具は使いようと言いますからね、そういうこともあるんでしょう。では魔王は倒せましたか」
「全然無理」
「……お客様の場合、まずパーティを組んだほうが良いのでは」
「人には不得手があるんだよ」
「得手もありますから泣かないでください」
「優しさが傷にしみる。入口に貼り紙が増えてたね。『店内での詠唱はご遠慮ください』ってやつ」
「ああ。透明魔法で万引きを試みた不届き者がいまして」
「むしろこれまでなかったことに驚く」
「ありましたが、こっそりと呪いを付けて見逃してやってたんです」
「それ見逃してはいないよね?」
「大した呪いじゃないですよ。『ずっと靴の中に小石がある気がするけど、確認すると無い呪い』とか、『いつも隣のレジのほうが早く進む呪い』とか」
「地味だけど嫌すぎる。それでも、今回はわざわざ貼り紙にしたんだ?」
「はい。『週刊少年チャンプ』が売り出される日は、かなり万引きが増えるんですよ。面倒なので、あの貼り紙を無視したお客様には自動で『どこからでも切れます、が切れなくなる呪い』がかかるようにしました」
「恐ろしいことをするね。いやあ、『チャンプ』は大人気だよなあ。魔物も買うのか?」
「もちろん。リスポーンできるのに懲りずにポーションを買うのと同じようなもので、少しでも生きている間は楽しみたいでしょう」
「確かにな。冒険者ギルドじゃ、『月刊ダンジョン』が人気だって聞くよ」
「あれは人間向けの雑誌ですからね。えーと、今月の特集は……『初心者が死にやすい罠ランキング』『春の軽装ローブコーデ』『野営スポット特集』だそうですよ」
「いつの間に手元に。あ、付録はミニマジックバッグだって? ちょっとほしいかも」
「レジ通しちゃいますねー」
「仕事が早い。逆に魔物専用の雑誌もあるのか?」
「こんなのとか」
「なんだこれ、『ゴブリンウォーカー』? 『人間にバレない街歩き』?! おいおい、こんなものが流通してるのか。誰だよ作ってるの」
「色んな需要があるものですよ。ほら、こちらの本とか……あっ、お客様は未成年じゃないですよね?」
「何回死んだか記憶にないが、恐らくセーフだよ。なになに、『未亡人サキュバス特集』?」
「未成年の購入は禁止なんです。あと見習い僧侶もダメです」
「お、おお……買えるけど俺は要らないかな。どちらかというとこっちのほうがいい、『週刊ゴーレムをつくる』」
「創刊号は右小指だけ、九九九ゴールドです」
「完成まで何年かかるんだ……?」
「全部で二万巻を予定しているみたいですね」
「蘇生できるからこその楽しみってのもあるんだな」




