一番くじ
「いらっしゃいませー。ポイントカードはお持ちですよね」
「はい。あっ、今日はあの、一番くじを引いてみたいなと思って」
「ええ、何回でもどうぞ。他にお客様もいませんから」
「相変わらず心配になるなぁ。あ、スラ山さんもこんにちは」
『プルプル』
「苦しゅうない、と言っています。完全に上下関係ができあがりましたね」
「わざわざ喧嘩を売る必要はないからね。俺だって、襲ってこない魔物と戦ったりはしないよ」
「魔王も別に人間を襲ってなどいませんが。ひっそりと最下層で暮らしているのに」
「あー、魔王は別かな。ただのわがままというか」
「……というと?」
「強い相手と手合わせがしたくてさ。自分の実力がどこまで通用するのかを試したくて、こうやってダンジョンに潜っているというか?」
「……」
「無言でスラ山さんを指差さないで! 買い物中は休戦協定を結ぼう?!」
「確かに、店内での武力および魔力の行使は禁止されていますからね」
「そうそう!」
「お店を一歩でも出れば問題ないということですね。スラ山さん、ちょっとこちらへ。そして一歩お外へ」
「そうそ……うではないですテンちゃんさん!」
「はあ、わかりました。それで、一番くじは何回引きますか?」
「相変わらずの塩対応。じゃあ、とりあえず五回分ください!」
「毎度あり。ちなみに、時空魔法使用者の購入はお断りですが、お客様は大丈夫そうですね」
「うん。何か理由が?」
「分身魔法や瞬間移動で、列の並び直しを無効化しやがる転売ヤーが時々」
「ああ……あちこちで問題になっているよね」
「キリはありませんが、人気のくじの時は購入者にクイズを出すことにしています」
「例えば?」
「『今月の討伐弁当の大当たりは?』とか」
「なるほど。俺には良いの?」
「あなたは海苔弁の人なので」
「うわ完全に裏であだ名をつけられている。店員同士で悪口言ってるやつ」
「店長とそんなくだらない話なんかしませんよ。さあ、特に制限もありませんからさっさと引いてください」
「はいはい。……おっ、いきなりC賞だ」
「C賞は、魔王軍幹部アクリルスタンドですね」
「要らないと言えば要らないけども。なんで『伝説の勇者くじ』に魔王側のグッズが?」
「魔王あっての勇者でしょう。なぜか一番人気は経理担当のメガネこと、財務大臣ゲルドフです」
「本当になぜ。こっちのデカいドラゴンもいいじゃないか、けっこう在庫が残ってるが」
「あー毒竜候エゼルですか。確かに映えますけど、広げた羽が棚の場所をとるのがコレクター泣かせですね」
「な、なるほど。それじゃ、無難そうなこの、腕組みをしてるおじさんのアクリルスタンドにしておこうかな」
「魔王城施設管理責任者のおじさんですね」
「名前とかないの?」
「魔王城施設管理責任者のおじさんです」
「……」
「後々プレミアがつくかもしれませんよ?」
「まあ、そうだな、うん。お迎えしたからには大事にするよ。残りも一気に開けちゃうか」
「ラストワン賞狙いですか? 特大もちもちスライムクッション」
「いや、A賞が欲しいんだ」
「A賞? それって――」
「あ?! 当たった、当たったぞ! 見て見てテンちゃん!」
「ここまでの階層で幸運を鍛えてきたんです? 何はともあれ、おめでとうございます。ただ、A賞の聖剣レプリカですけど、台座に刺さった状態でのお渡しになってしまいますが」
「いいよいいよ! わはー本物だぁ。いやー憧れだったんだよなー。誰しも一度はこうやって、引き抜く場面を想像し……あっ」
「えっ」
「聖剣、抜けちゃった……」




