ロックスの放課後
「さよならシャルロット先生。また明日なのだ!」
「また明日〜。迷える子羊に主の導きがありますようにっ!」
⠀放課後、ロックスは教師である女性にいつもの挨拶をする。
⠀子供達に勉学を教える彼女は教師のシャルロット。
⠀学校の先生であり、イーデル教の敬虔な信徒。
⠀気さくな人柄と魅惑的包容力の体付きで、生徒の親から人気がある。
「放課後はリースちゃんとデートする約束だったけどさっきドタキャンされちゃったのだ。悲しいのだ……」
「悲しんでるようだねロックス。今日は僕で我慢しときなよ」
「そうするのだ!⠀ユーリと遊びたい気分になったのだ」
⠀幼馴染みの女の子とデートする予定をドタキャンされ、悲しみに暮れたところに誘ってくれたユーリ。
⠀友情はいつもロックスを励ましてくれる。
⠀たまに裏切られることもあるけれど、それが健全な人付き合いというものかも知れない。
「かくれんぼするのだ!⠀範囲は校舎と、協会全体でやるのだ!」
「それは楽しそうだね。いいアイデアだ」
⠀彼らの学び舎は、イーデル協会の一角を校舎として使わせてもらっている。
⠀放課後の遊び場として使われる事も、ある程度は許容してくれている。
⠀こうして生徒の、主への感謝と信仰心を育み信徒へと導くのだ。
⠀成果はあまり無い。
「僕が鬼をやるね。5分経ったら探すからユーリは隠れるのだ!」
「うん。よーし帰るぞ」
「待てなのだ!⠀なんで帰ろうとするのだ!?」
⠀早速裏切られた。
「だって君が鬼なんだろ?」
「えっ?⠀もしかしてユーリが鬼をやりたかったのだ?⠀なら言ってくれればいいのだ」
「ごめんよロックス」
「じゃあ僕が隠れるから、ユーリは鬼。5分経ったら探すのだ!」
「うん。君が隠れてる間に僕は帰るよ」
「なんでなのだ!?」
⠀また裏切られた。
⠀ユーリといるとよくある事だが、毎度ロックスには意味の分からない事を彼はやる。
⠀さしものロックスもいい加減不満が出てきた。
「もしかして僕と遊びたくないの?⠀そんなに帰りたいなら帰ってもいいのだ」
「そんなまさか」
「じゃあなんなのだ。ユーリが何をしたいのか分からないのだ」
「ごめんよ……君の気を悪くするつもりは無かったんだ。つまり……僕の態度と人格が悪かったんだ。僕が人の気持ちを考慮しない畜生だったんだ。僕『も』悪かったよ……」
「な、なんでお互い様って事にしようとしてるのだ……?」
⠀何故だか涙を浮かべ己を扱き下ろすユーリに、ロックスも居た堪れなくなり諦める事にした。
「ところでロックス。最近君の家に可愛らしいお姉さんが出入りしてるようだね」
「その人は家庭教師のアイリ先生なのだ」
⠀鬼を交代しながら一往復、一通りかくれんぼを楽しんだところで、思い出したようにユーリが訊ねてきた。
⠀思い当たるのは他にいないので、ロックスもすぐに説明する。
「アイリ先生は優しい先生で、パパとママとも仲良しで、村長ともすぐ打ち解けたのだ」
⠀諸説ある。
「そうなんだ。怪しいと思ってこっそり後を付けたのは正解だったみたいだね」
「正解じゃないのだ。そんな事しちゃ駄目なのだ」
「僕の追跡をああも容易く見抜いて注意してくるお姉さんなんて怪しいに決まってるね」
「見つかったんだ……あとアイリ先生は怪しくなんてないのだ!」
⠀ユーリのスキル【多芸】は万に秀でる万能の才。
⠀ユーリは時々、外からのお客さんをこっそり追跡する遊びをしているが、今回は容易くバレてしまった。
⠀彼の知る由は無いが、相手はSランク冒険者。
⠀プロでも追跡は容易じゃない。




