ロックス、公園で遊ぶ
「今日は日曜日なのだ!⠀公園で遊んで来るのだ!」
「そうだ。子供は公園で遊ぶのが一番いい。それが子供の日曜日の過ごし方というものなんだ」
「たまには都会に遊びに行きたいけど、パパもママも駄目って言うから公園で我慢するのだ!」
「そうだ。日曜日というのは週に一度の大人の休日なのに、遠出で疲れるなんて冗談じゃない。子供は遠出をゴネらず公園で遊ぶのが子供の在るべき姿なんだ」
⠀日曜日。
⠀協会によって指定される暦の概念。
⠀年に12の月、月に30前後の日、合計年に365の日付から成り立つ世界基準の画期的暦法。
⠀日月火水木金土を永遠と繰り返す暦の中、日の曜日は最も愛される日。
⠀つまり大人は日曜日は自分のやりたい事だけしたい。
⠀それが大人というものだ。
「行ってきますのだ」
「暗くなる前に帰ってくるんだぞ」
⠀日曜日以外は学校に通う子供にとっても例外ではなく、子供も日曜日には遊びたい。
⠀出来れば親に遊びに連れてってほしいが、それは子供の都合、駄目と言われれば我慢するしかない。
⠀それが大人への第一歩というものだ。
⠀ちなみに冒険者や騎士の休日は不定期。日曜日だからという理由で休む事はできない。
⠀父ローガンに遠出を断られたロックスは、行きつけの公園にやってきた。
⠀十数年前、今の村長が大金を叩いて作ってくれた公園。村長は覚えていないが。
⠀月日が経つにつれ遊具が増えたり減ったりしているこの公園は、今も昔もこの村の子供に愛されている。
「今日は砂場で遊ぶのだ。協会を作るのだ!」
「協会を作ったのだ!」
⠀数十分の間に完成した。
⠀砂場に佇む、砂の模型。
⠀協会と言っても、砂の山を削って木の枝を刺してる程度の出来栄えなのだが……。
⠀スキル【天上天下無双の剣聖】を持つロックスの戦闘の才は、砂場という戦場では発揮されることは無い。
「上手くできたのだ!⠀誰かに自慢したいのだ!」
⠀とはいえ、当のロックスはその出来栄えに満足している。
⠀この感動を誰かと分かち合いたい。
⠀どんなスキルがあろうとも、彼は10歳の無邪気で能天気な子供だ。
「自慢されに来てあげたよ」
「ユーリ!⠀おはようなのだ!」
「ああ、おはようロックス。もうすぐこんにちはだね」
⠀友人のユーリが来た。
⠀同い年の幼馴染みの一人。
⠀ロックスより明るめのブラウンの髪の男の子だ。
「見てほしいのだ。⠀協会を作ったのだ!」
「協会を作ったんだね。すごいじゃないかロックス。君の努力を僕は友達として誇りに思うよ」
「照れるのだ」
⠀賞賛を期待したロックスに、友としてまっすぐ讃えるユーリ。
⠀お世辞にも上手くはない砂の模型にも、そこに至る努力を褒める。
⠀それが友情というもの。ロックスも褒められて誇らしげだ。
「えいっ」
「な、なんてことするのだー!?」
⠀瞬間、砂場の教会は弾けた。
⠀ユーリが蹴飛ばした。ロックスは努力を賞賛し、僅か5秒で努力を足蹴にしたのだ。
「おっと手が滑った」
「酷いのだ!⠀どうしてこんな酷いことするのだ!⠀あんまりなのだ!」
「悪かったよ。お詫びに作り直すから許してくれよ」
「簡単には許さないのだ!⠀僕はブランコで遊ぶから邪魔するななのだ!」
⠀さしものロックスもこれには憤慨。
⠀今日一日はユーリを許す気がなく、ブランコへと向かった……。
「ロックス。協会作り直したよ。君に見てほしいんだ」
「あっ、今行くのだ」
⠀一人でブランコはさすがのロックスもすぐ飽きる。
⠀そろそろ許してあげるかと思い始めた彼に、砂だらけになったユーリが話しかけてきたので砂場に向かう。
⠀ここまで五分の出来事。
「おお!⠀すごいのだ!⠀さすがはユーリなのだ!」
「そうだろ。僕にかかればこんなもんだよ」
⠀見事な砂上の協会だった。
⠀実物の協会をそのまま小さくしたような、まさに芸術と言って差し支えない出来栄え。
⠀これを僅か10歳の子供が5分で作ったと、一体誰が信じよう。
⠀そんなユーリのスキルは【多芸】
⠀万に秀でる万能の才。
「さあロックス。これを壊すんだ」
「ええっ!?⠀嫌なのだ!⠀壊したくないのだ!」
⠀一体何を考えているのか、せっかく作った芸術の如き砂の協会を、壊せと言うのが作った張本人。
⠀ロックスはすぐさま断る。
「僕は君の協会を壊したんだ。とても悪いことをしたと反省してるよ。だから君にも壊してほしい」
「そんなことできないのだ!⠀たしかに僕の協会は壊されたけど……ユーリが頑張って作った協会を壊したくはないのだ!」
⠀それとこれとは話が別。
⠀協会の出来栄えは関係ない。
⠀友達が頑張って作ったものを、故意に壊すなんてことはしたくないのがロックスだ。
「僕のことは構うなロックス。君が壊してくれないと僕の気が済まないんだよ!⠀君の協会を壊した僕の罪を、僕の協会を壊す事で罰とさせてくれ!」
「わ、分かったのだ……そこまで言うなら……ええいっ!」
⠀この世界から、一つの芸術が消え去った。
「あーー!?⠀なんて事をするんだロックス!?⠀せっかく僕が作った協会を壊すなんて!?」
「ええっ!?⠀ユーリが壊せって言ったのだ!⠀僕は言われた通りにしただけなのだ!」
「言われればなんでもするのかよ!⠀君は人を殺せと言われれば殺すのか!?⠀最低だなロックス!⠀君は潜在的サイコパスだ!」
「そんなことしないのだ!⠀それに君こそきょーさ犯ってやつなのだ!」
⠀凄まじく理不尽に罵倒されるロックス。
⠀何故かユーリの目には涙が浮かんでいた。
⠀友が潜在的サイコパスであると確信した悲しみの涙。
⠀悲しみの涙が真実か否かは別の話。
「今回はお互い様って事にしよう。次は一緒に何か作ろうよ。一人で協会作っててもそんなに楽しくないんだ」
「そうするのだ!」
⠀こんな事はよくある話。
⠀喧嘩も理不尽もよくあるが、それでも共にいるのが友達というもの。
⠀次は一緒に辺境伯の屋敷を作った。
⠀もちろん壊した。




