06.巨大災害
「さぁ、『コア』の話に移る前に、巨大災害の生態の話をしよう。
もっとも、生態という言葉は、巨大災害を生物と定義するならば、という仮定が含まれるけどね。
そろそろ、巨大災害と言うのも疲れた。親しみと憎しみを込めてここからは、『彼ら』とでも呼ぼうか」
スライドは切り替わる。様々な生物の簡略化した絵だ。
「さて、エルくんが言ってくれたように、海の生き物は存在しない。
彼らの発生は、今の所、陸地もしくは、埋め立て地等のしっかりとした足場があるところだ。
彼らは発生する。その際に象るのが、いや『擬態』するのが、既存の生物。
それも、その土地ゆかりのある生き物や、実際に生息、生息していた生物に。
英国ロンドン、リッチモンド・パークにて巨大鹿。
中国広東省、広州港にて巨大蟹。
米国ニューヨーク、セントラルパークにて巨大リス。
豪州メルボルン、ウェスターフォールズ・パークにて巨大カンガルー。
あげればきりが無い。この辺でいいかな。
さて、巨大かつ凶暴な彼らが発生して、何をするのか。
動かず観光資源にでもなってくれるなら、大歓迎だったろうね。
-――実際は、手当たり次第に人工物を破壊するまさに『人類の敵』だったのだが」
その時の、ニワさんは、ゾッとする程冷たい表情だった。
「彼らの行動には三つの共通点がある。
一つ、発生の瞬間は誰も捕らえられない。
二つ、発生地点から、1km範囲の人工物を徹底的に破壊する。
三つ、発生から24時間後、彼らと同質量の土塊となり、土に帰る。
もしも、巨大災害発生の瞬間、という映像資料を見てないものが居たら、視聴をすすめるよ。
そして、同じ文句を言おうじゃないか。
BGMなし!スモークなし!強烈な光などといった演出は一切無し!あるのは、一瞬のノイズのみ!
とんだ手抜き編集だとね!
まぁ、そのノイズがカメラ越しでもない肉眼でも確認される事には、なにか彼らの執念を感じるけどね。
そして、生物的特徴も同じく三つ。
一つ、彼らの身体は一辺5mの立方体に収まる。
二つ、彼らが『擬態』した生き物の特徴と能力を持つ。
三つ、『コア』があり、砕かれれば即座に崩壊し、土に帰る。
まぁ、特徴と能力と言っても、質量が違うからね。
鳥類や昆虫類にも擬態するが、飛行能力は使えないといったおマヌケなものさ。
ただ、毒を持つ爬虫類や両生類の場合は、同種の毒を持つ彼らの危険度が跳ね上がるがね。
そして、お待たせ、コアの話だ。
いやー、『コア』の話まで来るのに長かった。おっと、スライドを切り替えねば」
様々な生物の簡略化した絵の頭部に、赤い点のマーキングがされる。
「主に脳、即ち頭部に『コア』はある。
しかし奇妙なのが、時に例外があるということだ。ほら、このような感じに」
ニワさんは、スライドの一点を指さす。
よく見れば、その示した生物だけ、腹部に赤い点があった。
複数の内の一体だけなので、指摘されるまで気付かなかった。
「そもそも、再び話はエルくんとの質疑応答に戻る。
二枚貝に擬態した彼らが現れた時、陸地でほとんど動かない彼らに、人類は初めて生態調査を行えた。
そこで見つかった既存生物との大きさ以外の大きな差異、それこそが『コア』だ。
『コア』は貝から取り出され、たった24時間の解析であったが、人類に多大な進歩をもたらした。
構造学のブレイクスルー、新合金の発見、エネルギー効率の改善。
どんな真珠より価値があると言えるだろうね。
その悪意から目を背ければ……。
さて、お待ちかねの質問タイム!
ティア!愛おしき我が妹よ!オペレーター業務でも特にコアを探すことが、重要とされるその理由は答えられるかな?」
「は、はい!『コア』を砕かず、巨大災害に生命維持困難な致命傷を与えた場合、汚染物質である『ハザードマテリアル』が周囲に広がるからです」
「その通り!念のために、『コア』を砕く際に操縦席を完全気密状態にするのも、同じ理由だね。
素晴らしい!自分の業務行為の意義をキチンと理解しているとは鼻が高いよ!いや、ティアの方が鼻が高いな、目鼻立ちが整ってるとも言う、お母様の血かな?
おっと、身内トークをしてしまい、すまないね。話を戻そう」
スライドは切り替わる、『ハザードマテリアル』についてだ。
「高濃度の『ハザードマテリアル』吸引することで呼吸器系への障害を始めとする、様々なアレルギー反応を引き起こす。
まるで、人類を拒絶しているようではないか。
しかも、最悪なのが、霧散はしても無くなりはしないことだ。
そう、破壊活動を行う共通点、5mの体高という人類に抗う術のある生態、『コア』の場所の例外。
彼らは『巨大災害』は『コア』に秘められた『ハザードマテリアル』をばらまく生体兵器である!
という考えた方もあるが、それなら直接、毒をばらまいた方が早いし……なんなんだろうね、彼らは」
最後の、付け加えに思わず力が抜けた俺達だった。
「その辺りは、是非バイオ部門の人類の天才達に任せるとして、だ。
いよいよ、現在の社会情勢、かつ、我々黒鉄重工の話をしよう。
そう、楽しいロボティクスな話さ!」




