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【第二章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第三章

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35.有給明けの仕事。

 


 有給休暇で行われたレイさんとのジム体験会の翌日。


 早めに出社した俺は、メールチェックや、休んでいる間の新規連絡事項の確認を行っていた。


 そんな時、こちらも早めに出社してきたエルさんとティアさんに捕まった。


 いや、『捕まった』という表現は自分でもどうかと思うが、なんというかそのような圧があった。



「……ということがありました」


 圧を掛けられた風船が空気を漏らすように、質問に答える形で昨日の出来事を話した。

 主観を抜いた業務報告のような形になったと思う。


「「ふーん…」」


 二人のジト目に理不尽なモノを感じる。

 しかし、逆らう気が起きないのは何故だろうか。


 巨大災害と対峙する中で磨かれた生存本能であろうか。



「……それで?入会は決めたのかしら?」


「はい。着替え終えて、レイさんと二人で」


「「二人で」」


 エルさんとティアさん、なぜ声が揃うのだろう。その疑問を発する事は出来ず、頷く俺。



「……お兄様、私もジムの体験会を考えていたんです。

 ですが、お兄様とレイさんが会ったような不埒な輩もいるようなので、少し不安です」


「そうですか…」


「なので、体験会の日をお兄様がジムに通う日に合わせたいと思います。よろしいでしょうか?」


 にっこり笑うティアさん。

 表情はにこやかなのに、ニワさんにも似た底知れなさを感じてしまう。


 まぁ、二人は姉妹なのだから、似ている部分もあるだろう。



「分かりました。予定を合わせます」


「まぁ!ありがとうございます!お兄様」


 ティアさんが、花の咲いたような笑みを浮かべる。



「では、私も別日にいいかしら。事務仕事続きだったから、ちょうど背筋を伸ばす機会が欲しかったの」


「だったら、エルさんとティアさんで行くのはどうかなー、って思うのですが……」


「「ん?」」


「お二人に合わせます」


 反射的に立ち上がり、頭を下げていた。

 謝意を見せるため、というより合法的に視線を避ける為に。


 ……なにさっきの目、怖っ。



「おはよーっす!いやぁ!今日はなんだか調子が良いっすよー。

 1日じっくり休んだからからっすかねー」


 快活な挨拶とともに、開発室に入室してきたのはレイさん。

 上機嫌なまま席に座り、PCを起動していた。



「おはよう、レイ。なんだか不自然に休んだことを強調するのね」


「おはようございます。昨日は良いことがあったんですか?」


 エルさんとティアさんは、まるで表裏の無い笑顔だ。


「え?…あー、まぁ……その、順調っす!」


「「……へー」」


 笑顔の色は変わらないのに、声が確実にワントーン下がった。



 そうだ。俺も確認作業を再開しよう。

 幸い、俺宛の新規事項はないようだ。


 今日は予定通り、シミュレーターと報告書作成作業でいいだろう。



 表面上の平和を取り戻した『黒鉄重工先端重機開発室』。


 だが、その平和は束の間だったと思い知る。



「おはよう!諸君!

 ところでクリスマスの予定は開いているかな!?

 サンタの実在を疑って久しいワタシだが、丁度その前日に素敵な贈り物をする権利を我々は手に入れたよ!」


 なんだかテンションのおかしい、いや、いつも通りの室長でもあるニワさんが入室してきた。

 俺達部下一同は、戸惑いながらも朝の挨拶を返す。


 そして、冷静になってみれば、おかしいのはテンションではなく、その話の内容だった。



「それで『素敵な贈り物をする権利』、とは?」


 代表して俺が聞いた。

 言葉にしたが、よく分からない権利だ。


 学校の勉強はそこそこ出来たが、公民も国語も足りなかったかも知れない。



「それはだね………」


 言葉をタメながら、手首の内側の時計に目をやるニワさん。

 その思わせぶりな間に、開発室一同、息を飲む。


「よし、朝礼時間になった。遠慮無く話すとしよう!」


 思わず一斉に息を吐いた俺達。

 ……律儀な点と人騒がせな点、どちらを注目すればいいだろうか?



「結論から言おう。

 12月23日。フェリドゥンの研究室外での実機稼働が決まった」


 実機稼働が決まった?運用実験ではなく?野外演習でも行うのだろうか。


「発起人は黒鉄重工、広告宣伝部。……という体だが、真の発起人は違う!

 彼こそは、ワタシが作成したフェリドゥン宣伝動画からHPにたどり着き、黒鉄重工宛てへお手紙をくれた幼稚園在籍の五歳児!

 プライバシー保護の観点から仮にタロウくんとしよう!」


 幼稚園在籍タロウくん(五歳)…?


「『フェリドゥンかっこいい!あいたい!』という非常に高い知性を感じさせる文章と、

 クレヨンをふんだんに使った絵を我々に贈ってくれた彼は、

 最近孫が生まれた広告宣伝部長の心を動かし、我々にある機会を与えてくれた!

 まぁ、ワタシからも前々から提案と打診はしていたのだが、決定打はタロウくんに譲ろう。

 なにせ、その方が気分が良い!」


 広告宣伝部長、最近孫が生まれたんだ……。


 あと、その提案と打診は初耳だ。

 ニワさんもしたたかに動いていたらしい。


 だが、なるほど。ここまで、ニワさんが高いテンションなのも納得がいった。

 要は、自らが開発したフェリドゥンが子供の憧れになって喜んでいるのだ。


 子供のヒーローになる。それは、きっとなにより誇らしい。


「というわけで開発室諸君!

 黒鉄重工プレゼンツ、重機大型展示会にフェリドゥンの実機出展が決まったぞ!

 もちろん、タロウくんの幼稚園も特別招待決定だ!」


 一つ、確信がある。

 どうやら、今月も充実した一ヶ月になりそうだ。



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