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【第三章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第三章 拳は意味を変えて、ただ前へ

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30.エンジョイする経験者。



「レイさん、お疲れ様です」

「お疲れ様っす。珍しいっすね、この辺で会うなんて」


なんとなく、そのまま会話を始めてしまった。珍しいのも当然だ、今日初めてきた場所なのだから。


「あ、もしかして、っすけど…」

「…その通りです」


レイさんが取り出したチラシ、それは俺と同じものだった。苦笑しつつ、俺も鞄から同じ物を取り出す。


「いやー、前通ってる所より安かったんで、ちょっと気になって見に来た所だったんすよー」

「俺はこういうところに行ったことがなくて、雰囲気を見に」

「ってことは、完全な初心者さんじゃないっすか!よかったらご飯食べながらでも話さないっすか?自分、結構くわしいんっすよ?」


結構ぐいぐいするなレイさん。心なしかチラシに写ってる人達の笑顔に近い。

初心者歓迎ということなのだろうか。しかし、興味があるのも事実だし目星を付けていた店も近いな。


「あそことかどうすっすか?結構いい店なんすよ?」

「…ハンバーグ専門店『ニクいヤツ』?」


メニューボードには黒光りしたマッチョがポーズを決めて、ハンバーグを持っていた。なんというか、俺の筋トレしてる人のイメージ通りだ。



了承した俺は、レイさんに引っ張られるようにしてその店に入った。

ジューシーな肉の焼ける香りと、デミグラスソースの甘い匂いが店内に満ちている。

席に着き、メニューを開いた俺の目に飛び込んできたのは『糖質制限・ヘルシー豆腐ハンバーグ』の文字だった。


……やっぱり、ジムに通うような人はこういうのを頼むんだろうか。

俺としては、このデミグラスソースがきになるが…。


よし、レイさん合わせよう。常連みたいだし、美味しいものを知ってるだろう。

ヘルシーハンバーグでも、それはそれでいい経験だ。


チラリと対面のレイさんに視線を送る。彼女は呼び出しボタンに指を掛けていて、そこで視線が合わさった。

……あ、という表情だったので、いつものクセで呼び出しをする直前だったのかもしれない。

俺はうなずくと、気まずそうに呼び出しボタンを押した。


―――ガハッハハハ!


いや、呼び出し音のクセ強ッ!


ちなみに店員さんは普通だったので、少し安心した。


「じゃ、自分はエビフライハンバーグセット、ライス大盛りで! あとタルタルソース多めでお願いしますっす」

「えっ?…あ、おれも同じで」


思わず出た疑問符に、レイさんと店員さんの注目を集めてしまったが、当初の予定通りの注文をした。

店員さんを見送った後、レイさんはこちらを改めて見る。


「ガズくん、合わせてよかったんすか?なんか戸惑ってたみたいっすけど」

「いや、筋トレしてる人ってヘルシーで、なんかパサパサしたもの食べてるイメージがあって」


「ああ、鶏胸肉とかブロッコリーっすね。後は、プロテインとか飲んでるイメージがあるんじゃないっすか?」


彼女は不敵に笑うと、ビシッと人差し指を立てて、我が意を得たりとばかりに胸を張った。


「ガズくん、それは大きな誤解っすよ!ジムに行く人には『ガチ勢』と『エンジョイ勢』がいるんっすよ。私は完全に後者っす!」

「エンジョイ勢、ですか」


俺もロボットアニメきっかけで結構なオタクだ。対戦ゲームなどで、その用語には聞き馴染みがある。


「そうっす! ガチで大会に出るとか、バキバキの腹筋を目指す人は食事もガチっす。でも自分みたいなエンジョイ勢の目的はただ一つ。『美味しいものを罪悪感なく食べるために、その分のカロリーをジムで燃やす』! これっす!」


「あれ?でも、前行ってた、ってことは最近は…」

「……今日は、仕事を頑張った自分へのご褒美っす」


目を反らすレイさん。その理屈は、出勤日は全て適用出来るが大丈夫だろうか?


「そうっす!この機会に誤解を解く時間にするっすよ!じゃんじゃん偏見言ってくださいっす!」


なんか誤魔化された気がしたが、多分ツッコまない方がこの後のご飯がうまいだろう。処世術、というヤツだ。


「初心者が行っても、ゴリゴリのマッチョに『そんな軽い重量でやってんじゃねえ!』とか睨まれたりしないんですか?」


「あるわけないじゃないっすか! マッチョの人たちは自分の筋肉と鏡しか見てないっすから、他人のことなんて一ミリも気にしてないっすよ。

 でも、使い方で困ったり、危ない使い方してたら、そっとアドバイスしてくる妖精みたいな生き物っす」


筋肉の妖精…?


「そうなんですか……」


「そうっすよ。器具だって、歩く速度のランニングマシンから、座ってできる軽い運動まで色々あるっす。

 仕事帰りのヘロヘロな会社員が、ちょっとストレッチするためだけに寄る、なんて使い方も普通っすよ」


他にも、巡回してるトレーナーの使い方講座もあったり、具体的な器具の紹介をスマホを見せながら解説をしてくれたりした。

効いてる部位の解説の時、自分の胸を指すのは視線に困るのでやめて欲しかったが…。

そんな、興味深い話は料理が到着するまで続いた。


一応言っておくが俺が興味を抱いてるのは筋トレであって、職場の先輩の、メリハリの効いたモデル顔負けの体型では断じてない



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