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【第二章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第二章 泥にまみれた双腕

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22/36

22.居酒屋にて



「やっせーーーい!」

「「「「しゃーーーせーー!」」」」


威勢の良い挨拶が俺達を迎える。

居酒屋 魚政には、頭のワックスの違和感が取れない程、短時間でたどり着いた。


「居るわ、ガズくん。カウンターの中、調理しているようね…」

「…そうか」


店の規模は仕入れた情報よりも広く感じた。雰囲気も確かにいい。

大きなカウンターの中では、件の人物含む、数人の従業員が調理を続けている。

それを囲むように、ネクタイを外した赤ら顔の中高年が隣の席の者と談笑していた。


テーブル席では、若い男女の組み合わせや、女性同士の組み合わせも見られる。幅広い層に支持されている店のようだった。


「ご来店、ありがとうございます!今ならカウンター席もテーブル席も、どちらでもすぐにご案内できますよ!」


接客担当の女性店員にすぐ声を掛けられる。俺では無く、エルさんに席種を聞いてきた。

そう言えば、いつものクセで半歩後ろに着いていたからだろうな。

カップルと見られてるか疑問である。


「二名、席はテーブル席でお願いします」

「ありがとうございまーす!テーブル席ですねっ!では、奥のテーブルへご案内いたします!足元お気をつけてどうぞーっ!」


テーブル席に向かう際、件の人物の前を通りかかる。『セージ』の名札を確認した。

今は、魚を捌いてるようで、こちらの視線に気付いた様子はない。真面目に仕事をしてるようにしか見えないな。


エルさんも、横目で確認したようだが、動揺は見えない。

そのまま通り過ぎて席に着いた。案内されたのは、壁際の四人掛けのテーブル席、奥側にエルさん、対面を避け通路側に座った。


「当店のご注文は、こちらのタブレットから簡単に操作していただけます!

 また、お店のご利用案内やおすすめメニューは、そちらの冊子に詳しくまとめております!

 ぜひご覧になってみてください!よろしくお願いいたしまーす!」


お冷やとおしぼりを置いて、店員が去った。

エルさんは迷うこと無く、充電器からタブレットを取り外し、操作をしていく。

人数の再確認や、成人済みの欄にチェックを入れ、運転者の有無などの備考欄も埋めていく、実に手慣れている。流石常連。


「関心してるようだけど『普段の機械』からすれば、操作難度は段違いよ?」

「そう言えばそうですね」

「………」


笑顔なのに、無言の圧があった。


「…そうだな、エル」

「ええ、そうでしょ?…あ、そう言えば、この座り方じゃガズくんが、店内の様子が見えないわね。私の隣に来る?」

「そうだな、エル」


YESマンという単語が頭に浮かんだ。俺は席を移動して、隣に並ぶことにした。

エルさんは細く、隣に並んで座っても、密着することはない。


「注文はどうする?一通り見てみる?」

「エルのオススメでいい。俺は冊子を見てるよ」

「わかったわ。…二人なら、今まで躊躇してた活け作りが頼めるかしら…。今日はテーブルでスペースもあるし…。あとづくりのあら汁、興味深いわね…」


豪華な夕飯になりそうだ。ごちそうになるのが、少し申し訳ない。

タブレットに写る魚の写真やその調理例に目を輝かせる姿に、存在しない猫耳と尻尾を幻視した。


「じゃあ、冊子を…」


表題に『初めてご来店の方へ』と書かれ、ラミネート加工された冊子をめくりながら、時折、エルさんや『セージ』へ目を向ける。

しかし、変わった様子はない。


冊子の内容だが、エルさんの言葉を借りれば、『普段の機械』のマニュアルからすれば情報量が段違いだ。

店の歴史や、季節ごとの旬のお魚の解説、後は各種サービスなどを確認して……。


「ん?」

「……まさか、『奴』?」


俺の呟きに、エルさんのタブレットを操作する手が止まった。しかし、視線はタブレットに向いたままだ。真剣そのものだが、


「いや…もしかして、なんだが……」


「お待たせしましたー!お通しの刺身です!こっちは、本日レディースデー特典の一口ポテサラ!おいしかったら、タブレットから大きいサイズの注文できますよ!

 あ、それから、特定のSNSアカウウントからの投稿でもらえるクーポンもあるんで、ご協力頂けると有難いですっ!

 詳しくは、その冊子にもかいていあるんで、よろしくお願いします!」


店員さんはテキパキと離れていった。

俺は、冊子をその場に置き、レディースデーの特典案内や、SNS連動キャンペーン等が書かれたページを指した。エルさんは無言でそれを読む。


「もしかして、さっきの『今日はテーブルで』って言葉からすると、いつもはカウンターで一人で?」

「…そうよ」

「話、掛けられるんじゃないか…?」

「……そうかも」


先ほど幻視した猫耳と尻尾は、見事に垂れ下がった。


「……あまり得意じゃ無いけど、一杯だけ、お酒、頼んでいいかしら?」

「付き合うよ、エル」


カップル作戦、お通し程度で終わったのだが、今晩は付き合うことにした。


まだ飲んでないのに赤ら顔の先輩に、後輩として。



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