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【第二章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第二章 泥にまみれた双腕

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21.終業後、待ち合わせ

 


 居酒屋 魚政。

 鮮魚店経営のオーナーが仕入れたこだわりの魚介と、昔ながらの調理法が懐かしさを感じさせる温かな雰囲気の居酒屋。

 新鮮な刺身、シンプルな焼き物、濃い口の煮物は酒とよくあう。

 ご飯ものにも強く、魚の炊き込みご飯や、海鮮チャーハンなどを取りそろえている。

 星4.1/5。評価者52名。以上、評価サイトより。



「時間通りね、ガズくん。来てくれてありがとう」

「お疲れ様です、エルさん」


 十八時ちょうど、エルさんと店舗が見える銅像前で合流した。

 俺の格好は通勤用のスーツからネクタイを取った格好だ。評価サイトで店のことを見ながら歩いて来た。

 エルさんはというと、しっかり閉めていた首元のボタンを一つ外してはいるが、相変わらずきっちりした印象を受ける。


「……てっきり断られるかと思ってたわ…」

「え?」


 それは、小さな呟きだった。俺の耳に届いたのが不思議なくらい。

 だが、すぐにハッとしたように、エルさんは言葉を続けた。


「……いえ、来てくれたアナタに失礼ね。ごめんなさい。…手伝って欲しいのは、あのお店でのトラブル解決」

「トラブル、ですか?」


 またしても、エルさんと結びつかない単語だ。俺は話を聞くことにした。



 エルさんは魚好きである。

 そんなエルさんに『居酒屋 魚政』を教えたのはニワさん。

 価格帯、料理共に見事にエルさんの好みに合って、週に三度程、一人で通うようになったらしい。


 カウンターの隅で、黙々と食べ、お酒は嗜まず、食べ終えたらすぐに帰る。

 そんなことを繰り返して、約一ヶ月程、いくつかの違和感に気付いたらしい。


 1、お通しがなんか豪華。

 刺身小鉢にトロ等の高級品が入っていたそうだ。

 珍しいこともあると不思議に思っていると、エルさんの後に来た客には赤身の漬けだったらしい。


 2、料理に解説が入る。

 新メニューを頼むと、どんな魚を使ってるか、調理法まで教えてくれるらしい。

 特に尋ねてないのに、だ。


 3、SNSのアカウントを聞かれる。複数回。

 エルさんは栄養管理アプリを愛用しており、食べる前には料理の写真を撮る。

 すると、いつの間にか現れ、上記のような問いかけがあるらしい。

 やんわりと断ると追求は無い。しかし、次の時には、また問われるらしい。


 そして、上記三点、いずれも同従業員がいるときに発生する事案だそうだ。

 店舗前のオーナーの写真とどこか似た青年。十中八九オーナーの親類縁者であり、名札に『セージ』と書かれた人物が件の人物である。



「たまたまの偶然と、常連さんに構ってしまう店員さん、では?」

「…いえ、なんだか、目つきも怪しかった気がするの」


 主観混じりでトラブル未満だった。

 一人の時間を邪魔された、と言い換えてもいいかもしれない。


「それでも、週三で通うんですね…」

「会社の徒歩圏内で、美味しい魚が食べられる店だもの、逃せないわ」


 会社で凜々しく書類を片付けてる時とは、また印象が違う。

 隠しては居るが高い所が苦手で、一人の時間が好きで、魚好き。第一印象通り、猫みたいな先輩だ。


「特に魚介のシチューは絶品よ」


 ミルク好きも追加で。



「とにかく一度、カレシ連れでお店にいって、そこで絡まれるのがなくなったら成功よ。

 それに、以降は絡まれそうになったら、カレシがうるさいの、って手札が使えるようになるわ」

「いや、その…カレシ、というのは……」

「もちろん、ガズくんの今日の役割。報酬は晩ごはん代で」


 お手伝い内容は、偽装カップル大作戦。僅か10分ほどで、エルさんの印象は大きく揺らいでいた。

 しかし、何でも言ってください、といった手前、俺は受けることにしたのだった。


 というわけで、そこからはエルさんによる俺の手直しが始まった。


 手近なコンビニで買ってきた無香料ワックスを使って髪を逆立たせ、

 ワイシャツのボタンは鎖骨が見える部分まで開き、

 フェリドゥンの機内での口調に矯正された。


「うん、いい感じ。私の趣味じゃないけど、いかにも女を引っかけてそう」

「それは暴言では?」

「もっと乱暴に」

「マジかよ」

「合格よ」


 ……マジかよ。

 生まれて初めて付けたワックスには違和感が凄い。あと胸元か涼しい。


「さぁ、今日で私の平穏を取り戻すのよ」

「ああ、わかった。…行こうか、エル」


 息込んでるエルさんに声を掛ける。すると、ピタリ、と動きを止めてしまった。

 呼び捨ては、不快にさせただろうか?


「………そうね。呼び捨ての方が、自然ね。……いえ、町中で見るカップルは、くん付けで読んでた筈、つまり私はいつも通りで、カノジョ役が出来るわね、うん。…その調子よ、ガズくん」


 エルさんはどこまでも真面目だな。少し、ズレてるけど。

 しかし、世のカップルを参考にするとしても、どの振る舞いが正解なのだろう。


 生まれてこの方カノジョなど出来たことがない。初心者モードはあるだろうか。チュートリアルが欲しい。

 ただ、チュートリアルだとしても、操作を慣れないと苦戦し撃墜される、大型武装ヘリのような相手はご勘弁だ。



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