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【第一章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第二章

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19.歩行記録保存。懸念一つ。

 


『歩行実験お互いお疲れ様、ガズくん。それじゃ、降りましょうか?』

「はい、お疲れ様でした。エルさん」


 大きなトラブルも無く、約2時間の歩行実験は終わった。フェリドゥン、機体も俺とエルさんにもデータ上は異常は無い。

 フェリドゥンは現在、ハンガー・デッキに固定され、その瞳に光はない。


 俺とエルさんは縄ばしごでフェリドゥンから降りたところだ。今はないが、いずれ乗り降り用のウインチ付ける予定らしい。


「ああ、フェリドゥン!二人とも!お疲れ様だ!さぁ!今日は足踏み、歩行、駆け足まで出来たぞ!

 すでにループ動画も作った!ワタシのPC画面の端っこには今日からフェリドゥンがトコトコ歩くことだろう!おっと、解析解析ィ!」


 出迎えたてくれたのは、意外にもニワさんのみ。そのニワさんも、労いが終わると一目散に格納庫内の解析機器のスペースに飛んでいった。

 他二人を見れば、同じく計器や画面とにらめっこをしていた。


 歩行実験。オペレーター以上に、技術屋の仕事の方が多いようだ。

 むしろ、終了後の解析を考えると三人はこれからが本番なのだろう。


 格納庫の床からフェリドゥンを見上げると、俺が乗っていた操縦席とエルさんがバランサーユニットが開いて、そこから多数のケーブルがハンガー・デッキへ伸びている。

 データの収集や、フィードバック、そうかフェリドゥンも仕事があるのか。


 なんとなくその機体、と言っても足下、に手を置く。寡黙な仕事仲間は何も答えない。

 だが、手の平から感じる金属の堅さが、その力強さを雄弁に語っていた。


「はい、コレ」

「え?あ、どうも?」


 フェリドゥンを下から眺めていたら、俺の下からペットボトルが差し出された。

 エルさんが、飲み物を持って来てくれたようだ。本人も同じものを持っている。

 戸惑いながらも受け取った。


「スポーツドリンクよ。緊張か、力が入ってたのか、発汗を検知してたの。異常のない範囲だったから、報告は上げなかったけど、アフターケアよ。オペレーターさん」

「ありがとうございます。エルさん」


 計器を通じて、俺の状態は、操縦席から逐一送信されている。

 初めて一歩を、踏み出した時、少し涙ぐんだことはバレてないと願いたい。


「あら…サブオペレーター!って勇ましく呼んでくれてもいいのよ?」

「……声、大きくなってましたか…?」

「それなりに。言うならば…熱血系?」

「…熱血系……」


 今から記録を確認するのが恐ろしい。変な事は言ってない、はずだ。多分、恐らく、メイビー。


 俺とニワさんは、この後少々の休憩時間を挟んで、今回の歩行実験の報告書作成だ。

 高揚混じりの熱は、冷たいスポーツドリンクが取ってくれた。

 午前中貰ったアドバイスも生かし、今日の終業までに作成しよう。


「まぁ、気にしなくていいんじゃない?音声データは残るけど」


 いや、気にするわ。



 エルさんとは、後で開発室で合流する約束をして別れた。

 俺はと言えば、格納庫で作業を続ける三人に飲み物を差し入れしようと、格納庫内の自販機の前に来ていた。カード型の社員証をかざせば、購入出来る。ニワさん曰く、必要経費であるので無料とのこと。


 ニワさんの缶コーヒーの好みは微糖。

 ティアさんの好みはミルク入りの甘めのやつ。

 コーヒー好きの二人曰く、缶コーヒーは代用品としては優秀とのこと。


 レイさんは…仕事中だし麦茶の方がいいか。缶サイズがないので、ペットボトルになった。

 なぜか、麦茶は他のペットボトルより大きめだ。


 飲み物も購入し、三人の元を訪ねることにした。



「……ギアにもベアリングにも問題なし…。ケーブルは……前回、見直したから内部断線もなし……ここは、確認でバラすっすかね…。関節部の摩耗も確認しないと…」


 モニターを眺めながら、メモ書きをしていたのはレイさんだ。集中しているようで、俺が近づいても気付いていない。

 机の上には、空のペットボトルが一本。俺が持ってる麦茶と一緒だ。

 どうやら、差し入れのタイミングと内容には自信を持っていいようだ。


 俺は、近くにあった付箋に一筆添えてペットボトルに張ると、気付かれる前に退散することにした。

 お疲れ様とありがとうの気持ちの一礼だけ、させてもらった。



「フェリドゥンの歩行の仕組みは言葉にすれば単純だ。

 オペレーターのガズくんは指示役、バランサーユニットのエルくんはお手本、とでも例えよう。

 まず、ガズくんからの歩けという指示がある。次に、動き出す。この時、フェリドゥンは歩行のバランスの取り方をエルくんから学びながら歩行する。

 そして、データ上にすると、こうなるのだよ。ガズくん」

「…複雑ですね。あの、これ差し入れです」

「うむ!ありがとう!席も立たずにすまないね。美味しく頂くとしよう!」


 差し入れに来たら、声を掛ける前に、解説が始まった。後ろから来たのだが、気配に敏感なのだろうか?

 ニワさんの目の前の画面には、数字やなにかしらのコードの羅列が続いている。内容は俺にはお手上げと言っていい。


「そして、次はティアだね?きっと喜ぶと思うよ、ガズくん。なにせワタシも嬉しいからね!」


 俺の方へ椅子ごと振り向き、ニワさんはにこりと笑った。



「お疲れ様です」

「お兄様?なにかありましたか?」

「いや、差し入れです。どうぞ」

「わー、ありがとうございます」


 ティアさんは、缶コーヒーを受け取り、はにかんだ。

 やっと普通のやり取りが出来た。呼び名については縄ばしごで棚に上げる。


「あ、そう言えば、エルさんに変わりありませんでしたか?」

「…いや、特に心当たりはない、ですね…」

「……実は、実験終了後のバランサーユニットが開いた時、エルさんに一度大きな波形の乱れ……そうですね、動揺に近いものがありまして…。すぐに収まったので、ノイズかとも思ったんですが…」

「なるほど…」


 いつも通り、だったと思う。歩行実験中も、終わった後も。思い返すが、やはり心当たりはない。


 だが、妙に気になった。エルさんにも聞くべきだろうか?



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