15.旧世界の支配者達へ
幕間は三人称視点になります。
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ちぐはぐな部屋だった。
部屋の右手側。
様々なサイズのフィギュア、あるいは稼働模型が飾られている。
作業台周辺には、箱積みにされたプラモデルや、塗装ブースまで完備。
本棚には各種設定資料や、劇中ガイド。小説や漫画。
それらの共通点は、ロボットアニメ、という一点。
テーマは同じだと言うのに、煩雑な印象を受ける。
部屋の左手側。
膨大な紙資料や、データ媒体が棚に保管されている。
作図道具があるかと思えば、高性能PCもあり、複数のモニターを展開している。
ペンスタンドには飾り気ない、使い勝手のいい文房具が肩を並べている。
資料やデータに共通点はない。生物学、工学、地学等多岐に渡る。
整理整頓されたそれらは、バラバラなのに統一感がある。
そして、部屋の中央。
机と一体型のPCの机上には、飾り気のないモニターとゲーミングキーボードが置かれている。
栄養はあるが味は良くないバランス栄養食がストックされている横で、メーカーがこだわり抜いた為、高額になったコーヒーメーカーを置いている。
「やあ!キミ達!ドクター黒鉄の定期報告の時間だよ!」
高機能ワークチェアに座り、膝の上に猫のぬいぐるみをのせたのは、赤い眼鏡の女性。
配信者のような高級マイクに向けて話しているが、モニター内蔵カメラは予め取り除かれている。
「実はちょっと愚痴がある。職場の同僚達の食の好みが見事にバラバラなのさ!
まず肉好きと魚好きがいるので、その専門店に誘い辛い。日本料理好きでも居るから、イタリアンや中華にも誘い辛い!
ただ、チェーン店の回転寿司が好評でね。もう少しいいとことに同僚を連れて行きたいのだが、なにかいい案はあるかな?」
愚痴といいながら、その表情は楽しげであり、会話のテンポは弾むようだった。
「おっと、ワタシとしたことが……。『寝たきり』のキミ達に相談することではないね!すまない!」
モニターに映る名前がある。
そのどれもが、大企業の経営者や、大物政治家、日本を牛耳る裏の顔役達。
いずれも、巨大災害が発生し出した当時の日本のビックネーム。
名前の下には、その者バイタルが表示されているが、決して健康体の人間の数字でない。
「ふむ、折角の区切りの報告会だ。改めて、現状について確認でもしようか。
全世界で巨大災害発生始めた当時、つまり2020年頃かな?
キミ達はいつものように自己の保身と、地位の維持のための秘密会議を開催した。
当時、最も安全とされた某県の某基地内でね。
なにを話し合ったか、興味は無いよ。
新たな搾取の形でも決めたのかな?実行されなかった以上、知るよしもない。
そう、まさかその基地に、基地内特設会場とすぐ近くで巨大災害発生!
慌てたキミ達、その討伐を要請!混乱する、軍の統制!コアさえ知らぬ、平和な治世!
弾丸打ち抜く、脳天!昇天!する巨大災害、汚染される頂上天!なキミ達。
政変!進展!大発展!社会は好転!まさに次代の分岐点!Yeah!」
リズムに乗りながらも、淡々と音声ファイルから、クラブミュージックを選択。最後には、エアホーンも忘れない。
「…なんてね。
いやぁ、まさか例外個体の討伐失敗で、君らがまとめて集中治療室送り、意識不明になるとはね。
2020年代に感染症でも流行って、会議は遠隔で行うことが主流にでもなっていれば、違っていたのだろうが、過去を振り返ってもしかないさ!
というか、30年後まで生きてるとは恐れ入った。流石だ!
たとえ、言葉さえ口に出来ない状態にまで、衰えて居ても、君らの生きる意志というのは素晴らしい!
もしかしたら、ハザードマテリアルの過剰摂取により、体質が変化したのかな?
君らのお陰で、発生直後の巨大災害はより毒性の強いハザードマテリアルを含有していると証明された。人類の発展にその身で貢献出来たのだ、誇るべきだ!
ま、その秘密会議の秘匿性の高さのお陰で、軍の初動ミスによる土壌汚染とされたので、君らの名前は後の世には残らないよ、秘密は守られた。よかったね!
さて、点滴に繋がれ、10数年の眠りを開けたキミ達。そして起きて目にした筈だ。
搾取の仕組みは取り除かれ、生涯雇用復活や、官民一体の所得倍増、完全国内重視政策……。
まったく、政治の話は退屈でいけないね…。眠くなってきたよ……ふぁ……」
あくびを一つ。そこで、モニターに目を走らせる、ドクター黒鉄を名乗った女性。
「おや、ストレス値が上昇してるね、皆。大丈夫かい?
ふむ、キミ達に安眠を提供するためにも、本題に移ろう」
膝の上から、猫型のぬいぐるみを横に置いた。
座り直し、コーヒーと迷ったが、お湯を一口、喉を潤す。
「ピュアセロトニン。キミ達を回復させることが出来る可能性のある、現在時点で唯一の物質について」
黒鉄・ニワのその声は、静かに蠱惑的に響いた。
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