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【第一章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第一章 重機王誕生

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14.フェリドゥン、誕生

 


 少しずつ近づき、やがて二つの機械は合わさる。

 互いの固定具達が、幾重にもその二つを一つであると嘘を付く。


『起立へ移行します。

 テイルアンカー改め、ネックアンカー、両腕部、脚部全ての連動運動になります。

 起立補助ジャッキ、及び、起立プログラムを平行稼働。

 衝撃、振動にお気をつけください』


「了解!今、この機体のバランスはバランサーユニットで保っている。

 もし、そちらに機体からの過度なフィードバックが来たら、中止する!違和感があったら、いつでも言ってくれ!」

「はい!」


 人が上体を起こし、人が手を着き、人が立ち上がる。それは、機械にするととんでも無く難しい。

 故に、普段からやっている『人』にそのバランス感覚を補助してもららう。


 それが、バランサーユニットの正体。それは一時的な、機体との一体化。

 サブオペレーターの皆からも、その感覚について、いい評判は聞かない。


 最悪は、エキシビジョンの失敗ではない。

 この機能の過度なフィードバックの体調不良や、機体の倒壊による怪我だ。

 事前シミュレーションで成功を重ねていても、実機稼働では万が一がある。

 気は抜けない。


 補助器具は稼働し、プログラムが走っている。

 それを操縦席からリアルタイムで確認していくのが俺の仕事だ。

 負担の掛かってる部分パーツはないか。アラートに閾値に届いているものはないか。

 及び、外部カメラでの周囲の確認。そこで、目に入った人物がいた。


「……ハン、そんなに心配そうにするな、っての…」

 通信に乗せずに呟いた。

 近くまで来ていた、ヘリの窓、先ほどまでの勇ましい演説と違い、不安げな眼鏡の向こうの瞳が目に入った。


 上体は起こされていく、俺の視点もあがっていく、空に近づいていく。



 今、まさに、大地に立った。


 運搬機の下半身、重機の腕、胸には竜頭、頭部のデザインはどこか威厳があるように見える。


「合体プロセス完了!操縦席、異常なし!」

『バランサーユニット異常なし!』

『目視確認、異常なしっす!』

『各種データ、異常値無しよ』


 その報告を受けた人物の表情は、何だったのだろう。驚きと歓喜が入り交じったような…。

 子供が初めて立った瞬間の母親も、あんな表情をするのだろうか?


『――さぁ、今日が誕生日だ。人類は、一歩を踏み出した。新たな進化へ。


 巨大災害で全世界が阿鼻叫喚の混乱に見舞われ、我々の文明は一度大きく後退した。

 本来ならば、もっと早くに実現していた事なのかもしれない。

 しかし!ここに至り、巨大災害への抵抗の象徴が誕生した!


 Antiアンチ

 Giantジャイアント Hazardハザード

 Doubleダブル Armアーム

 Heavyヘビー

 Caterpillarキャタピラー

 頭文字をとりAGDHC。アジダハーカ。これは機体の種類名に過ぎない。

 ならばこそ、名付けよう!この第一の巨人の名を!


 ――フェリドゥン!


 邪竜の名を冠する本機体を人々の自由と絆を守るために運用するにあたり、邪竜を封じた英雄の名を借り受ける!

 即ち、自由(FReeDom)と絆(Nexus)のフェリドゥン(FRDN)である!


 これまでの重機の機能と機構を統括する重機の王の戴冠である!』


 ヘリの扉が開く。いや、なんて危ない真似を…!?


 そこから、特大の掛け軸が垂らされる。達筆な時でそこに描かれたのは、


 『重機王 フェリドゥン』


 この機体の名前であった。それが、はためいている。


 俺がこの機体に乗ったのは、偶然と必然の重なり合いの結果に過ぎない。

 でも、それでも、多くのロボット達よ。今、あなた達と同じ高さから、夕日を見ている。



『さぁ、エキシビジョン終了だ。最後まで見てくれた導入検討者諸君、最後までのご視聴まとこに感謝する!

 10月の月末、後半期始めのキミ達の月次報告書どんな愉快なモノになり、キミらの上司がどんな反応を示すのか、非常に気になるねぇ。

 しかし、この場はこの言葉で締めくくろう。即ち、また会おう!』


 そこで、オープン回線は切れたようだ。

 当事者でありながら、他人事のように話すのも気が引けるが、報告書を頑張ってほしいと思う。


『いやー、我ながら名演説、名プレゼンだったのでは?

 まぁ、オープン回線をわざわざ聞いてる関係者くらいしか届いてないだろうがね!


 さて、ワタシのワガママに近いエキシビジョンは大成功と言っていいだろう!

 キミらの頑張りによるものだ!本当にありがとう!黒鉄重工先端重機開発室の諸君!』


 ニワさんはヘリから大きく身を乗り出し、こちらに手を振っている。


『一応、ヘリから補足しておくと、周辺の解析データをアジダハーカ、いいえ、フェリドゥンに送っていたのはニワさんよ』

『やめてくれたまえ。ワタシはこっそり暗躍するタイプの博士なのだよ?

 そんな、実は一緒に頑張ってましたなんて、恥ずかしいじゃないか!』


 あったのか、羞恥心…。間違いなく今日一番の驚きだ。


『そんな事より!どうだい?アジダハーカ、改め、フェリドゥンは?』

『バリバリ最高っすよ!』

『外部モニター越しでしか見られないのが悔しいです!』

『あとで、ヘリからの映像も渡すから、降りるなんて言わないでよね、ティア』


 皆、思い思いの感想を語りあっている。

 俺は、そうだな…。まさに地に足が付いてないというか、現実感が薄い。

 夢の舞台、というのはこのことなのだろうか。


『残念ながら歩行実験までは認可が取れていないからね。今日は立ち姿オンリーだ。

 そして、別部門の同僚もきてくれたよ!』


 その言葉と同時に、校庭にはいくつもの重機が入ってくる。

 油圧ショベル、ブルドーザー、ホイールローダー、ダンプトラック、移動式クレーン、ロードローラーだ。


『彼らは、黒鉄重工遠隔操縦重機部隊。

 これから、フェリドゥンの分離作業の補助や、土に帰った巨大生物の運び出しや、校庭の舗装作業を行う。


 ――我々は、忘れてはならない。

 フェリドゥンは、敵を打ち倒す破壊の化身ではなく、人々の暮らしを守る重機達の王。

 言わば、再生と創造の王であると。

 もし、その理念、信念を忘れたら、フェリドゥンは兵器になってしまう。それは、とても悲しいことだからね…』


 真剣な言葉だった。茶化しも巫山戯た様子もない。ニワさんの素が垣間見えた。


『というわけで!もしワタシが闇に落ちたときは、ワタシを討ちたまえ!諸君の力を合わせてね!

 その時は、新造したブラック・フェリドゥンでお相手しよう!』

『その機体の予算資料、私に作らせないでくださいね』

『整備班一同ボイコットっす』

『お父様に言いつけます』

『うーん、暗礁に乗り上げるのが早いな…。仕方ない!闇落ち展開は諦めることにしよう!』

「…やれやれ」


 でも、正直、ブラック・フェリドゥンは少し見たいかもしれない。

 ロボ好きに、ブラック、ノワール、シュバルツが嫌いな者など居ない。もちろん偏見だが。


『おっと、黒鉄重工遠隔操縦重機部隊!作業開始前に一度フェリドゥンの周りに集まりたまえ!記念に一枚の絵が欲しいのでね!

 ガズくん!フェリドゥンの姿勢制御でカッコ良く決めてくれたまえ!』

「ああ!業務了解!……です…」


 こうして、重機達に囲まれるフェリドゥンの写真は、黒鉄重工先端重機開発室の壁を飾る最高の写真になる。それは、我ら開発室を象徴する一枚。


 すなわち、好きなものを並べ飾る、夢の秘密基地を写したような絵だった。





これにて、第一章完となります。

今後の更新は、読者の皆さんの反応にもよりますが、週一ペースで投稿予定です。


第二章の前に幕間を挟み、第二章では、小さいお姉さん早乙女・エルを中心に物語が展開します。


よろしければ、☆や、コメント、リアクション、ブクマなどで応援頂ければ、大変励みになりますので、よろしくお願いします。




また、毎日更新しております初投稿の連載作


異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~

https://ncode.syosetu.com/n5368lm/


も読んで頂ければ幸いです。


以上、作者からのお知らせでした。

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