13.今こそ合体の時
ヘリコプターが、高所から降りてくる。
そこに乗るのは、二人。ニワさんとエルさんだ。
『秘匿回線オフ、オープン回線で各所へ呼びかけ開始っと。
あー、あー、聞こえてるかね?ここに集まった顧客諸君。高い所から失礼。
こちら黒鉄重工先端重機開発室。
そしてワタシは、これから行われるエキシビジョンの主催者、黒鉄博士だよ!』
マジか、あの人。マジで社会人なのか、あの人。
俺は引き続き操縦席に居る。ティアさんも引き続きサブオペレーター席に居る。
レイさんは、まさかの急なエキシビジョンに、現地での緊急点検を行っていた。
テイルアンカーは解除され、アームも待機状態に戻っている。
残念な事に、今から見せる『機能』に、先ほどの業務はなんの影響もなかった。
今は防護服も脱いで、通常の作業服でこちらに向けて、サムズアップ。
『さて、対巨大災害双腕重無限起動機、アジダハーカの活躍。あるいは、既存重機との違いは見てくれたかね?手前味噌になるが、凄いモノだろう?
だが、こうも思ったのではないか?この機体が何故わざわざ『相手』と同じ程度の大きさなのか、と。
この技術があるのなら、機体をより大きくして、巨大災害を圧倒してしまえばいいのでは、と。
答えは、道幅さ。巨大災害の大きさに、『今のところ』限度があるように、我々には、運搬の問題が付きまとう。陸路でどこでも運べるには、この大きさが限度になってしまう』
この一連の発言、これは時間稼ぎだ。
こうしてる間にも、俺とティア、遠隔でエルさんで、これから行われる事に対する危険性がないかの最終確認が行われている。
いずれも安全値、設計者の思惑通りだ。エルさんから、ニワさんにその連絡が行く。
『空路は現実的でない。
我々人類は、巨大災害に対して既存技術を発展させ対応してきたが、この重量を運ぶには一回のコストが莫大になってしまうからね。残念なことだ。空飛ぶ重機の夢は次代に託すとしよう。
おっと、このようは現実的な話は、事前開示したアジダハーカの資料にも載っているので、是非熟読してくれたまえ。
――さぁ、ここからは、『残酷な未来』と、それに立ち向かう『夢とロマン』の話をしよう』
その言葉は、時間稼ぎは終わった、と言いたげだった。
「巨大災害は今、進化の兆しがある。
キミ達も、気付いているだろう?少しずつだが、シュミレートとの差異が出てきた。
巨大災害の膂力が強まり、爪や牙の強度が増した。
その度に、少しずつ改修を繰り返すか?対応台数を増やすか?
我々の答えは否だ。我々も進化も続ける。その一端を、お見せしよう!」
合図があった。俺達とのやりとりは、秘匿回線で行うらしい。
俺達のプライバシーは保護してくれるとのこと、変なところで常識的だ。
「アジダハーカ、各所問題なし。操作席、『姿勢変更』準備完了!」
『クリンタ号、各所問題なし。サブオペレーター席、バランサーユニットへの移行準備完了!』
『二人とも、背部ドローン、こっちで遠隔制御するわ。緊急事態の対応に集中して』
『今回はクリンタ号をその場で停止、アジダハーカの誘導プログラムもあるっすけど、自分も目視確認するっす!』
頼もしい声はクリンタ号からだけではない。地上と天からも聞こえる。
アジダハーカの背部が、クリンタ号の車両部分が、変形を始める。
誘導プログラム、レイさんの目視確認にも問題なし。
『ワタシとしては、初回は実戦投入、というのも捨てがたかったのだがね。
しかし、ほんの一欠片残った理性が、「流石にそれはないな」ということで、エキシビジョンという形を取らせて貰ったよ。いきなりで済まなかったね、諸君。なにせ、最終調整と認可が三日前だ。
だが、みんな、わくわくするだろう?
なんせ、今から立ち会うのは、否!立ち上がるのは!我々の夢だ!』
だからって、初めての屋外実験が夕日の校庭ってのはやり過ぎだけどな!
ああ、ちくしょう!そうだよ!わくわくしてるよ!アガりっぱなしだ!
ここで、ニワさんは再び、オープン回線に切り替えた。
『世界中の我らの同志よ、否!これまで憧れを捨てなかった人類よ!
映像で、模型で、絵で、文章で、その姿を幻視し、我こそがその乗り手であると夢見た我が友よ!
今この時!諸君らの夢を貸せ!
さぁ、これはすでに我らが創業者、黒鉄・鉄蔵の言葉にあらず!共に叫べ!』
「「「「「今こそ合体の時!」」」」」
『クリンタ号、脚部キャリーキャッスルへの変形完了です!』
クリンタ号はその輸送台が折りたたまれ、すねと大腿部へと変形。
車両部分は二つに分かれ、足先に変わり、脚部と成る。
それと同時に元サブオペレーター席である、バランサーユニットは腰部と成った。
「アジダハーカ!胸部ドラゴンハート!変形完了」
その異形の両腕はそのままに、運転席が仰角90度を向き、竜の顔が空仰ぐ。
機体の正面を守っていた巨大バゲットも同じ角度にあげられ、その下に隠された接合部を晒す。
『背部ドローン、頭部サーチヘッドへの変形完了よ』
アジダハーカ背部の走査機能を備えたドローンは変形し、どこが無骨な戦士然とした人を象った頭部へと姿を変えた。その戦士は、竜と同じ方を向いている。
『全変形、目視確認ヨシ!…っす!』
その言葉を待っていた!
「『合体』システム、起動!」




