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【第一章完】重機王フェリドゥン ~ロボで戦う社畜、気付けばハーレムラブコメ展開になる~  作者: 沢クリム
第一章 重機王誕生

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12/21

12.初業務完了



相対する二つの巨体。先手を打ったのは、こちらだ。


「フック固定!クレーンアーム!左旋回!」

『了解。軌道上の安全確認ヨシ!』


地面に落ちたまま、まだ体勢を整える前だった巨大ネズミの腹部に巻き付いたブーストフック、超硬度ワイヤー及び、制御装置の超硬度ケーブルを強引に引く。


「ギチッ!」


地面を引きずられるが、巨大ネズミは無抵抗では無い。

体勢を崩しながらも、ワイヤーにかじりつく。それと同時に機内にアラートが鳴る。


『報告!ケーブル破損!ワイヤーは無事!』

「巻き上げは可能か!?」

「可能です!ブーストの点火と制御及び、ゼロ距離エコー使用不可!」


巨大災害は姿こそ、既存の生物だが、体組織は違う。

哺乳類の歯はカルシウムとリンが結びついたものだが、それで噛み付いても、ワイヤーやケーブルは切れない。


だが、巨大災害はその爪や牙で、鉄を裂き、鋼を砕く。

身体が崩壊する為、分析も出来ていない。

ワイヤーもケーブルも、想定ではその一撃に耐えるはずだった。

しかし、強度が僅かに劣るケーブルは断たれてしまった。


嫌になる位、最悪の事態の想定通りじゃねぇか…。


「動きを止めた後、背部搭載の有線ドローンの展開!制御行けるか!?」

『可能です!エコー走査後、データをアジダハーカへ送ります!』


左アームのゼロ距離エコーが使えなくなった時の装備も搭載している。

既存の技術も、この竜は食らっている。


「その時は任せた!サブオペレーター!クレーンアーム、右旋回!加えて急速巻き上げ開始する!」

『了解!軌道上の安全確認ヨシ!右方向、45度以降はロックが掛かります!』


巨大ネズミを引きつける。抵抗も大きい。腕裁きで、歯を外させるのは成功した。

まるでチェーンデスマッチだ。しかし、力はどうやらこちらが上。


「右、超油圧クローブレーカで抑える!」

『了解!致命傷を与えないようにご注意ください!』


掴む為のフォーククロー、砕く為のブレーカ、その融合機、超油圧クローブレーカ。

シミュレーションのフィードバックから生まれた、一つの腕で二役をこなす、新たな腕にして牙。

今は突き立てる時ではない。


「ギチギチギチッ!ギチッ!」


首の付け根を抑えた。苛立ちを示す歯ぎしり。そう、身体の固定完了だ。


『ドローン展開!ゼロ距離エコーより、若干時間が掛かります。ご注意ください』


ティアの声は落ち着いている。今、その意識はドローンの制御に向けられている。

俺が出来るのは、急かすことじゃない。信じて、抑えながら待つことだ。


『……………解析完了。コア発見。モニターに表示します…!』


 モニターの一つに立体映像が投影される。

 赤い塊が、ネズミの胸のほぼ中央、やや左寄りの心臓部に映し出されている。


「ここで例外個体…!」

もし、常たる頭部を潰していたら、ここら一帯が汚染区域になっていたのか。


「だが、これなら……ブレーカ角度調整、ステークの長さを元にシュミレート!」

『結果出ます!このアームの位置にて、コア破壊可能!』

「ヨシ!」


もう、放す必要がない。

そう、今がこの牙を獲物の心臓に突き立てる時だ。


『操縦席完全気密、ヨシ!コア中心からズレ、なし!音声コマンドをお願いします…!』

「ドライビング、ステェーク!」


声と共に、杭が打ち込まれる。衝撃音と衝撃波は巨大ネズミをクッションに、地面へ伝わる。

ガラスが割れるような高い音、コアを砕いた時特有の音も同時に辺りに広がる。


巨大災害の身体が崩壊していく、先ほど前の抵抗、歯ぎしり、怒りの形相が嘘のようだ。

ただの土塊に変わっていき、形も保てず、崩壊する。


『コアの完全破砕確認。ハザードマテリアル、流出なし…』


操作席で力を抜く。その時に、汗が噴き出した。緊張で汗腺まで止まっていたいうのだろうか。


『業務結果を発表します。周辺被害、軽微。周辺汚染、なし。機体被害、超硬度ケーブル。………お疲れ様です。お兄様、クリアランクS、ですよね?』

「ああ、そうだな。トラブルもあったのに、よく対応してくれた。……お疲れ様でした、ティアさん」


『……通信が回復するまでのしばらくの間、折角の二人きりですよ?…素直な言葉でお聞かせください。それとも、レイさんが特別ですか?』


どうして、サブオペレーター様はご機嫌斜め?だがそうだな、素直な言葉か……。


「ティアが俺のサブオペレーターでよかったよ。ありがとう」

『ふふっ、どういたしましてっ』


どうやら、正解は引けたようだ。

素直な子でよかった。俺が高校生の頃といったら、もっと斜に構えてたと思う。

具体的には、主人公ロボじゃなくて、作中で数回しか登場しないロボが一番好きとか言ってた。



『かっこいー!おや?今通信が回復したようだね?

 そして先ほどの発言は、通信途絶前の話のオチでもあり、キミ達へ送る賛辞でもある。


 よし、後で多角的視点からキミ達の活躍は検証、上映するとして、黒鉄重工先端重機開発室の諸君!点呼の時間だ!』


まったく、息も尽かせぬとはこの人の為に作られたのでは?


「黒鉄・ガズ、無事です」

『アスティリア・クロガネ、任務完了です!』

『神田・レイ、逃げる必要もなく無事っす!』

『早乙女・エル、って私もいいのかしら、データ採取完了よ』

『黒鉄・ニワ、見届けたよ!』


今になって、やっと達成感の実感が湧いてきた。

時間にすれば、10分も無かったはずだ。

なのに、みんなの声が懐かしいとすら感じた。


……ああ、良かった。


『さて、折角のお披露目の場が整っているんだ。

 ここは、エキシビジョンも、今日やってしまおう!』


良くないかもしれない。



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