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チビと私の平々凡々【本編完結】番外編(続編)連載中!  作者: 愛賀綴/『チビと私の平々凡々』続編連載中!
番外編(続編)

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17.笑顔が弾けるときを待つ

 画面を見てニヤけてしまう。


「かーわーいーいー」

「さっきっから可愛いしか言ってねぇじゃねぇか」

「だって、ほら、動いた! あー、かわいいー」


 画面の向こうでウゴウゴと動いている甥っ子を映してもらって、画面のこっちの私はずっとニヤけ顔。

 兄夫婦の第一子は男の子だった。

 まだ顔立ちがしっかりとしているわけではないのに、かわいいしか言葉が出てこない。

 出産予定は年明け早々と言われていたけれど予定日よりも遅れての出産。

 義姉は妊娠中に少し体調に懸念があって、昨年夏の私の式典デビューのあとから入院していた。とくに切羽詰まった理由ではなかったけれど、結局出産まで入院したのは伯父の事件のことが耳に入りにくい場所に留めるために両親やババ様などが根回ししてそうなった。

 兄と義姉はまだ伯父のことを知らない。私が次にシシダに帰省したときに言うことになっているけれど、義姉の体調次第では延期も考えていると母から連絡があった。

 教えたら兄も義姉もそのときにすぐに共有がなかったことに怒るかもしれないけれど、義姉の母体が大事だったのだからわかってもらうつもりだ。

 我が家のことだけれどラワンさんも法律士として同席してくれる。

 そんなことを思ったら少し心に影が差したけれど、今は新しい命の誕生を素直に祝おう。

 昨今の出産は帝王切開が多いと聞くけれど、腹を切ることに抵抗がある人も多いから無痛分娩や自然分娩の希望も可能。このあたりはマドリーナから聞いて結構知っている。マドリーナはゴードンのときもヘンリーのときも無痛分娩を希望し、次もそうすると言っていた。

 義姉はいろいろ迷って自然分娩を選択。そうしたら出産予定日を過ぎてもなかなか陣痛が来ない。流石に心配になり陣痛促進剤を使用するか、やはり帝王切開はどうかと医師に言われ、あと一日経過しても陣痛が来なければ帝王切開と決めたその日の夜中に陣痛がきた。そうしたら丸一日かかる難産。出産用の鎮痛剤などは使ったもののぐったりで、待つしかない兄も両親も誕生の喜びが抜けた瞬間に三人同時に睡魔に襲われて倒れるように寝たそうだ。私への連絡がほぼ一日遅れた理由を聞いて、義姉さんも甥っ子も無事ならいいと答えた。

 義姉が自然分娩とした理由は、義姉の母が義姉を産んだときに帝王切開したが、出産だけが理由ではないものの義姉を産んだ後に出産が望めない体になったのだそうだ。腹を切るのも率直に怖いからとも言われた。私もそう言われたら怖い。

 諸々悶々と悩んだ結果、自然分娩を選択した義姉だけど、無痛分娩を希望しておくでもよかったと思う。母親のお腹の中で育ち過ぎても出てこられないなどのリスクがある。何か他にも理由はあるのだと言葉にはしなかった。

 次があるときは無理しないと言う義姉さんの顔は穏やかで、母と子が横に寝て並んでいた絵面は尊かった。

 尊さと可愛さしかない画面を見ていたのに、とくに見たいわけでもない兄の顔のどアップになり文句を言ったが、いつまでも話していいわけでもなかった。


「二人とも寝かせてやりたいからまたな」

「そうだね。義姉さん、無理せずゆっくりしてくださいね」

「ありがとう。リリカさんも無理しちゃだめよ。しっかり足を治してね」

「あはは」


 そこそこ長い間、甥っ子を見せてもらったけれど、出産してまだ一日しか経っていない。

 義姉さんは出産時の出血が多かったので貧血等の対処でまだしばらく入院。そう聞いたら心配してしまうが、病院にいるという安心感で相殺する。

 私のシシダ帰省はまだ一ヶ月くらいあとだし、私の足首もその時までには治す! きっと元気な義姉さんに会えるだろう。

 兄との通話を終えて心はポカポカ。足首はジンジンと痛い。

 兄から生まれたと連絡が来たときに嬉しくて、椅子に座っていた姿勢から飛び上がって立ってしまい、しっかり足首に激痛が走った。「ンあー!」と叫び声を上げて兄を驚かせ、斯々然々で足を痛めたのだと言ったら笑われた。足が治ったら、あの場所の生い茂っていた草を駆除して、あの窪みは均してやろうと誓っている。

 足首を痛めて三日目。動かさないように努力しているものの、さっき怪我のことを完全に忘れて立ち上がったのはかなり痛かった。まだ普通に歩くには程遠そうだ。


「さっきすんごい声が聞こえたけどー?」

「あれ? チビ、早いね。おかえりー」

「ただいまー」


 山小屋のリビングの外、ウッドデッキのある窓からチビが覗いてきたので四つん這いで移動して窓を開けた。今日は一日霧雨でこの小さい雨粒がなかなか濡れる。


「今ね、兄さんから連絡があって赤ちゃん生まれたって」

「おー! そりゃ叫ぶね!」


 叫んだのはその嬉しさで立ち上がって足首が痛かったからだけど、それを言ったらチビから説教を受けそうなので訂正せずにいよう。

 男の子だったことや送ってもらった甥っ子の写真を見せ、一人と一匹で帰省が楽しみだ~となった。


「ところでまだ昼前なのに工事中止になったの?」

「ううん。草(・)探(・)し(・)授(・)業(・)の子たちが近くに来るって連絡あったから逃げてきた。オレっちがいるとオレっちに群がっちゃうからさー」

「あー」


 『G−I(ガス・インコグニタ)』プロジェクトで、元魔草属の草を探して根から採集する作業の一つを子どもたち向け生物学の特別授業第一回目が今日だった。詳しい場所までは聞いていなかったけれど、チビの情報から特別授業は仮称職員村の周辺が現場のようだ。

 最初に木を伐採した区画はだいたい整備が落ち着き、第二弾の場所の木の伐採や根の掘り起こし、大きい石などの撤去と均しが進んでいる。チビは根や大きな石を掘り出すことを手伝っていて、最初の頃は異能の制御がうまくいかず大穴を掘ったり、地盤まで亀裂を入れていたが、今は加減がわかってとてもスムーズ。

 子どもたちによる草探し現場とチビが手伝っている場所は実際は結構離れているものの、巨体のチビが見えるだけで一部の子どもたちがはしゃいで、本来の目的を忘れてしまいかねない。子どもたちによる草探しは学校の単位にもなる特別授業でもあるし、工事現場に入り込まれても困ると現場の職員さんたちと話し合って、子どもたちに見つかる前に抜けてきたんだそうだ。


「そう考えるとアルバイト隊の子たちって、チビを見ても遊ぼう遊ぼうってならないのはすごいことだよね」

「そう言われてみるとそうかも。今来た子どもたちがウロウロするのは一時間くらいだって言うから、ここで泥団子の練習して待つね!」


 少し前からチビはピカピカに光る泥団子作りがブーム。ヘンリーと張り合っていて、一匹と一人の作品が牧場の離れの台所の棚に数個鎮座し始めた。ほとんど使ってないからトーマスも飾ってあげているけれど、「いつ捨てればいいか」と悩んでいる。

 チビは異能を使っているけれど制御の甘さがあって細かな作業が不得意。頑張って小さく固めてみても大人の頭くらいの大きさになるので陳列するのもなかなか邪魔だったりする。

 今はヘンリーの手の大きさで作っているくらいまで小さくするのが目標で、時間があると唸りながら土を固めようとしてあちこちに土を撒き散らかしてしまう。何日か前にようやく大人の拳大くらいまでにサイズダウンしてきたけれど、ここから固めて、乾かして、磨くまでの間に粉砕したりもする。見ているとなかなか根気のいる遊びだなと思うものの、私への被害が少ないので放置である。

 だけど、霧雨に濡れながらだといつまでも土がぐちゃぐちゃで丸まらないのでは? と思ったが、そこは妖獣。異能の障壁でドームを作って霧雨を遮断。異能を奮う規模が自分サイズくらいあると卒なくこなすチビだった。


 床を尻で滑って台所まで戻り、テーブルに置いたままの大きめの情報端末を再起動。兄からの通信で中断してしまった事務作業を再開だが、慣れない作業は地味に時間がかかってしまう。

 足首を痛めてしまい、妖獣世話班の業務は事実上無理。受付業務などの内勤作業もあるけれど、管理所に来る妖獣と相棒さんと会う手続きもセットでできないと効率が悪い。そんなこんなで妖獣世話班では戦力外の私は、足首が治るまでペニンダさん率いる総務統括部の事務作業のお手伝いをすることになった。

 私が事務作業を手伝う間、総務統括部のお一人と職員寮にいるご高齢だがお元気なお婆さんが妖獣世話班に助っ人で入ってくれている。

 総務統括部からは中年の男性職員さん。「体を動かすっていいですね!」と嬉々と仮設妖獣仮眠所の清掃をしてくれていて、実は体を動かすのが好きな人。片足に発達障害があり、日常生活には困らないものの誰が見ても足を傷めているとわかる歩き方になってしまい、重いものを持ったり走ることができない。ご自身もわかっているから頭脳戦で働けるよう財務会計や法務知識を豊富に学び、今はペニンダさんの次に総務統括で偉い立場でもある。

 でも、本当は動くのが好き。片足を引き摺るように歩いているけれど、痛みなどはないが周りが気を使うのでうろちょろできないのが悩みなんだとか。

 仮設妖獣仮眠所の掃除はそこまで重たいものを持つことはないし、部屋数があるのでいい汗をかくことができるのがちょうどいいらしい。日々殺伐とした事務作業から一時的に解放されて気分転換にもなっていると聞き、人員采配の絶妙さにペニンダさんを尊敬した。

 職員寮には年齢を理由に職員を引退したご高齢の方も住んでいて、無理のない範囲で手伝いをしてくれる。今回妖獣世話班の助っ人に入ってくれたお婆さんは、管理所の花壇整備ボランティアをしている元医務職員さん。仮設妖獣仮眠所の掃除でお願いしたけれど、私が個人的に担っている菜園のフォローや子どもアルバイト隊の見守りの方面を助けてくれることになった。


 そうして私だ。ペニンダさんが私の仕事の調整をする際に何をできるか改めて洗い出し、会計の資格を持っていることを思い出して、会計事務の手伝いとなった。

 管理所全体としては黒字着地でも、部門や部署単位だと赤字だったりする。その赤字となる中身を精査するためのデータ整理を任されることになった。部門・部署単位では赤字でも必要な経費も多くある。どこで赤字を補填するのかなどを分析するための資料になるからしっかりやらないと!

 管理所は軍の管轄なので普通なら国税で運営される組織だけど、シャーヤラン管理所は自前売上で経費を賄うよう取り組んでいると聞いている。全体予算を知る立場にないのでどこまで頑張れているかはわからないけれど、チビの巨木の売上なども貢献できていたらいいな。

 モウリディア王国誕生以前からシャーヤランには管理所の前身である組織があった。ヴィスファスト家のご先祖様とも密だった歴史書も読んだ。

 王国ができてシャーヤランとして一つの領となるにあたり、領行政と森を守る組織は分かれることになり、領主館と管理所になり、今に至る。そのときに管理所は兵器を有する討伐隊があるため軍管轄となったけれど、自前経営を捨てないところが軍組織のなかでも異質かつ唯一と言われる所以でもある。


 早速広げた資料は昨年チビが街デビューした際のものだった。

 チビが鱗を提供するとなり、所長室の方々が調整に走り回った工数費用等まで配賦率で計算されているのを見て、その細かさに資料から視線を外して少し遠い目になった。

 このレベルで点検するのか。かなり大変そうだ。

 他のデータもちらっと見てみたら、あこれもこれも配賦、配賦、配賦、配賦……。

 覚悟を決めてじっくり点検開始。


「これは配賦しなくていい気がする。これは配賦するならこのチームとこの班も含めないとおかしいと書いておこう。これは配賦したらどれもこれも一ウルダーにも満たないよー。配賦しきれないー」


 などと、ぶつぶつ言いながら点検をして一時間と少し。


「目が疲れた……」


 ここまでする財務会計は多くはないと思うけれど、経営規模が大きくなると発生するから会計士一級まで取ってよかった。

 研究室のジェイド先輩に「会計知識は持っていればどこでも通用する」と言われ、会計士の資格の取ったときは試験問題攻略の感覚だったので腹に落とし込んでいたとはいい難い。

 時を経てしみじみと実感する数字地獄。財務を担う人たちって大変だな。

 進路不明で迷うだけ迷っていたあのときに、「そうやって迷っている時間があるなら会計士の試験勉強しろー!」と発破をかけてくれたジェイド先輩。チャルデン教授が計画しているフィールドワークでシャーヤランに来るだろうからそのときにお礼を言おう。


 数字と格闘していたら、外からチビが誰かが来ると教えてくれた。私の耳では聞こえなかったけれど、耳を澄ましていたら玄関先に浮遊バイクが止まるときの特有の音でやっと来訪がわかった。車のほうが車輪の音でわかりやすい。


「こんにちは。売店の配達です!」

「ダイランくん?」

「はい!」


 細い体に不釣り合いの大きな配達バッグをヨタヨタと担いできたのはサリー先輩の息子のダイランくんだった。

 え? 学校は?

 ダイランくんは少し前に不登校とまでは言わないが授業を通信で補って登校しない日々があり、リーダーの助けで解消したと思ったけど、また不登校になってしまったんだろうか?


「あの、その、学校はちゃんと行ってます」

「そ、そう?」


 少し焦ってしまったけれど、今日は登校しない日だと教えてくれた。

 霧雨の中を走ってきたので配達バッグはびっちょりと濡れていて、雨具を着ているダイランくんの顔もびっしょり。ダイランくんは濡れているバッグをどこに置けばとオタオタしていたけれど、床は拭けばいいので玄関の中に招き入れて置いてもらう。


「あのっ、リリカさんに教えてくれたテイラゴーラ語で語学単位の加算がもらえたんです。それで後期単位がクリアできちゃって。先生と相談して受けないといけない授業のときだけ行って、行かない日は売店の配達のアルバイトと草探ししてます。あ、あ、あのっ、山小屋は子どもだけで入山しちゃだめって言われたけど、今日は配達だから許可ももらってきました!」

「そうだったんだ。うん、それならいいんだ。単位取れてよかったね」

「はいっ! あの、その、あのっ、あ、ありがとうございました!」


 ダイランくんに真っ赤になってお礼を言われたけど、学校の勉強を頑張ったのはダイランくんだ。

 ダイランくんはがむしゃらに勉強して飛び級するようなやり方は合わず、地道にコツコツ学ぶタイプ。ダイランくん自身も自覚していて、進級が確定したので今は空いた時間を学んだことの復習にあてているという。


「僕、次々教えてもらっても消化できなくて、復習ばっかりで」

「ぜんぜんいいと思うよ」

「またテイラゴーラ語で躓いたら教えてください。あと、その、化学と数学もできたら教えてほしいです」

「お母さんに習わないの?」

「だめです! 内緒です!」

「まだ内緒か〜。うん、いいよ」


 サリー先輩から見るダイランくんは反抗期。ツンツンと反抗しているわけではないけれど、とにかく親子では会話が少ないと聞いている。

 ダイランくんが不登校まがいになっていたときにリーダーにも相談して、私とフェフェでテイラゴーラ語を教えていたのはサリー先輩にこっそりバラしてしまっているけれど、今もサリー先輩は知らないふりをしているんだろう。ここは内緒継続希望のダイランくんに合わせよう。


 後期単位クリアで浮遊バイクの初級ライセンスを取っていい約束だったらしく、早速試験を受けて無事に合格。管理所敷地内の配達業務バイトを始めたのは、売店の人に浮遊バイクのライセンスを取ったなら配達アルバイトしないかと運よく声をかけてもらえて、自分で決めて始めたらしい。

 日中は広い敷地のアチコチに職員がいて、何らかの配達依頼がある。せっせと配達して浮遊バイクの操縦に慣れる実地訓練としてもちょうどいいだろうと口説かれたという。

 私宛の配達を受けてきたのは山道での操縦の不規則さを知りたかったからというから、何事も努力して学ぶ子だと思った。


「足が治るまでは売店配達使うから、ダイランくん指名にしとこうか? 学校ある日は他の人に回してもいいし、夕方になってもいいし」

「お願いします! 山道を走る訓練したいです! 山道ってオートコントロールにしてると傾いたりしてドキドキしました」

「そうだね。私も最初は慌てたもん。バイクの底と草や大きい石との間隔計測がうまくいかないことがあるんだよね。転倒防止が作動して倒れはしないからハンドルはしっかり持ってよう。何度か乗っているとわかってくるよ」

「はい!」


 図書室でテイラゴーラ語を教えたことで、ダイランくんから『話しても大丈夫なおばさん枠』に入れた私。歳の差的にはギリギリ『おねえさん枠』だと嬉しいけれど、そこは何とも言えない。

 ダイランくんは少々引っ込み思案に思う部分があるけれど、思春期特有の一時的なものだと思っている。学校では友だちがいるし、子どもアルバイト隊の最年長で見守り役をお願いしたときはしっかりとしたお兄さんに見えた。

 ダイランくんは少し前までボソボソっと小さい挨拶だったのが、今はまっすぐ私を見て元気に応答してくれる。この変化が嬉しい。それを知って私以上に嬉しいのはサリー先輩だろう。


 配達バッグから荷物を取り出して、検収サイン。

 霧雨の中でもダイランくんの笑顔は晴天の太陽のようで、私も頑張ろうとなる。

 ダイランくんの背を見送り、チビに浮遊バイクが山の下まで行ったのを教えてもらって、情報端末でサリー先輩を呼び出した。


「サリーせんぱーい! ダイランくんが私に元気に挨拶してくれたんですー!」


 その連絡を受けてサリー先輩がすぐにやって、私からダイランくんの様子を五回も聞いて涙ぐまれた。

 少しは親子間の会話が戻ってきたようだけど、私に向けてくれたような元気さではなく、ボソボソとした話し方ですぐに自室に行ってしまうという。


「もう少しだと思います」

「そうかな。そうだといいんだけど」


 不安そうなサリー先輩だけど、この不安ももう少しで解消する。


 ──草探しも頑張って、アルバイト代が貯まったら、お母さんをご馳走に連れていくんです!


 さっき私と話していてそう宣言したダイランくん。外でダイランくんの言葉を聞いていたチビもいい笑顔だった。

 ダイランくんの母親への無言反抗期は悔しさからだろうとリーダーが言っていた。一人親のサリー先輩が毎日頑張って働いて、不自由なく生活させてくれる。歳を重ねて父親がいない理由も正確にわかってきた。

 母親に報いたい。

 だけどどうすればいいのかと気持ちが空回りしてしまい、母親と上手く会話ができなくなっているんだろう、と。

 でも、リーダーや私とは目を合わせて話せる。先生にも相談していると言っていた。

 少し前には先々の就職先としてもらえる給金額重視であれこれと言っていたけれど、そういえば言わなくなったなと思う。たまにリーダーもダイランくんとは話すらしく、今できることを頑張ろうという気持ちに切り替わったんだろう。

 ダイランくんはお母さんを高級レストランに連れていきたいらしい。

 いろいろ考えているそれらは母親へのサプライズ。母親に言わないようにと避けていて、それが親子間の会話減少になっているのかもしれない。

 大丈夫。もう少しで二人の蟠(わだかま)りは溶ける。

 ダイランくんの密かな計画は言わないから、頑張ってね。


評価や感想などを頂戴できましたら、執筆の励みになります。

引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。

たまに活動報告も記しております。お時間があればご確認をお願い申し上げます。

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