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チビと私の平々凡々【本編完結/番外編続編スタート】  作者: 愛賀綴
番外編(続編)

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06.危険と妥協と今と未来と

 ヴィスランティ家で私がピンクセロロラペリル毒苔を見つけたあと、ジュニオル様は速やかに陛下や殿下に事実を報告し、紛れ込んでしまった経路などの追って報告するとして、仕入れルートの解明に尽力した。悪意を持って紛れ込まされていたとしたら、王子妃殿下の療養を中止いただかないとならないからだ。

 結果として、採取した人の()()()()だった。


 あの日の夕方には苔を売った花卉や苗の販売をしている商店の店主さんが真っ青になって、「詳らかに調べてください!」と申し出て、苔を採取した人まですぐに繋がった。


 ピンクセロロラペリル毒苔が紛れていたムシムコ苔を採取した人は、普段は林業組合に所属する空師(そらし)。たまに魔草やキノコの採取を頼まれ、魔草とキノコの目利きはプロ。苔についても知識はゼロではないがプロとは言えず、たまたま淡赤色のムシムコ苔を見かけたことがあり、珍しくて生えていた場所を覚えていた。

 悪ノリしていたジュニオル様があっちこっちに変わった苔はないかと探し回っていたら、シャーヤラン領外にも「色付き苔を探している苔愛好家の御仁がいる」という噂が流れ、その人の耳にも入った。

 そういや前に淡赤色の苔を見たなと思い出し、魔草採取のときに見つけたので採取。簡易鑑定機器の結果はムシムコ苔と結果が出たので持ち帰った。

 魔草を納めた先に苔を持ち込み「こんな色の苔があったんだが」と見せ、「色付きの苔を探している人が気に入ればいいな」と、どこに卸されるのかは聞かず、魔草と苔を納め終えたらすっかり忘れていた。

 まさか毒苔が紛れていたとわかって、「なんてこった! 殺人未遂罪に問われてしまう!」と絶望したという。

 その後の調べで、その人が採取時に使っていた簡易鑑定機器に登録されていた苔の種類は限定的だったことがわかった。採取するときの専門は魔草とキノコ。苔もよく見かけるのである程度は登録していたものの、法律で絶対に採取禁止となっている絶滅危惧種しか登録されていなかった。


 一般市場に出回っている鑑定機器は万能ではなく簡易版。高精度の鑑定機器があるのは研究機関くらいで、だからその道のプロの目が活きる。

 空師の方が自死しかねないほど落ち込んでいると聞き、ジュニオル様自ら「誰しも間違えはあるからそこまで絶望しなくていい」と連絡し、追いかけて手紙も出したそうだ。すると手紙をお守りにする、家宝にすると、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)の喜びように周りが引くほどとか。ヴィスランティの家紋の効果はすごかった。

 途中の卸問屋などの方々も絵に描いたように真面目で、今後は鑑定機器のメンテナンスを欠かさぬようにという注意に留まり、解決となった。

 そしてムシムコ苔を採取したところにはその地の採取専門家が出向くそうだ。

 ペリル毒苔はそんなに群生することはない。一帯ごっそり駆除処分にはならないだろう。


 有毒と知られながらスズランやスイセンの仲間は庭の花として人気だし、葉の形がハート型で観葉植物として当たり前に見かけるクワズイモの仲間も猛毒。それでも当たり前に見かける。王都の公園の鑑賞用花壇にも普通にある。他にも有毒な樹木や草花はたくさんあって、関心がない人は毒があると知らないし、庭の手入れが好きな人は危険だと知りながら植えるのだ。

 普通に生きていて、毒のある植物から毒を抽出しようとは思わない。毒があるから気をつけよう程度。

 ペリル毒苔も毒があるので危険ではあるが流通禁止という措置のみに留まる。その裏読みで採取禁止や人工栽培を抑止しているに過ぎない。

 毒苔とは言え自然にある生命体の一つ。絶滅危惧種になったら今度は保護しないとならないので、人に都合のいい判断だけで生命の種類を減らすのもいけない。この線引きが難しい。


 管理所に戻って毒の研究をしているメジャルドさんにピンクセロロラペリル毒苔を預けた。

 「ピンクは何年ぶりに見るかなー」とウキウキと預かってくれて、数日後「処分する前に見る?」と連絡を受けたので、私も改めて観察させてもらうことにした。

 ピンクセロロラペリル毒苔と淡赤色のムシムコ苔の判別は、ピンク色になる先端の膨らみとピンク色から深緑色に変色する途中の色合いの違い。


「いや、わかんない」

「わかんないよな」

「これ、わかるほうが異常じゃないか?」


 私とメジャルドさんでしげしげと見ていたら、他の研究者さんも見に来て、毒苔を判別できるかゲームとなった。


「この色が変わっている部分が白くなるのがムシムコで、薄い紫色が混じるのがペリルです。こう全体をパッと見たとき、『あれ? 少し灰色がかっている?』となるほうがペリルだと覚えておけば」

「待て待て待て待て。そう言われるからそうかもしれないと見えなくもないが、森の中で見たとして、土汚れでそう見える可能性だってあるわけで」

「だから次は先っぽの膨らみです。ペリルのほうがちょっと細い」

「リリカとメジ、すげぇな……。わかんないって……」


 私とメジャルドさんの解説は理解できても見てわからないと言い、六人が完全お手上げ、二人が今は判別できるが明日以降は無理という結果だった。

 討伐班のほうが経験上、判別できる人がいるだろうことを雑談の中で知った。

 シャーヤランの森の奥にもペリル毒苔の仲間は普通に生えている。色は極々普通の緑色ばかり。緑色のほうが判別は簡単。先端は薄黄緑色で下にいくにつれて深緑色になる。その途中に紫色がかった部分があるのがペリル毒苔。紫色がないのがムシムコ苔だ。


「これのどこか簡単なんだ!」

「ピンクより無理!」

「これはどっちも深緑色だって!」


 メジャルドさんが研究用に持っているキミドリセロロラペリル毒苔を持ってきてくれたけれど、集まっていた八人全員に一斉に叫ばれ、苔か毒に愛がないと判別不可能という結論になった。解せない。


 毒苔騒動は一般報道にはならず、一部関係者のみで早々に事態が収束したことも共有された。

 王子妃殿下の療養にも問題がない連絡もあった。

 厳しい判断としたら、芋づる式に他にも毒がある庭木や庭花を徹底的に処分しないとならなくなり、庭に植える植物がなくなってしまいかねない。王都の春を彩っていたチューリップにも毒があるのだ。国の判断が過剰反応でなくてよかったと思った。


 ペリル毒苔見極め会のあと、売店でメイリンさんと会い、惣菜弁当を買って一緒に休憩所で食べることになった。

 食後の一休みをしていたときに鳴り響いた柔らかな合図音。その音をきっかけに休憩所にいた他の人も揃って外に出る。

 薄曇りの空に大きな船の影が見えてきた。前後左右に四隻の護衛艦を従えている一際大きいあの船影が王子殿下の船だろう。

 陛下の浮遊城艦に比べたら小さいと思ったことが声で漏れていて、「陛下の船は別格だから比べたらいけないわ」とメイリンさんに笑われた。

 船の高度が下がってきて、視力のいい人の目視で船底のエンブレムが見えるようになったら、一番に王族のエンブレムが輝いた。王子殿下、王子妃殿下、そしてお二人の間に生まれた王子のそれぞれのエンブレムが瞬き、側面の装飾に光がつながっていく。

 前後左右の護衛艦も船底のシグナルパフォーマンスを彩り、今シャーヤランの領都は空を見上げている者ばかりだろう。


 管理所から殿下の船がヴィスファスト家専用の発着場に向かう姿を静かに見守ったけれど、あとで聞いたら街も歓声で迎えるべきか迷う人が多く、妙に静かだったと聞いた。

 今回のご訪問は王子妃殿下の療養が目的。ご訪問を手放しで喜べなくてどちらかと言うと心配が勝る。

 このあと領主館で領主様とジュニオル様が殿下らとご挨拶する予定があり、その様子は一般報道されるので王子妃殿下のお姿もあればいいのだが、そこはご容態次第ともお聞きしている。

 私はチビのミニコンサートと王子殿下のスライム対面相談の中で、王子妃殿下のご容態を知ってしまっている。ミニコンサートを楽しみにされておられ、お声はお元気そうだったけれどリクライニングチェアから自力で起き上がれないお姿も見てしまった。

 通信映像が切れてから唇を噛んだ。

 あれでも体調がよくなっているという。もっと悪かったのだと思うと何が原因なのだろうかと専門外ながら悔しくなった。

 一般向けの情報は報道されることがすべて。

 そこに仮に嘘があっても、私は言えない。言わない。


「さて、私は練習に行くわ」

「今日は顔を出せないので、子どもダンサーズ隊のことはよろしくお願いします」

「カーラさんが来てくれるから大丈夫よ。リリカも旦那のことよろしくね。まったくっ! 毎日こっそり洗濯物だけ置いて行くのよ!」

「ほどほどに言っておきます」


 メイリンさんと空を見上げて船を見送り、私は仮設妖獣仮眠所へ。メイリンさんはミニコンサートの練習会に向かうので別れた。

 メイリンさんの旦那さん、つまりリーダーだが、仮設妖獣仮眠所の隣にテントを張って寝泊まりしている。最初は夫婦喧嘩でもしたのかと思ったら、長期滞在中の妖獣と意気投合して和気藹々と飲んでいるだけだった。

 トイレは仮設妖獣仮眠所の待機室、風呂は業務とあわせて餌やりのあとの牧場でのシャワー、会議前に管理所の大浴場を使ったりしていて、職員寮の自分の部屋に洗濯物だけ置いてトンズラ。狙っているのかたまたまなのか、メイリンさんがいない間に洗ってほしい洗濯物を置いて、着替えを持って出るのが続いたことでメイリンさんがムッとし始めた。それでも洗濯して次の日の着替えを用意しているから、メイリンさんも本気で怒っているわけではないのだろう。

 フェフェも面白がって一緒にテント生活していて、「いいじゃないか、いいじゃないか」とリーダーを庇い、業務支障は出ていないので部長さんも強く言い切れないでいる。

 私が管理所に来る以前から、リーダーとフェフェは斜め上のことをしでかし、けれどそれが不特定多数に問題となることでもなく、やることはやっているので、上層部もある程度は黙認して諦めてしまう。

 リーダーが仮設妖獣仮眠所の待機室を自室改造しないことを断念しただけでも私たちメンバーは祝杯ものだった。

 メイリンさんも本気で怒っているわけでもない。常態化する前には所長が雷を落とすだろう。


 仮設妖獣仮眠所に着いて一番にリーダーのテントを確認。リーダーは会議のはずだが、よし、不在。ちゃんと会議に行っていた。

 待機室のモニターをざっと見て、至急依頼がないことを確認してから各部屋のランプの色を見て掃除を開始。

 またしても寝ぼけて部屋から出て廊下に大の字で寝る妖獣が数匹いた。廊下で寝てしまうなら部屋を使わなくてもいいのでは? と思うが、部屋に案内したらめちゃくちゃ喜んで籠ったのだ。そしてこうして寝ぼけて廊下に出てくる。ここがリラックスできる場所の証拠ではあるけれど、掃除のときは困りもの。

 寝ぼけて廊下に出ていた妖獣たちの部屋を先に掃除して、それぞれに声をかけたら自力で戻ってくれた。

 掃除を遠慮するの合図の出ていた部屋は後回しにして、ランプを見て掃除が三日間できていない部屋を見て回る。


「ん? ……もぉ~、脱皮したなら畳んどこうよ」


 とある部屋に入ったら脱皮した自分の毛をわざわざ剥製のようにして立たせてあって驚いた。

 目が空洞だったことで驚きの声をあげそうになったけれど、こういういたずらっ子もいる。

 寝たい、休みたいの気持ちを満足させると、思いっきり飛び回りたい、遊びたいになるのが妖獣で、脱皮の剥製もどきをどかして部屋を見回したけれどいない。遊びに出たようだ。

 山小屋にいるニット先輩に連絡したら、予想通り脱皮の剥製もどきを作った妖獣は遊びに行っていた。


「ニット先輩、そっちにヤギの姿に似た妖獣行きませんでしたか?」

「さっきキィに連れてってもらった」

「キィちゃん?」

「急に『全力で飛びたい!』なんて言われて空に連れて行かれそうだったけど、ちょうどキィが遊び相手がほしかったみたいでお願いしちゃったよ」


 全力で飛びたいなら好きなだけ飛んでいいのに、なぜ妖獣世話班のメンバーを巻き込むのか。

 キィちゃんは対価なしでお願いを聞いてくれないけれど、王冠も作ってあげたし、しばらくご機嫌だから大丈夫かな。

 だめだとしても今回の犠牲者はニット先輩。ニット先輩もほとんど知らない妖獣より、あとでキィちゃんに空にぶん投げられるほうがいいと判断したのかもしれない。


「あの、ところでスライムはまた苔部屋見てましたか?」

「僕は目撃できてないんだよね。カーラから聞いたけど苔部屋に入り込もうという感じではないって」


 数日前から私はルシア先輩のレポートまとめの手伝いがあって職員寮で寝泊まりしている。最初は空き部屋を使わせてもらおうと申請の準備をしていたら、ニット先輩が部屋を使っていい代わりに山小屋を借りたいというので住まいを交換中。

 ニット先輩家族が山小屋に泊まるのは初めてではないし、スライムもわかっているだろうが悪さはするなと言ってきた。

 山小屋にある私物で貴重品は苔部屋だけと言い切れる私にとって、カーラさんが見たという「スライムが苔部屋前に佇んでいるけどなんだろう?」という話が気になって仕方ない。


「カーラがいなくてもヤスさんも見てるから大丈夫だよ」

「ありがとうございます」


 ヤスさんは育児支援班の職員さん。ニット先輩夫婦とエバンスくんご家族の支援で一番多く一緒にいるご年配の女性で、二人は祖母に近い感覚でお世話になっている。

 今回山小屋を使わせてもらえないかとなったのは、カーラさんからの申し出だった。

 カーラさんは子どもアルバイト隊の見守り役を務めてもらっている。以前はエバンスくんの泣きじゃくりで心を疲弊させてしまったカーラさんだが、今度は子ども一人一人との接し方に迷い出し、気づけば不眠症になりかけていた。自分でやばいと気づけて少し前に心をリセットできた山小屋避難生活を希望したのだ。

 一番に相談を受けたニット先輩も妻が自分で気づけたこと、相談してくれたことに安堵し、すぐに私に相談。もちろん私もすぐに了承した。

 たまたまルシア先輩のレポート制作を助けるため職員寮の空き部屋の申請をするところだったので、ニット先輩の住まいを使わせてもらうことで合意。

 スライムだけが問題だった。

 すでに管理所職員間だけだが、あのスライムが実は妖獣で、今は仮の姿というのは半ば確定している。

 スライムが嫌がることをしなければ危害もないので、管理所内に出ていた警戒も解除になったけれど、それでも相手の姿はスライムで意思疎通は難しく、何をしでかすのか未知数。

 掃除をしたり、花瓶を作ったり、謎茶を作ったり、空き瓶を盗んできたり……。羅列すると危害があるような話でもない。

 そのスライムはネダヤラリを干し始めた頃から機嫌が悪いわけではないが、なんとなく落ち着かない。謎茶にしたい草が揃わなくて不貞腐れているのかと思ったけれど、そういう感じでもない。

 聞き出そうと質問攻めにしても鬱陶しいと機嫌を損ねかねず、王子殿下が会ってみたいと希望しているので、スライムの機嫌は現状維持で様子を見ている最中だ。


 泊まりにくる前にニット先輩にもスライムのことは見てもらった。


「なんだろうね? 強いていうと『そわそわ』?」

「楽しげなそわそわではなく、ですよね」

「うーん。楽しげなら踊るよね」

「ですよね」


 最悪に機嫌が悪いわけではないと判断して、数日間の住まい交換となった。


「僕たちに向かってトゲトゲしてくることはないし、扉の前にいるだけらしいんだけど、そう長くもないみたいでさ」

「あとで山小屋に寄りますので、そのときにスライムがいたら聞いてみます」


 ニット先輩もスライムの姿や行動から、何が言いたいのか汲み取ろうと頑張ってくれている。

 とりあえずニット先輩たちにトゲトゲしていないならいいとしよう。

 ヤギのような姿の妖獣が外遊びに脱走したのをメンバー共有に記して、次の部屋に向かう。

 仮設妖獣仮眠所の各部屋の掃除は数の多さが苦労ではあるものの、妖獣たちは部屋をそんなに汚さないので一部屋ごとの掃除は大変ではな……


「……」


 なんだこれは。

 ランプの色で三日間掃除ができていない部屋をマスターキーで開けたら、部屋中に枝、枝、枝。天井まで枝。枝を組み合わせてバリケードのようなものが組んであった。

 部屋の奥に妖獣がいて、どこで調達したのか枝と枝に布をくくりつけ、ハンモックのようなものまで拵えていた。


「うひょひょひょひょ」


 うひょひょひょひょじゃない。

 枝でできた立体迷路は小型妖獣じゃないと無理な隙間で、私がこの部屋に侵入するには枝を取り除いていかないとならない。


「壊すなよー。楽しんでんだからー」

「……掃除をね、しにきたんだよ?」

「ゴミはそこにあっからさー」

「……」


 この妖獣はフェフェに似ているけれど、もっと小さく、耳が小さい。前脚でクイクイと足元を見ろと指され、視線を下げたら扉を開けたすぐのところに小さな埃の山と、抜けた毛で作ったらしい毛玉があった。毛玉の形がトンボカマキリ。器用だけど意味不明。

 掃除の手間を極限まで最小化してくれるのはありがたいが、部屋を枝だらけにしていいとは言ってない。


「だってこんなに広い部屋を使っていいなんて、ここだけだぜ!」


 妖獣の仮眠のために人も泊まれそうな部屋の広さを用意してるなんてシャーヤランだけだと興奮して褒めてくれた。

 その言葉を聞いて、ルシア先輩と私で改善提案書をまとめたことを思い出す。

 新しい妖獣の仮眠所を作るとなり、檻を使うのを止めて、狭くても部屋にできないかと希望したのはルシア先輩と私。

 ルシア先輩と私は実験のために生き物を使う現場経験があり、心の隅で馴染めずにいた。

 ルシア先輩と私が檻の代用を極力減らしたいのは個人感情だとわかっている。でも、生体実験した経験があるからこそ、気になっていたことでもあった。

 森を飛び回って遊ぶ妖獣たちにも聞いてみた。

 捕らえようとする目的なら檻を壊すが、人目や他の妖獣の視線、明かりの遮断などを考えて檻を改造してあるなら、それはそれと言ってはくれた。

 脈々と受け継がれて、小型妖獣と中型妖獣に檻を使うスタイルが確立したことは理解する。けれど、檻を使わないようにできないものかと言うだけ言って、新しく妖獣用の仮眠所を作るなら格安簡易宿泊所の妖獣版みたいにできないものかと考え、ルシア先輩と下手くそな設計図も描いて提出した。

 この仮説妖獣仮眠所は単に建設規格サイズで最小の部屋をどんどん組み立てて内装でさらに区分けした結果なので、ルシア先輩と私の提案を受けてではない。

 でもその後、この仮説仮眠所の妖獣の様子の報告もあって、今建設中の新しい妖獣仮眠所はルシア先輩と私の描いた案を参考に部屋の広さも大小いろいろ作ってもらえるようだ。


 枝でバリケードなのか迷路なのかを作ってしまった妖獣は部屋の広さに大喜びしていて、シシダの街で仕事中の相棒さんに連絡して、滞在を延期できないかと言ったという。相棒さんの仕事の進捗次第だね。

 相棒さんの家では菓子箱を工作したミニチュアハウスで寝ていて、狭いところを好んでいると思われているが、実はだだっ広い部屋を自由に設計してみたかったのだという。相棒さんの家を枝だらけにしてはいけないことはわかっているようで、ここにいる間は好きにしていいと退散してきた。


 部屋の広さにここまで喜ぶ妖獣がいたのは嬉しくもある。

 今日ルシア先輩に会ったらこのことを話そう。


評価や感想などを頂戴できましたら、執筆の励みになります。

引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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