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異能カフェ  作者: ノア
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3/4

熱々ドリア編

「いらっしゃい」

 昼時を少し過ぎた頃、扉に付いたベルが店内に響き、スーツ姿のサラリーマンが入ってきた。

 店内には、古賀、大川、兵藤が同じテーブルを囲み、ランチをしながらくだらない会話に花を咲かせていた。

 サラリーマンは席に座り、メニューをしばらく見つめていた。

 メニュー表はマスターの手書き文字で作られた、写真もないシンプルなものだ。ページをめくっていると、一枚だけ写真の載った料理があった。サラリーマンはそれを見て、手を上げた。

「これください!」

 マスターが確認に向かうと、彼は写真のページを指差し、『冬期限定 アツアツドリア』を注文した。

「かしこまりました。少々お待ちください」

 マスターはお冷やとお絞りを置くと、厨房に引っ込んだ。

 サラリーマンはお冷を飲みながらスマホをいじり始めた。


 このカフェはコーヒーがメインだが、軽食メニューやデザートも用意している。

「少し前から始まったドリア、実は気になってたんですよ!今日食べれてよかったです。美味しい!」

 古賀は限定という文字に弱く、ドリアを頼んでいた。熱々なので冷ましながらゆっくりと食べていた。

 そんな古賀とは対照的に、大川と兵藤はすでに食べ終わっていた。大川はチキンサンドを食べ、兵藤はハンバーグ定食で、更にハンバーグを追加したものをあっという間に完食していた。

「兵藤さん、よく食べますね」

 大川が最後の一口を口に入れる前にはすでに、兵藤は食べ終わっていた。

「仕事柄、体力使って腹が減るからな」

 食後のコーヒーを啜り、まだ食べている古賀に顔を向けた。

「それ、冷ましてやろうか?」

「ドリアはアツアツがいいんですよ!」

「そりゃそうだ」

 兵藤は笑いながらコーヒーを飲んだ。


 数分後、サラリーマンのもとに、熱々のドリアが運ばれてきた。

「お待たせしました。熱いのでお気をつけください」

 狐色に焦げたチーズが香ばしい匂いを放ち、濃厚なホワイトソースからは湯気が立ち上っていた。古賀たちの座るテーブルにも食欲をそそるいい香りが漂ってきた。

「おぉ、美味そう!いただきます!」

 スプーンを入れようとすると、スマホが鳴った。サラリーマンは手を止め、スマホを耳に当てた。

「……はい。………え!?今からですか!?すぐに!?」

 サラリーマンの声が小さな店内に響いた。通話を切り、がっくりと肩を落とした。

「ゆっくり食べたかったのに……」

 スプーンを口に運んだ。

「あっつ!」

 熱々のドリアはそう簡単に冷めるものではない。

 その様子を見ていた兵藤は立ち上がり、カウンターに立つマスターに耳打ちした。それを聞いたマスターはサラリーマンのテーブルに向かった。

「お客様、少し冷ましましょうか?」

 マスターはドリアを指差した。

「ホントですか?是非、お願いします!」

 マスターはドリアのお皿を受け取り、厨房に戻った。兵藤はすでに厨房に入っているようだ。

 待つこと数分、マスターがドリアを手に、戻ってきた。

「お待たせしました」

「ありがとうございます!」

 サラリーマンは早速、ドリアを口に運んだ。ほんのりと温かさを感じる程度の温度になっており、あっという間に完食した。

「冷ましてもらってありがとうございました!急用ができて、ゆっくり食べる時間がなかったんです。助かりました!」

 サラリーマンは急いで会計を済ませ、店を出ていった。


「…行ったか?」

 兵藤が厨房から顔を出した。

「兵藤さんが冷ましたんですか?」

「おう」

 テーブルに戻ってきた兵藤は、右手に保冷剤を握っていた。

「それ、どうしたんですか?」

 大川がそれに気づき、尋ねた。

「いやぁ、ドリアって熱いんだな」

「さっきのお客さんのドリア、兵藤さんの異能で?」

「そうだぜ。俺の異能は容器に触れれば、中身の温度も変えられる。少しの間触ってないといけないけどな」

「……ドリアのお皿を触ってたんですか?」

 古賀が少し呆れたように言った。

「……お人好しですね。手、大丈夫ですか?」

 大川も保冷剤に目をやった。

「俺はお前たちより熱さに耐性があるから大丈夫だぜ。あのサラリーマンが喜んでくれたしな」

 兵藤は気にすることなくテーブルについた。

 しばらくすると、マスターが厨房から出てきて、兵藤たちのテーブルにやって来た。その手には、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる料理があった。

「兵藤さん、ありがとうございました。こちらをどうぞ、試作品です」

「気にしなくていいのに。ありがとな、マスター」

 熱々ドリアのカレー味がテーブルに置かれた。

「これは、冷まさないでくださいよ」

 大川が言った。

「そんなことしねぇよ」

「ふふ、私もご一緒してもよろしいか?」

 マスターも席に着き、男四人で一つのドリアを分け合った。

 古賀は商品化したらまた食べに来ようと思った。


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