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悪役令嬢レティシア、二人になりました  作者: 南蛇井


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第8話「辺境伯との対面」 Scene 1 辺境伯からの呼び出し

### Scene 1 辺境伯からの呼び出し


黒薔薇館での生活にも、少しずつ慣れてきた頃。


朝の庭で、レティシアはノワールの毛をブラシで整えていた。


「じっとしてなさい」


「クゥ……」


「動くと綺麗にできないでしょう」


「クゥ」


「返事だけはいいのね」


その様子を、ニーナが少し離れたところから眺めている。


そんな穏やかな時間に――。


「レティシア・ヴァレンフォール様」


門のほうから声がした。


振り向くと、辺境伯家の使者が立っている。


「何かしら?」


レティシアが立ち上がる。


使者は一礼した。


「グランフェル辺境伯、ハロルド様がお会いしたいとのことです」


「…………」


レティシアの表情が少し固くなった。


「……今さら?」


王都から追放された自分を、このグランフェルで正式に預かっているのは辺境伯だ。


これまでにも簡単な挨拶はした。


けれど、まともに話をしたことはない。


それなのに、突然の呼び出し。


「何か問題でも起こしたかしら?」


「まだ何も起こしていないと思います」


ニーナが淡々と答える。


レティシアが振り返った。


「まだ、って何よ」


「念のためです」


「余計に不安になる言い方ね……」


レティシアは腕を組んだ。


ハロルド・グランフェル。


この広大な辺境を治める大貴族。


元軍人であり、長年この土地を守ってきた人物だと聞いている。


王都でなら、彼女は「悪役令嬢」と呼ばれた。


そして今、自分はその肩書きを背負ったまま、この地にいる。


――ハロルドは、自分をどう見ているのだろう。


「…………」


レティシアは小さく息を吐いた。


「分かったわ」


「お受けになるのですか?」


「呼ばれたのでしょう?」


「はい」


「なら、行くしかないじゃない」


そう言って、レティシアはノワールを見る。


「あなたは留守番よ」


「クゥ」


「……たぶん、ね」


ニーナが小さくため息をついた。


「お嬢様が余計なことをしないよう、私も同行します」


「私を何だと思っているの?」


「黒薔薇館に住み着いた魔獣を、一晩でペットにした方です」


「…………」


レティシアは何も言い返せなかった。


こうして。


レティシアは、初めて本格的に――


グランフェル辺境伯、ハロルドと向き合うことになった。


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